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かつての千の戦果

かつての千の戦果

「かつての千の戦果」のメインビジュアル

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吸血鬼と薔薇の館

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2022年11月04日

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陽太

吾輩は猫である。名前はもうある。
そんなフレーズから始まる有名な小説があったはずだけれど、その続きを思い出す事ができないでいる。確か、「私の名前はミケだ」とかなんとかいう内容だったと思うのだけれど……まぁいいか。
今更ながらだけど、私は人間じゃない。
一応言っておくけど、化け物でもない。
私は、ただの猫なのだ。
でも普通の猫とはちょっと違う。
そう言うと大抵の人間は私の事を変な目つきで見るからあまり言いたくないんだけど――まぁこの際だからはっきり言ってしまう事にしよう。
私は、人間の言葉を話す事ができる。
もちろん、人間の言葉を理解できているわけじゃあない。
私が理解できるのは日本語だけだ。英語なんて全然わからないし、中国語に至っては全くちんぷんかんぷんだ。それでもなぜか意味だけはわかるから不思議だよね。でもさすがに韓国語で愛の告白されたって、私じゃどうしようもないよ? だから私はいつものように、私の想いを込めて彼に花束を差し出した。彼はきっと気付いていないだろうけどね。だって彼ったら超がつくほどの鈍感なんだもん! そうして今日も、何食わぬ顔で彼の前に立つのだ。
「おはようございます!」
―――そして私は今日も、あなたが好きですと伝えるのです。
***
「あーちゃん?」
「なぁに? ゆっくん」
「いや……なんか元気ないなって思って」
心配そうな表情を浮かべる幼馴染みに、思わず笑ってしまった。
なんですかその顔。まるで迷子の子供を見るような目じゃないですか。失礼ですね全くもう。
それにしてもまさかこんなところで会うとは思わなかった。ゆっくんてば相変わらず

陽太

某所で「愛の告白に使われる花ランキング一位だそうです。あと、赤いバラの花言葉を検索すると……お察しください。
そして何より、プロポーズの際に渡す本数によって意味が変わるというロマンチックさ! あーもう素敵すぎてヤバいですよね!! 私もこんな風にロマンティックな恋をしてみたいものですが、残念ながら今のところそんな相手はいません。
なのでとりあえず薔薇の花束を持って、「好きです付き合って下さい!」と言ってみようと思います。もちろん冗談で。……………………え? これ本気で言ってるのかって? 当たり前じゃないですか、私はいつだって本気ですよ!? 本気でやってこその人生でしょう! 人生は常に真剣勝負! 恋愛だって全力投球で行かなくてどうしますかっ! というわけで、早速実践してきます。
では行ってまいりま――あああっ!? その前にまず花束を用意しないといけませんでしたぁ~~~ッ!!! *****
「えっと、あの、ごめんなさい」
目の前に立つ少女が、申し訳なさそうに頭を下げた。
彼女の背後にある窓から差し込む夕日を浴びて輝く金髪。
宝石のように透き通った碧眼。
少し垂れ気味の目元をした女性で、年齢は二十代後半くらいだろうか? 赤茶色の長い髪が特徴だ。
その女性は俺の前に来るなり膝から崩れ落ちたかと思うと、そのまま両手を広げて抱きついてきた!
「えっ!? ちょ……ちょっと!」
俺は突然の出来事に戸惑うばかりである。一体何なんだこの人は!? しかしそんな事はお構いなしに彼女は俺の首に手を回し、顔を近づけてくる。そして頬擦りを始めたのだ。まるで子犬のように。
「ああ~ん、やっぱりそうよぉ。間違いないわぁ。あの時の坊やね。もう会えないと思っていたけどこんな所で再会できるなんて運命を感じちゃうじゃない?」
さっきまでの落ち着いた感じとは打って変わり、完全に興奮した様子の彼女だったが、どうにも様子がおかしい事に気が付いた。
彼女の息遣いが激しく、顔色が悪いように見える。それに何か鼻につくような臭いまでしてきたぞ。まさか……
「あ、あなた大丈夫ですか!?」
「あら、心配してくれるのねぇ。でも平気よぉ。ただの乗り物酔いだから」
乗り物酔いだと!? 確かに車の中で酔っている人を何度か見たことはあるが、目の前にいるのは明らかに普通の状態ではないはずだ。明らかに吐き気が襲ってきているだろうし、実際今も口を手で押さえている。
とにかくこのままではまずいと判断すると、俺は彼女を介抱するために近くのベンチへと座らせた。幸い近くに自動販売機があったので水を購入し彼女に渡すと、一口飲んで大きく深呼吸をする。それで多少は気分が良くなったのか

