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キリコ
フレア
魔法料理専門学校に入学して一ヶ月、 基礎の基礎すらままならない。
キリコ
フレア
キリコ
友人のキリコは注意ばかりしてくる。
鬱陶しくて仕方がない。
確かに、周りから見れば少し不真面目かもしれないけど、 それでも本気で料理人になりたいと思っている。
ポップ
フレア
こいつは学校一のお嬢様、ポップだ。
見た目ばかり気にして、 こいつの作ったもんなんて、 不味くて食えたもんじゃない。
ポップ
逆に何をふりかけたら、 こんなピンクできらきらしたハンバーグになるんだ。
フレア
ポップ
案の定、不味い。
なんだこれ、 塩胡椒の代わりに砂糖でも入れてんのか。
フレア
ポップ
何かとちょっかいかけてくるくせに、 ウチより不味いんだから。
先生
あーあ、先公の長い説教が始まった。
先公の説教は授業の終わりまで続いた。
挙げ句の果てに補習まで追加された。
キリコ
フレア
キリコ
キリコの能力は『刃』。
包丁なんかなくても食材が切れる。
フレア
キリコ
包丁の持ち方は、 一番最初の授業でやった気がするけど、 覚えてないや。
フレア
キリコ
フレア
キリコ
そんなの初耳だ。
そんなことになったら、 世界一の料理人になんてなれっこない。
フレア
キリコ
どうしよう、練習しなきゃ。
ポップ
フレア
こんな大口を叩いたけど、 ポップは包丁使うの上手いんだよな。
ポップ
ポップはかつかつと靴を鳴らしながら、 自分の班に戻って行った。
なんだよ。 別に他のやつの力なんか借りなくったってできるし。
キリコ
フレア
キリコ
フレア
一人で、やるかあ。
放課後の補習時間になった。
包丁のテスト、 合格するまで帰さないと言われてしまった。
先公のやつ、 私が包丁苦手なの知ってるくせに。
先生
フレア
先生
いいよなあ、キリコは。
私もあんな能力が良かった。
そんなことを考えながら、 ひたすら輪切りをする羽目になった。
もう手が痛い。
先生
外が真っ暗になって、 半ば強引に追い出された。
本当に身勝手な野郎だ。
翌日、少し包丁が使えるようになったウチを見て、 キリコは感心していた。
キリコ
フレア
そんなところにまたポップがやってきた。
ポップ
フレア
ポップ
ウチは歯を食いしばることしかできなかった。
だって、『焼く』こと以外、 全部苦手だということを自覚しているから。
キリコ
フレア
キリコに背中を強く叩かれ、 ウチはまた料理と向きあう。
道はまだ遠い、だけど、 進まなければ辿り着けない。
フレア
キリコ
フレア
材料や調味料を間違えたりするのも、 日常茶飯事だ。
キリコ
先生
フレア
気がつくと先公がウチらの後ろに立っていた。
今日もあの地獄の補習をさせられるのか……。
先生
フレア
先生
似たような野菜や調味料をひたすら見せられて、 わかるわけないだろ。
でも、実習ならまだやれる。
フレア
先生
フレア
先公は深くため息をつく。
そして、黙ってウチの魔法の炎を消した。
フレア
先生
フレア
その場が沈黙する。
音もなく、気まずい時間が流れていく。
ウチは初めて、 その空気の圧に沈黙させられた。
先生
フレア
先生
先公は何か諦めたように、 ウチに背を向ける。
フレア
先生
ウチは言葉が出なかった。
ああ、ウチが悪いんだって、 なぜか直感したけど、 納得は出来なかった。
フレア
先生
先公は静かに去っていった。
先公の態度を表現する、 適切な言葉が見つからない。
畜生……なんでウチは泣いてるんだ。
ずっと頭に響くのは、 『魔法が全てではない』という先公の言葉。
ベッドの上で目を閉じて、思い出す。
幼い頃に誓った、夢の記憶。
フレア
母さんは毎日美味しい料理を作ってくれた。
でも、長くは続かなかった。
フレア
いきなり倒れた母さん。
身体がどんどん冷たくなっていく。
フレア
母
母さんは魔法が使えなかった。
ウチのこの魔法は、 父さんから遺伝したものだった。
フレア
母
そう言って、 母さんは何も話さなくなった。
数日後、ウチはばあちゃんの手を握り、 黒い服を着て、 動かなくなった母さんが燃やされるところを見ていた。
フレア
ウチはばあちゃんに隠れて、 料理をするようになった。
もう一度、あの味が食べたいと思った。
そして、強く思うようになった。
「ウチは絶対に世界一の料理人になる!」
そうだ、魔法なんて、 関係なかったんだ。
キリコ
フレア
キリコは何も言わず、 笑顔だけをウチに見せた。
授業だけじゃない、 ウチにはまだやらないといけないことが山ほどある。
ポップ
ポップはなぜか恥ずかしそうに、 それだけ言い放ってどこか行ってしまった。
フレア
料理コンテストまであと数日。
座学と実習の繰り返し。
ウチは包丁を使いこなせるようになり、 レシピをよく見て作るようになった。
キリコ
ポップ
いつの間にかキリコとポップとウチで、 料理を作るようになった。
コンテストの課題料理を、 何回だって練習した。
そして、ついにその日はやってきた。
ウチら三人は、 これまでやってきた全てを出し尽くした。
順位は、明らかだった。
フレア
ポップ
キリコ
もう笑うしかできない。
やりきったから、これでいいんだ。
先生
あの先公が呼んでいる。
きっと退学通知だ。
先生
ウチらは開いた口が塞がらなかった。
各々先公に質問攻めをする。
先生
料理人になった今でも、 あの時の先公の笑顔を忘れられない。