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キリコ

フレア! またこんなに黒焦げにして、誰が片付けるのよ!

フレア

いいじゃんいいじゃん、失敗も成功のうちって言うしさ

魔法料理専門学校に入学して一ヶ月、 基礎の基礎すらままならない。

キリコ

フレアの能力は料理にうってつけの『炎』なのにさ、ここまで下手だともはや意味ないよね

フレア

ウチだって努力してんの! 焦がすのも三回から二回に減ったし

キリコ

たった一回じゃん。それに座学の時は寝てるし、できないことはすぐ私に押し付けちゃうでしょ?

友人のキリコは注意ばかりしてくる。

鬱陶しくて仕方がない。

確かに、周りから見れば少し不真面目かもしれないけど、 それでも本気で料理人になりたいと思っている。

ポップ

あらあら、またイカスミ料理を作ってらっしゃるのね

フレア

違うし! ハンバーグだし!

こいつは学校一のお嬢様、ポップだ。

見た目ばかり気にして、 こいつの作ったもんなんて、 不味くて食えたもんじゃない。

ポップ

まあ、それがハンバーグ? 冗談もほどほどにしたほうがよろしいですわよ。ほら見なさい、私の作ったハンバーグを

逆に何をふりかけたら、 こんなピンクできらきらしたハンバーグになるんだ。

フレア

うわ、これ本当に料理かよ

ポップ

あら失礼ね! 文句を言うのは食べてからにしてくださいまし?

案の定、不味い。

なんだこれ、 塩胡椒の代わりに砂糖でも入れてんのか。

フレア

まっず。こんなん食えるかよ

ポップ

どこまでも言葉使いが汚いのね、あなたは!

何かとちょっかいかけてくるくせに、 ウチより不味いんだから。

先生

あなたたち! 真面目に授業を受けなさい! あなたたちぐらいですよ、一ヶ月経ってもレシピ通りに作れていないのは

あーあ、先公の長い説教が始まった。

先公の説教は授業の終わりまで続いた。

挙げ句の果てに補習まで追加された。

キリコ

で、もうすぐ料理コンテストだけど、フレア大丈夫?

フレア

んなわけないじゃん! まだ包丁も使えないのに

キリコ

お肉ばっかり焼いて、包丁の練習してないからそうなるんでしょ。てか、あたしの能力で済まそうとするし

キリコの能力は『刃』。

包丁なんかなくても食材が切れる。

フレア

だって、そのほうが楽なんだもーん

キリコ

はあ、料理人になる気があるとは思えないね

包丁の持ち方は、 一番最初の授業でやった気がするけど、 覚えてないや。

フレア

なれるなれる

キリコ

コンテストで最下位になったら、どうなるか知ってるでしょ?

フレア

え、なんかあんの?

キリコ

呆れた。この学校辞めさせられちゃうんだよ

そんなの初耳だ。

そんなことになったら、 世界一の料理人になんてなれっこない。

フレア

やばいじゃん!

キリコ

だからずっと言ってるじゃん!

どうしよう、練習しなきゃ。

ポップ

あらあら、包丁もまともに使えないなんて、本当に料理人になるおつもりがございますの?

フレア

うっせえ! あんたにだけは言われたくないね!

こんな大口を叩いたけど、 ポップは包丁使うの上手いんだよな。

ポップ

ふん、せっかくアドバイスをして差し上げようと、こちらまでわざわざ足を運んだのに、とんだ無駄足でしたわね!

ポップはかつかつと靴を鳴らしながら、 自分の班に戻って行った。

なんだよ。 別に他のやつの力なんか借りなくったってできるし。

キリコ

あーあ、行っちゃったけど、いいの?

フレア

いいの! キリコが教えてよ

キリコ

あたしの能力、思い出してみな

フレア

あ……

一人で、やるかあ。

放課後の補習時間になった。

包丁のテスト、 合格するまで帰さないと言われてしまった。

先公のやつ、 私が包丁苦手なの知ってるくせに。

先生

ほら、輪切りをやってみなさい

フレア

へいへい

先生

なんですかこれは、太さも大きさもバラバラで、輪切りとはかけ離れているじゃありませんか。やり直し!

いいよなあ、キリコは。

私もあんな能力が良かった。

そんなことを考えながら、 ひたすら輪切りをする羽目になった。

もう手が痛い。

先生

今日はこのぐらいにしておきましょう。合格できなかった分はまた明日です。気をつけて帰りなさい

外が真っ暗になって、 半ば強引に追い出された。

本当に身勝手な野郎だ。

翌日、少し包丁が使えるようになったウチを見て、 キリコは感心していた。

キリコ

だいぶ使えるようになってるじゃん

フレア

ウチも本気を出せばこんなもんよ

そんなところにまたポップがやってきた。

ポップ

あらあら、包丁が使えるようになって、やっとスタートラインに立ったってとこかしら?

フレア

もう立ってるつうの!

ポップ

でも切るだけなんて誰にでもできるでしょう? 『焼く』以外のことがあなたにできるのかしら

ウチは歯を食いしばることしかできなかった。

だって、『焼く』こと以外、 全部苦手だということを自覚しているから。

キリコ

まあ、まだ時間あるしさ、フレアはやればできるんだから、頑張りな

フレア

わかってるつうの……

キリコに背中を強く叩かれ、 ウチはまた料理と向きあう。

道はまだ遠い、だけど、 進まなければ辿り着けない。

フレア

これ、なんか苦くね?

