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bon voyage

1 - あきたか。秋元誕生日祝いの航空パイロット話。死ネタもあるよ

♥

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2023年07月11日

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注意事項 ◇専門用語を使用している為、予め、今回は話の途中で捕捉をつけています。捕捉は色分けしてます。 ◇全て捕捉を入れると長くなるので、省けそうなものは、省いています。 それでも気にしないよって方は allow entry

搭乗口乗り場に行くと、既に高城さんが待っていた。

高城蓮太郎

秋元、遅いぞ

秋元詩郎

すみません。試験のシミュレートしてたら、ギリギリの時間になってました

秋元は近々、機長昇格試験を受ける予定になっている。

高城蓮太郎

お前は真面目にしてれば、機長昇格試験なんて、即合格するだろうよ

秋元詩郎

高城さんは、俺を買いかぶり過ぎっすよ。俺なんて、高城さん居なきゃ、ただのカスっすから

高城蓮太郎

よく言うよ。今の時点で、操縦手腕は、俺と大差なんかねぇよ。お前に足りないのは真面目さだけだ。それさえクリア出来たら、ポラリス賞だって取れる
※ポラリス賞:民間パイロットに対する英雄的活躍、優れた操作技術に対して表彰する賞

高城蓮太郎

じゃあ行くか

トレイに手荷物を入れて、コンベアの上に置く。俺達は金属探知機をくぐり抜けた先で、トレイから荷物を受けとる。

秋元詩郎

この作業、意味なくないっすか?内部が、破損してたら外からなんて分かんないし

飛行機に搭乗する前に、操縦する機体に異変がないか、視認での確認を行う。

高城蓮太郎

規則だから仕方ないだろ。それに人の命を預かってるんだ

高城蓮太郎

この程度の確認で、事故を未然に防げるなら安いもんだろ

秋元詩郎

そうっすね。機体は特に問題なさそうですね

高城蓮太郎

これなら安心して飛べるな

機体外部の確認作業を終えて、機内に乗り込む。

機内に乗った後は、CA達とコックピットブリーフィングを行う。 ※コックピットブリーフィング:顔合わせ兼打ち合わせの事

高城蓮太郎

本日、当機の操縦を担当するのは、この高城蓮太郎だ。最終責任者も俺が務める。目的地到着までの間、よろしく頼む

秋元詩郎

計器と通信を担当します、副操縦士の秋元詩郎でーす

先任CA

私が本日、先任客室乗務員を務める、モブ田モブ実です。よろしくお願いします

当日の指揮をとる先任CAモブ実から、アローケーションチャートを配られ、それに添っての説明がなされていく。 ※アローケーションチャート:当日誰がどこを担当するか、搭乗CAの全員の自己紹介。

CAからの伝達が終わると、高城から、飛行計画、気象状況、ベルトサイン点灯時の注意事項などを説明を行う。

高城の説明が終わると、再度、先任CAから乗客のインフォメーションなどの報告がなされる。

高城蓮太郎

俺の方からは質問はない。そちらどうだ?

先任CA

此方も質問はありません

お互いに質問はなかった為、各自、持ち場につく。

高城蓮太郎

こちら羅威刃航空710便、C3出口使用し、離陸します

使用する滑走路を指定し、管制塔からの離陸許可を待つ。

管制官

了解しました。羅威刃航空710便、C3出口からの離陸を許可します

管制塔の指示に従い、指定の滑走路から離陸を開始する。

時速320キロで、離陸を開始し、離陸後、徐々に機首を上げていく。

必要に応じ、主翼のフラップ(高揚力装置)を動かし、高度1万メートルまで、上昇していく。

航空業界には、魔の11分という言葉がある。離陸時3分間、着陸時前8分間に航空事故が多発している。

この離陸直後が、一番緊張する瞬間だ。

魔の3分間を抜け、機体は巡航高度の20000フィートまで、到達する。

二人で離陸後のチェックを行う。

特に問題なく、チェックを終える。

高城蓮太郎

これより、オートパイロット(自動操縦)に、切り替える

秋元詩郎

ここまでくれば安心っすね

高城蓮太郎

だからといって気を抜き過ぎるなよ

天気が良く、視界も良好だった。

秋元詩郎

今日は積乱雲の心配なさそうっすね

高城蓮太郎

ああ。このまま、予定通り進ん・・・

東京湾から、相模湾に抜けた時に、それは起こった。

進行する方向にある雲の隙間から、ちらりと黒い影が見える。

高城蓮太郎

ちっ!

