またね、と焦ったように言った蒼宮の表情が、頭から離れない
胸が押しつぶされるような思いだった
もう会っちゃいけないって、そう決めたばかりなのに、何を考えているんだろう
俺は、ひたすら自分のことを非難し続けた
先生と蒼宮が二人でいるだけで、嫉妬している自分が、恥ずかしくて情けなかった
どうして二人でいたかは分からないけれど、あのとき、なぜか蒼宮が遠く感じられた
蒼宮が、俺のものだったらいいのに、と強く思った
桃
……でも、蒼宮の隣に俺はいてはいけない。俺の場所は、多分一生ここだ
まるで自分に暗示をかけるかのように、店を見上げた
やっと辿り着いたそこは、闇に溶け込んでいるかのように見えた
蒼宮と別れてからほんの少ししか経っていないのに、辺りはもう黒に近い紺色で
電飾がうっとうしいほどに光っている
この店の周辺では、クリスマスとか関係なしに、毎日こんな風景だ
眩暈がするほどの雑音と、汚い人間の欲望に溺れそうになり、俺は慌てて店に入った
紫
紫
店に入った瞬間、街の雑音が全て消えた
紫
紫ーくんは遅刻したのにとくに怒る様子もなく、早く着替えるよう俺を促した
まるで外の雰囲気と違う店内は、もう何人かのバイトの人が掃除をしている
俺は、それらをしばらく見てから、決心したように重い口を開いた
桃
紫
桃
香水の香りの染みついた黒シャツに着替えながら、俺はこれから話すことを必死に整理した
……怒鳴られるなんて百も承知だ
でも、これ以外に答えが見つからない
着替え終えた俺は深く息を吐いてから、紫ーくんの元へと近づいた
そして、ゆっくりと口を開いた
桃
真っ直ぐに紫ーくんを見て言った瞬間、妙な沈黙がフロアに漂った
紫ーくんは、目を見開いて驚いている
今まで紫ーくんに育ててもらったも同然なのに、なんて親不孝なんだろうか、俺は
でも、本当にこれ以外見つからなかったんだ
蒼宮を守る方法が...、
紫
紫ーくんは深くため息をつき、額に拳を当てた
眉間にしわを寄せたその表情は、苦渋と困惑に満ちている
もう何回目だろう、こうして大切な人に迷惑をかけるのは
しばしの静寂の中、沈痛な面持ちで、紫ーくんはやっと口を開いた
紫
俺はゆっくりと首を縦に振った
桃
紫
紫
微かに震えている宮本さんの声に、胸が苦しくなった
違う。違う、そうじゃない。そうじゃなくて。俺はただ...
もうこれ以上誰かを巻き込みたくないんだよ...ッ
なのに、なんで俺は、こうも大切な人を大切にできないんだ
なんて、非力なんだ
桃
何もかもが情けなくて、じっと涙が込み上げてきそうになった
こんな能力がなければと、今、心の底から思った
こんな、こんな能力要らなかった
人の心なんか、分からなくたっていい
モブ
その瞬間、カランカランというベルとともに、常連の客たちが入ってきた
それを気まずそうに知らせる新人のバイトに、無理ーくんは、何か言いたげな顔を一瞬したけれど、「ああ」と返事を返した
紫
紫
俺は黙り込んだまま、紫ーくんがホールに戻っていくのを見ていた
莉子
そのとき、ポン、と肩を誰かに叩かれた
突如視界に飛び込んできた赤いマニキュアに驚き、振り向いたそこには、莉子さんがいた
莉子
桃
俺は必死に平静を装って冷たく言い放った
ざわざわと騒ぎ出す胸を押さえたけれど、体が、この人に対して拒否反応を示している
莉子
莉子
桃
莉子
桃
莉子
お久しぶりです☺️
色々あって結構経ってしまいましたが自分なりのペースで投稿していきます😚
コメント
1件
待っっってましたァァ!!!!✨️ これからも楽しみです!!!