断罪された薬師令嬢は、冷酷辺境伯の“死ねない呪い”を解いてしまった
薬草学と毒理に優れながら、家でも社交界でも正当に評価されずに生きてきた伯爵令嬢リゼットは、王城の夜会で毒見役が倒れたことで毒殺未遂の罪を着せられる。婚約者である第二王子ユリウスは彼女の弁明を聞かず婚約破棄を宣言し、義妹セレナは涙ながらに被害者を演じた。誰も味方しない断罪の場で、ただ一人異を唱えたのは“冷酷辺境伯”アルヴェインだった。彼はリゼットが犯人ではなく薬理に通じた者だと見抜き、彼女を王都から連れ出す。
王都の干渉を避けるため、リゼットは辺境でアルヴェインの“契約花嫁”として滞在することになる。だがその夜、彼が黒い紋様と激痛を伴う発作に苦しむ姿を見て、リゼットはそれが単なる呪いではなく、毒理と魔術が組み合わされた“作られた症状”だと気づく。彼女は観察と仮処置を重ねて発作を和らげ、領民や使用人たちの信頼も得ていく。一方アルヴェインも、誰より冷静に自分を診る彼女にだけ心を許し始める。
やがてリゼットは、王都から届く香油や義妹の手紙に残る花片、辺境伯家の納品帳を調べ、自分への断罪とアルヴェインの“呪い”が同じ線上にあると確信する。アルヴェインの症状は戦場由来ではなく、帰還後に王都薬房と宮廷魔術管理局の関与で“治らない呪い”として固定されていたのだ。さらに、リゼット自身も家で薬材や香油の異変に気づきかけたため、都合の悪い存在として切り捨てられたのだと知る。
王都から予備審問の召喚が届き、二人は再び王城へ向かう。審問の場でリゼットは、毒見役の症状の不自然さ、香油と花片の共通性、納品経路の固定、継続処方の記録を一つずつ示し、王都側の“整えられた正しさ”を崩していく。追い詰められた側はアルヴェインの発作を強制誘発するが、リゼットは逃げずに彼を処置し、その“呪い”が薬理反応で抑制できることを全員の前で証明する。さらに動揺したセレナが姉を遠ざけようとした事実を漏らし、リゼットの無実は決定的となる。
その後、リゼットは露わになった“症状の核”を断ち切る処置に成功し、アルヴェインは長年の苦痛から解放される。すべてが終わったあと、彼は契約花嫁の解消を申し出るが、リゼットは契約だからそばにいたのではなく、彼を好きになったから隣にいたいのだと告白する。アルヴェインもまた、契約ではなく本当の妻としてそばにいてほしいと求婚し、二人は結ばれる。