高城は黒い影の正体に気づき、コックピット内には、一気に緊張が走る。

高城蓮太郎

オートパイロットから、手動操縦に切り替える!

手動操縦に切り替え、回避を試みる。

しかし、回避を試みるよりにも先に、黒い影の接近の方が早かった。

距離が近づくにつれて、黒い影が正体を現す。それは、高城達が想定していたものと一致した瞬間だった。

黒い影の集団の正体は、カモメの大群。

次の瞬間、轟音(ごうおん)とともに、機体に、衝撃が走る。

コックピット内に、エンジンの異常を知らせるアラームが響く。

秋元詩郎

よりによって、バードストライクかよ!

バードストライクとは、エンジンに鳥が巻き込まれる事をさす。これの怖い所は、旅客機でさえ、墜落(ついらく)させるというとこだ。

バードストライクの影響により、段々と高度が下降している事に、計器を見ていた秋元が気づく。

秋元詩郎

高城さん、ストール(失速)してます。パワー上げて!

高城蓮太郎

やってる!既にマックパワー(最大出力)だ!

コックピット内に、火災警報、エンジンの異常を知らせるアラームが鳴る。

高城蓮太郎

秋元、エンジン、ギア、ランディック、ハイドロプレッシャーの確認してくれ

高城蓮太郎

それと救難信号

緊急事態時の対応マニュアルに則(のっと)って、秋元に確認するよう指示を出す。

秋元詩郎

エンジン以外には、異常ありません

秋元詩郎

スコーク7700

スコークとは、航空機に設置されている緊急信号。ただ、どこかの管制塔のレーダー圏にいないと使えない。洋上の事故や深い山中での事故は「メーデー」送信が多く、空港が多い平地上空は「スコーク77」送信が多い。絶対ではない。 国際的取り決めスコークコードは、ハイジャック以外の緊急事態は7700、ハイジャック7500、スクランブル発信の軍用機7777。

直ぐさま、秋元が管制塔に緊急信号を発信する。

秋元詩郎

Tokyo Control, Raijin Airlines Flight 710, emergency occurs
(東京管制塔、羅威刃航空710便、緊急事態発生)

秋元詩郎

Request to return to Haneda Airport
(羽田空港に帰還を要請する)

秋元詩郎

Descend to an altitude of 18,000 feet. I need permission
(高度18000フィートまで降下したい。許可していただきたい)

管制官

I got it. allow
(了解しました。許可します)

秋元詩郎

I would like to request radar guidance to Oshima.
(大島までのレーダー誘導お願いしたい)

管制官

Right turn or left turn?
(右旋回?左旋回?)

秋元詩郎

left turn
(左旋回)

管制官

I got it. Turn left and head towards Oshima with a magnetic bearing of 090.
(了解しました。左旋回し、磁方位090で、大島に向かって下さい)

機首を下げて、高度を18000フィートまで、下降を始める。

機体の揺れが激しくなる。

秋元詩郎

高城さん、悪い知らせだ。左エンジンが脱落した

秋元詩郎

右エンジンは無事だけど、発火している。他のエンジンもいつ発火するか分からない

そして、こういうときに限って、悪いことは重なるものだ。

高城蓮太郎

残念ながら、俺からも悪い知らせがある。操縦不能だ。下降できねぇ

推力を失った機体は、フゴイド運動を始める。 ※フゴイド運動:上下の揺れ

管制官

Just to confirm, will Flight 710 declare a state of emergency?
(確認しますが、710便は緊急事態を宣言しますか?)

秋元詩郎

declare
(宣言します)

管制官

Flight 710, I understand. What kind of emergency is happening?
(了解しました。710便は、どのような緊急事態が起こってるのでしょうか?)

秋元詩郎

Due to a bird strike, the left engine fell off. Ignition was confirmed from the rest of the engines as well.out of control
(バードストライクにより、左エンジン脱落。他のエンジンからも出火を確認。操縦不能)

管制官

ここからは英語じゃなくて、日本語で構いません。もう一度状況の説明お願いします

秋元詩郎

バードストライクの影響で、左エンジンが脱落。他のエンジンからも出火を確認。操縦不能

管制官

降下可能でしょうか?

