テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
藤澤涼架side
wki.
fjsw.
若井の背中が完全に見えなくなってから僕は自分の家に入る
若井の座っていた位置に置かれている赤いマグカップを流しに持っていく
僕はカーペットの敷かれたフローリングに寝転がった
『元貴が、涼ちゃんを好きだって思うから』
気を抜くとさっきの若井の言葉が頭をよぎってくる
あの言葉を聞いた瞬間、涙が出そうになった
もし、元貴が若井じゃなくて僕を好きだったらどれだけよかっただろうか
でも、若井の言葉と同時に蘇ってくるのは、
あの日見た元貴からの若井への愛の言葉の数々。
あれは、元貴に話がある、と言って家に呼ばれた、まだ冬に寒さが残る肌寒い春の日のことだった
ーーー
omr.
fjsw.
omr.
元貴の家は元貴の匂いがする
僕が大好きな、暖かくて優しい匂い
元貴は今元貴の家のキッチンの戸棚を漁っている
飲み物を買い忘れていたらしい
別にいいよ、と言うのに 「自分が気になるから」 と一生懸命飲み物を探している
そんなところが好きだなぁとしみじみ思う
元貴が飲み物を探している間僕は机の上のものを見ていた
几帳面な性格の元貴はいつも部屋が綺麗だった
ふとテーブルの上にある一冊の大学ノートに目がいった
きっと仕事用ではないそのノートは使い込まれた跡が見える
絶対駄目なことだとはわかっているけれど僕はそのノートを開いてみることにした
元貴はまだ飲み物を探していて戻ってくる気配はない
3月25日 火曜日 俺、やっぱり若井のことが好きだ。 若井が俺だけ見てくれればいいのにっていつも思う。 若井、好きな人とかいるのかな。どんな人が好みなんだろ
3月26日 水曜日 今日も若井が車で俺を仕事場まで送ってくれた でも緊張して会話がうまく進まない。 このままじゃ距離縮めれないけど… どうすればいいんだろ
3月27日 木曜日 今日、若井に肩を叩かれた それだけで赤くなって若井に「熱?」て心配された。 優しいと思う。 そんな若井に濡らして満たしてほしいって思うのは、気持ち悪いかな
3月28日 金曜日 やっぱり若井に俺の過去のこと、うまく言えないや。
3月29日 土曜日 今度三人でお花見行こうって話になった。 スケジュール調整大変だけど、絶対行きたいから頑張る。 お弁当に若井の好きなおかず入れていったら喜んでくれるかな?
3月31日 月曜日 涼ちゃんが体調不良でレコーディングを欠席した。 大丈夫かな、心配。 若井も涼ちゃんのこと心配してた。 やっぱり若井は涼ちゃんのことが好きなのかな? でも俺より涼ちゃんは品があって綺麗で可愛いもん。 俺も涼ちゃんと若井、お似合いだと思う。 でも、やっぱり諦めつかないな、笑。
omr.
omr.
fjsw.
元貴は青いマグカップに入ったコーヒーを僕の前に置く。
コーヒーの独特な香りが僕に漂う
そして元貴は僕の方を見た。 正確には、僕の手元にある大学ノート。
omr.
元貴は震える指でノートを指差した
コメント
6件
うわああああ遂に元貴の若井への愛を見てしまったのか涼ちゃん…、 とっても切なくて胸が締め付けられるお話だけど面白い😭✨ 次回も楽しみすぎる!!
ねりちゃんから来ました!天才ですか?涼ちゃんは一番複雑なのに、大森さんを応援するのか…なんか切ない😢