【第一巻】フィースト・ブライド ~契還編~
この世界には《フィースト》と呼ばれる怪物がいる。
それは人の姿で近づき、恋をして、笑い、そして最後に――喰らう。
骨も、心も、未来も。
ごく普通の女子大学生・花園風香(はなぞの ふうか)は、マッチングアプリで出会った他校の大学生・宮本拓也(みやもと たくや)と恋に落ちた。
優しくて、穏やかで、少しだけ寂しそうな彼。その孤独を埋めたいと思った夜――彼は笑った。
「やっと見つけた。君は、特別だ」
次の瞬間、瞳は赤く濁り、口元は裂け、皮膚の奥から“別の何か”が覗く。宮本はフィーストだった。
喰われる。そう確信した瞬間――雨が降る。冷たい雨。
フィーストの皮膚を焼き、地面に落ちた血を泡立たせる、この世界が“拒絶”する証の雨。絶望の中、現れる対フィースト機関《USC-F》。
だが救われたはずの彩花は、目覚めたとき理解する。
雨に打たれても、自分の体は――崩れなかった。
それは救済ではない。
喰われるはずだった少女は、やがて“怪物の花嫁”と呼ばれる。
怪物に選ばれ、世界に拒まれ、それでも生き延びてしまった存在。
愛は罠か。運命か。
それとも――滅びへの契約か。
雨が降るたび、世界は静かに問いかける。
私は、どちら側だ。