秋元詩郎

操縦不能。降下出来ない

管制官

了解しました

相変わらず、コックピット内では、アラームが鳴り止まない。

CAから連絡が入る 。

秋元詩郎

最悪だ。右エンジン脱落したって

右エンジンが脱落し、これで残りのエンジンは2つとなった。更にフゴイド運動は強くなる。

高城蓮太郎

・・・・

効かない操縦レバー、エンジンの脱落、発火。

油圧に引火しての、爆発の恐れ。

高城蓮太郎

なぁ、秋元、俺にお前の命預けてくれるか?

秋元詩郎

高城さんに任せまーす

高城蓮太郎

少しは悩めよ

秋元詩郎

悩む必要なんてありません。いつだって、俺の命は高城さんと共にありますから

秋元詩郎

心配しなくても、地獄でもどこでも俺は、高城さんについていくだけっすよ

高城蓮太郎

縁起でもねぇこと言うな

高城蓮太郎

でも、ありがとうな。これで腹は決まった

高城は決断する。

高城蓮太郎

これより、東京湾に緊急着水を行う

秋元詩郎

東京管制塔、710便、東京湾への緊急着水を行う

管制官

静岡空港に着陸はできませんか?

緊急着水と聞いて、管制塔に緊張が走る。

海に着陸する方が助かるんじゃない?って、思うかもしれないが、着水着陸は簡単なものではない。侵入角度、波の流れと着水方向の一致、速度を、一つでも間違えれば、海の藻屑(もくず)コースだ。高所から落下した場合、海面はコンクリートに匹敵する硬さになる。着陸が成功したからと言って安心出来ない。沈没するからだ。その上、沈没するまでに掛かる時間もまばらである。だから、着水着陸の成功率は低い。

秋元詩郎

操縦不能。右エンジンの脱落により、推量の低下。静岡空港まで持たない

管制官

了解しました。東京湾への緊急着水を許可します

緊急着水の了承を得られる。

秋元が、緊急着水についての機内アナウンスを行う。

秋元詩郎

エンジン故障の為、当機は緊急着陸を行う。乗客の皆様は、客室乗務員の指示に従って下さい。当機は、これより、東京湾への緊急着陸を行います

乗客への説明も終えた。

残る問題は、機体をどうやって安全に降下させるかだ。

この時、奇跡が起きる。

今まで、操縦不能に陥(おちい)っていた操縦レバーが、突如、機能回復したのだ。

しかし、手放しでは喜べない。突如回復したという事は、いつまた操縦不能に陥るか分からないということだ。

高城蓮太郎

頼むから、もってくれよ

祈りながら、操縦レバーを前に倒す。

全エンジンをアイドリングに変え、緊急降下を開始する。依然とフゴイド運動は続いている。

秋元詩郎

高度11000メートル

秋元詩郎

高城さん、そろそろ着陸体制とった方がいいかも。フラップ下ろしますか?

高城蓮太郎

フラップはおろす

フラップを下ろした事で、少し機体は安定を見せる。

高度が下がってくるに連れて、海面が見えてくる。

対地接近装置が作動する。

対地接近装置

ヴーヴー、Pull Up、Pull Up
(機首を上げろ)
※実際の警告音は、ヴーではなく、Whoopと鳴る

対地接近装置

ヴーヴー、Pull Up、Pull Up

対地接近装置

Too Low Terrain
(高度が低すぎる、地表接近)

