斉藤 芭
( うう、憂鬱だ )
高校1年生の秋-。
私、斉藤 芭(サイトウ ハナ)は怯えていた。
教師
では今からテストを返却する。
教師
呼ばれたものは前に出てくるように。
斉藤 芭
( 平均点超えれてますように…! )
教師
斉藤 芭!
斉藤 芭
は、はい!
教師
……
斉藤 芭
( む、無言…!? )
見なくてもわかってしまう。
私にだけ素っ気なく返された答案用紙にはでかでかと赤文字で36の文字が記されている。
斉藤 芭
お、終わった…
斉藤 芭
( 赤点の壁すら越えられないなんて… )
自分の席に戻り、机に伏せながら答案用紙を眺める。
勢いよく跳ねあげた赤いマーカーのせいで自分が何を書いたのかも分からない。
深山 弦
…
斉藤 芭
( うわ!見られてる!)
急いで答案用紙を隠すと、恐る恐る深山 弦(ミヤマ ゲン)の方を見る。
深山 弦
…悲惨だな、お前
そう言って自分の答案用紙をちらつかせながら口元を歪め、鼻で笑う。
1番後ろの自分の席に戻っていくと机に伏せて眠りつこうとしている。
斉藤 芭
( あいつ…! )
斉藤 芭
( 46点だった…!負けた…!)
学園内1の問題児だと言われているあの深山 弦にテストで負けて悔しくないはずがない。
教師
平均点は62点!45点以下のものは赤点だ!
教師
平均点は上がってきて今までよりかはマシな方だろう
教師
だが、まだまだ足りない!!
教師
クラス替えテストの日も刻々と近づいてきている!
教師
いちはやくこのクラスから脱却できるように努めなさい!
教師
では、テストの復習から始める!教科書78ページを開きなさい
高ぶる気持ちを抑えるためか、浅く深呼吸をした先生はチョークを持ち黒板に向かった。
斉藤 芭
( 6組からの脱却かぁ… )
斉藤 芭
( 一生無理な気がしてきた… )
はあ、と溜息をつき、肩を落とした。