キリコ

ばか! それパセリじゃん! 餃子に絶対使わないし!

フレア

ねぎ見つかんなくてさ、緑ならなんでもいいかなって

材料や調味料を間違えたりするのも、 日常茶飯事だ。

キリコ

はあ、こりゃまた補習だね

先生

その通りです

フレア

うわ、先公いつの間に

気がつくと先公がウチらの後ろに立っていた。

今日もあの地獄の補習をさせられるのか……。

先生

それはほうれん草、こっちが小松菜です

フレア

そんなのわかんないし

先生

わかるまでやるんです!

似たような野菜や調味料をひたすら見せられて、 わかるわけないだろ。

でも、実習ならまだやれる。

フレア

えーっと、青椒肉絲はピーマンを入れてっと……

先生

それはパプリカですよ

フレア

色が違うだけだろ?

先公は深くため息をつく。

そして、黙ってウチの魔法の炎を消した。

フレア

あ! ウチの炎が! 何すんのさ!

先生

あなた、本気で料理人になる気があるんですか?

フレア

あるさ! この魔法を活かせる、凄腕の料理人に……

その場が沈黙する。

音もなく、気まずい時間が流れていく。

ウチは初めて、 その空気の圧に沈黙させられた。

先生

魔法が使えるということは、出来ることが増えるということ。しかしあなたは、力を過信しすぎて何かを見失っているようですね

フレア

それの何が悪いんだよ。使えるもんは使って、何が悪いんだよ!

先生

あなたは魔法が使えなければ、料理人を志すことはなかったのですね

先公は何か諦めたように、 ウチに背を向ける。

フレア

何だよ……何か言えよ!

先生

いいですか? 『魔法が全てではない』。その意味を理解し、今一度心に刻みなさい。それができるまで、私があなたに教えられることは、何もありません

ウチは言葉が出なかった。

ああ、ウチが悪いんだって、 なぜか直感したけど、 納得は出来なかった。

フレア

先公、ウチは……

先生

今日はもう帰りなさい。あなたには、他にやるべきことがあるでしょう

先公は静かに去っていった。

先公の態度を表現する、 適切な言葉が見つからない。

畜生……なんでウチは泣いてるんだ。

ずっと頭に響くのは、 『魔法が全てではない』という先公の言葉。

ベッドの上で目を閉じて、思い出す。

幼い頃に誓った、夢の記憶。

フレア

かーさんのごはん、だいすき!

母さんは毎日美味しい料理を作ってくれた。

でも、長くは続かなかった。

フレア

かーさん? だいじょうぶ?

いきなり倒れた母さん。

身体がどんどん冷たくなっていく。

フレア

どうしたの? ウチがあたためてあげる……!

フレアは、あの人に、似たのねえ

母さんは魔法が使えなかった。

ウチのこの魔法は、 父さんから遺伝したものだった。

フレア

ぜんぜんあたたまらないよ……どうしよう……!

おばあちゃんに、電話しなさい

そう言って、 母さんは何も話さなくなった。

数日後、ウチはばあちゃんの手を握り、 黒い服を着て、 動かなくなった母さんが燃やされるところを見ていた。

フレア

かーさんのごはん、たべたい

ウチはばあちゃんに隠れて、 料理をするようになった。

もう一度、あの味が食べたいと思った。

そして、強く思うようになった。

「ウチは絶対に世界一の料理人になる!」

そうだ、魔法なんて、 関係なかったんだ。

キリコ

フレアが授業聞いてるなんて、珍しいこともあるもんだね

フレア

ウチ、頑張らないといけないって、気づいたんだ

キリコは何も言わず、 笑顔だけをウチに見せた。

授業だけじゃない、 ウチにはまだやらないといけないことが山ほどある。

ポップ

あなたが真面目だと、私の調子が狂ってしまいますわね

ポップはなぜか恥ずかしそうに、 それだけ言い放ってどこか行ってしまった。

フレア

何だよ、変な奴

料理コンテストまであと数日。

座学と実習の繰り返し。

ウチは包丁を使いこなせるようになり、 レシピをよく見て作るようになった。

キリコ

フレア、成長したじゃん

ポップ

わ、私だって負けてませんわよ!

いつの間にかキリコとポップとウチで、 料理を作るようになった。

コンテストの課題料理を、 何回だって練習した。

そして、ついにその日はやってきた。

ウチら三人は、 これまでやってきた全てを出し尽くした。

順位は、明らかだった。

フレア

頑張ったんだけどなあ、ウチら最下位か

ポップ

私は、後悔してませんわ……!

キリコ

もちろん、あたしもだよ

もう笑うしかできない。

やりきったから、これでいいんだ。

先生

あなたたち、こちらに来なさい

あの先公が呼んでいる。

きっと退学通知だ。

先生

これからも応援していますよ

ウチらは開いた口が塞がらなかった。

各々先公に質問攻めをする。

先生

落ち着きなさい。真面目な生徒を追い出すはずがないでしょう?

料理人になった今でも、 あの時の先公の笑顔を忘れられない。

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