速度を290kmまで落とす。

高城蓮太郎

これより着陸体制に入る

秋元詩郎

了承

対地接近装置

ヴーヴー、Pull Up、Pull Up

対地接近装置

ヴーヴー、Pull Up、Pull Up

けたたましく、警報装置は、上昇しろとアラームを鳴らし続ける。

降下開始してから、120秒後、遂にフラップが海面に接触する。

次に、機体の胴体が触れ、滑るように海面を走る。

着水時、完全に勢いを殺しきれなかった為、衝撃に耐えきれず、一部破損したが、運よく、機体分解には至らなかった。

高城蓮太郎

レーダーから、消失してる場合もある。管制塔に着陸位置を伝えてくれ、俺は乗客の避難誘導に回る

秋元詩郎

了解でーす

管制塔に、おおよその位置を伝え、秋元も避難誘導へと回る。

高城蓮太郎

避難を急いで下さい

秋元詩郎

手荷物は持たないで

着陸と同時に、客室乗務員達が避難誘導対応を行ってくれていた為、秋元が誘導にきた時には、乗客の半分はシートを滑り降りていた。

最後の乗客が脱出した後、誰も残ってないか確認する。

高城蓮太郎

誰も残ってないな

秋元詩郎

俺達も避難しましょう

エンジンは依然と発火している。機体は、いつ爆発するか、爆発するよりも沈没するのが先かの状態だ。

高城蓮太郎

ああ

秋元と高城も救命胴衣をつけ、脱出する。

秋元詩郎

冗談抜きで、地獄にボンボヤージュするとこでしたね

高城蓮太郎

せっかくの誕生日に、バードストライクに合うとは、秋元、ついてねぇのな

秋元詩郎

そんな事ないっすよ。こうやって二人とも生きてるんだから、それだけでついてるでしょ

高城蓮太郎

そうだな

高城蓮太郎

秋元

秋元詩郎

ん?

高城蓮太郎

ほらよ

小さな箱を投げて寄越してきた。海面に浸かっていた事もあって、箱は濡れていた。

秋元詩郎

乗客には手荷物持つなって指示してる癖に、自分は手荷物持ってきたんですか?

高城蓮太郎

ポケットに入れてたから、手荷物には入らねぇだろ

秋元詩郎

屁理屈じゃん。で、これなんです?

高城蓮太郎

俺からの誕生日プレゼントと機長昇進の前祝い

箱を開けると高城さんとお揃いのデザインのネクタイピンが納められていた。

秋元詩郎

今、この瞬間から、最高の誕生日に早変わりしました

高城蓮太郎

たかがネクタイピン一つで、調子いい奴だな

秋元詩郎

ネクタイピンといえど、大好きな高城さんから贈られた物なら、俺にとっては、どんな国宝よりも価値あるもんなんすよ

高城蓮太郎

勝手に言ってろ、ばーか

秋元詩郎

あれ、あれれれ、もしかして、高城さん照れちゃったりしてます?

高城蓮太郎

誰が照れるかよ、ばーか///

海面を漂う事、数分後、救助に来てくれた、民間の漁船に俺達は引き上げられたのだった。

おわり

あとがき 航空系は畑違いなので、日本航空123便墜落事故、ハドソン川の奇跡を参考にさせて頂きました。リアリティを出す為に、数値などは変えてますが、一部引用させて頂いています。⬇️ 日本航空123便墜落事故 - Wikipedia https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%88%AA%E7%A9%BA123%E4%BE%BF%E5%A2%9C%E8%90%BD%E4%BA%8B%E6%95%85 不明な部分は、たぶんこんな感じなんだろうなと、かなり、ふわっとした感じで書いているので、正確性に欠けている部分もあります。 調べながら書くので、秋元の誕生日の7月10日に間に合わんかった(^-^; 2日遅れだけど、秋元誕生日おめでとう。今日は城ヶ崎の誕生日だけど、間に合わんから、じょうかぶの投稿は諦める。 直前まで、死ネタにするか、生還させるかで迷ったけど、誕生日に殺すのもどうなんだろという葛藤(かっとう)の末、本編は生還させました。 でも、個人的に死ネタの終り方の方が好きなので、今回のおまけは、別軸の、あったかもしれない世界線、いわゆるパラレルワールドだと思って下さい。おまけは、死ネタとなります。どっちが、本編でもいいんですけどね。読む人の好きなように解釈して下さい。

無事着水に成功した。

高城蓮太郎

秋元、俺が管制塔に連絡と救助要請するから、お前は乗客の避難誘導にまわってくれ

高城蓮太郎

避難誘導終わったら、先に脱出しててくれ。俺も後から行く

秋元詩郎

了解でーす

優秀な客室乗務員達のお陰で、乗客は既に避難を開始しており、俺も誘導の手伝いへ入る。

秋元詩郎

手荷物を持たず、急いで避難して下さい!

秋元詩郎

そこ、手荷物は置いて下さい

乗客の避難を終える。

先任CA

乗客の避難を終えました。今から、乗客が残っていないか、最終確認行います

秋元詩郎

俺が最終確認するから、他の乗務員と避難開始してて

先任CA

分かりました。これ救命胴衣です

救命胴衣を受けとった。

座席に人が残ってないか確認していく。

誰も残ってないのを確認し、脱出の為、救命胴衣を着けようとして、そこである事に気づく。

秋元詩郎

なんで2つあんだ?

秋元詩郎

そういば、高城さんの姿見たっけ?

秋元詩郎

通信してるとはいえ、遅くないか

秋元詩郎

まさか!

嫌な予感にかられ、コックピットに急ぐ。

コックピットを潜ると、まだ機長席に高城さんは、座ったままだった。

高城蓮太郎

秋元、先に脱出しろと言ったろ

秋元詩郎

高城さんの姿が見えないから戻ってきたんですよ。乗客も乗務員の避難は終えました

高城蓮太郎

そうか

秋元詩郎

だから、ほら、高城さんも脱出しますよ

高城蓮太郎

秋元、悪りぃ

高城蓮太郎

お前だけで、脱出してくれ

秋元詩郎

え?何言って・・・

高城蓮太郎

足抜けねんだわ

秋元は慌てて、機長席を確認する。着水時、僅かに機長席の方に、機体が傾いていた。殺しきれなかった着水の衝撃で機体に歪みが生じ、高城さんの足を挟んでしまっていた。見ただけで分かる。自力での脱出は不可能だということが。

高城蓮太郎

自力では、脱出出来ねぇ

救難信号を出しているといっても、残された時間は少ない。この機体の行く末は、救助される前に沈没するか、機体が焼失するかのどちらかしか残されていない。

高城蓮太郎

俺の事はいいから、お前は避難してくれ

秋元詩郎

俺の好きなようにして、良いってことでいいですか?

高城蓮太郎

ああ

秋元詩郎

じゃあ、そういう事なら

秋元は副操縦席に座った。

高城蓮太郎

はぁ?お前、何して

秋元詩郎

高城さんが、俺の好きにしていいって言ったじゃないっすか。だから、好きにさせて貰ってまーす

高城蓮太郎

馬鹿!お前は逃げられるだろ!俺に付き合う必要なんてねぇ!今すぐ降りろ

秋元詩郎

無理でーす

秋元詩郎

俺に命預けろって言ったの高城さんっしょ?

秋元詩郎

高城さん、今、あんな事、言うんじゃなかったって思ってるでしょ?残念でした。それに俺は高城さんと居られるなら、地獄でもどこでもいいんすよ

秋元詩郎

だから、俺を置いていくなんて、酷いこと言わないで下さいよ

高城蓮太郎

勝手にしろ

秋元に脱出する意思がない以上、幾ら言っても意味がないと分かり、脱出するように促すのを高城は止めた。

火が燃え広がってきてるのだろう。焦げ臭さと、黒煙がコクピット内にも漂ってきた。

刻一刻(こくいっこく)と、その時が迫ってきている。

高城蓮太郎

秋元

秋元詩郎

ん?高城さん、なに?先に言っておきますけど、俺は脱出はしませんからね

高城蓮太郎

そんな事分かってるよ

高城蓮太郎

ほら

高城さんが、小さな箱を秋元に差し出してきた。

秋元詩郎

高城さん、これは?

高城蓮太郎

今日はお前の誕生日だろ

高城蓮太郎

それにお前なら昇格試験一発で合格するだろうから、前祝いのつもりで買ってたんだよ。無事、名古屋空港に着いたら渡すつもりだった

高城蓮太郎

まさか、こんな事になるとは思ってなかったけどな

秋元詩郎

ありがとう。大事にします

高城蓮太郎

本当なら、それ着けて、操縦するお前を見たかったんだけどな

秋元詩郎

見えますよ

秋元詩郎

どうせ、俺達の行き先は地獄ですから、あっちの世界で、着けてる姿見せてあげますよ

高城蓮太郎

あの世まで、お前と一緒かよ

秋元詩郎

そんな事言って、本当は嬉しいくせに

既に火の手は、二人の真後ろまで迫っていた。

秋元詩郎

高城さん、手貸して下さい

高城蓮太郎

秋元は高城から差し出された手を、指を絡めて握り返す。

高城蓮太郎

何で野郎同士で、手握らねぇといけねんだよ

秋元詩郎

こうやって、握っとけば、あの世ではぐれる事はないっしょ?本当なら、手錠とかあったら最高なんですけどね

高城蓮太郎

まじで、あの世で再会する気かよ

秋元詩郎

当たり前。だって、高城さんの隣に立っていいのは俺だけですからね

ついに、その時が訪れた。火がコクピットを舐めつくす。

後日、海底から引き上げられた機体から、互いの手を握りあったままの焼死体が2体発見された。

おわり

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