陽太

私の名前は『バラ』です。今年で十七歳になりました。
私は普通の女の子とは違います。まず性別が違います。私の体は男の子なのです。でも生まれた時からずっと男の人だったわけではありません。私は幼い頃の記憶がほとんどありません。気づいた時にはもう今の姿でした。だから自分が何者でどうしてこうなったのかもよくわかりません。
ただ一つ覚えているのは、「お母さん」と呼んでいた人がとても綺麗な人で優しくて大好きだったことだけです。
そんな愛の告白に使われるような花の群生地帯に、俺はいた。……なんで?
***
俺の名前は田中太郎。
どこにでもいそうな名前だろ? まあ普通だよなぁ! 自分で言うのもなんだが、俺はごく普通の男子高校生だと思う。勉強も運動もそれなりだし、顔だって悪くない方だろう。
彼女いない歴=年齢なのはご察しの通りだけどな!! はっはー!!! 今日もいつも通り一人で登校して教室に入ると、なんか騒いでる奴らがいた。まあどうでもいいけどね!
「……ん?」
俺の席の前に誰かいる? いやまぁ、普通に考えて俺以外にここに座っていい人間はいないんだから俺以外ありえないんだけどさ。
「よぉ、おはよう。久遠寺くん」
「ああ、おは──ッ!?」
俺はその声を聞いてすぐに振り向いた。そして絶句した。そこにいたのは紛れもなくあのイケメン野郎だったからだ。
「なんだよ。そんな顔されると傷つくぜ?」
「えっと、誰だお前」
「おいおい、クラスメイトの名前くらい覚えててくれよ」
そう言って肩を落としながら嘆くイケメン野郎。
え、何コイツ? マジで知らないんですけど。つか名前知らんし。なんで初対面なのにこんな馴れ馴れしく話しかけてきてんの?
「悪い。本当に分からない」
「えぇ~。オレだよオレ。ほら、昨日助けてもらったじゃねぇか」
「昨日?」
俺は必死に考える。しかし全然思い当たる節はない。そもそもコイツみたいなイケてる男なんて知り合い

陽太

私が一番好きな花でした。私はいつもその花を見ていました。そしてその花を見るたびに思い出しました。あの時の事を……。
私の母はよく庭に咲くバラの花を見ながら泣いていました。私は母の膝の上で寝ていることが多かったですから、母が泣く理由は何なのかわかりませんでした。でも、私が大きくなった頃、なんとなくその理由がわかった気がします。
父は昔は優しかったそうです。しかし、病気になって以来変わってしまったらしいのです。父にとって、母との時間は幸せそのものだったのでしょう。だからこそ、そんな時間が永遠に続くと思ってしまったのかもしれません。
今の父の姿を見たら、母はどう思うでしょうか? きっと悲しいでしょうね。私も悲しくてたまりません。こんなことなら、最初から優しくしてほしくなかったと思います。だって、何も知らずに生きていればよかったと思うんですから。たとえそれが偽りだとしても。
でも、もし父が本当に優しい人だったとしたら……。いいえ、やっぱりいいです。もう過ぎた事ですし、それに今の私にとっては他人同然なんですから。
さあ、今日こそは告白しよう! 俺こと如月祐樹はそう決意した。
俺の隣にいる彼女はとても可愛い。そして優しい。こんな子が彼女になってくれたら……なんて妄想したことだってある。
でも、俺はヘタレだ。そのせいで今日まで何も言えなかった。
だから今日は言うんだ。絶対に言ってやるぞ! と意気込んでいたものの、いざとなると緊張してしまう。
いつものように話しかけるだけでいいはずなのに。
「ねえ、聞いている?」
彼女の声で我に帰る。そうだ、今は昼休み。彼女と二人きりなのだ。
「ごめん、何の話してたっけ?」
「もう、ちゃんとしてよ? 今日の放課後、空いているかって聞いたんだよ」
「ああ、うん。大丈夫だよ」
「よかったぁ。じゃあさ、駅前のカフェ行かない? 新作スイーツが出たらしいから」
「おっけー」
やったぜ。これでデートの約束ゲットだぜ!……なんか違う気がするが気にしたら負けだろう。
とにかく、今度こそ告白すると決めたのだ。
◆ 時は過ぎて放課後になった。
俺たちは駅前にあるカフェへ向かっていた。
「楽しみだね!」
隣を歩く彼女が笑顔で言う。
「そうだな。楽しみだ」
内心では心臓バクバクである。
もし

陽太

私の名前は橘 咲良です! 高校1年生で、16歳です。
好きなものはお肉と甘いものです!! そして私は今とても困っています……
なぜなら私の目の前に見たことのない人が倒れているからです。
どうすればいいのかわからないけどとりあえず声をかけてみようと思いました。
「あ……あの〜大丈夫ですか?」
反応はないみたいだね……。
よしっじゃぁ次こそ起こしてみるぞー!
「もしもーし起きてくださーい!」
そんな声と共に体を揺すられる感覚で目を覚ました俺――久遠悠紀(くおんゆうき)は、ぼけーっとした頭のまま目の前にいる女の子を見た。
綺麗な黒髪ロングヘアーの少女だ。年齢は……多分十代後半くらいだろう。顔つきからして高校生か大学生といったところだろうか?
「お兄さん大丈夫ですか?」
そう言って彼女は心配そうな顔を向けてくる。俺はそこでようやく自分の置かれた状況を理解した。
ああそうだ。確か学校帰りに公園で見たんだっけなぁ……あの時はまだ小学生ぐらいか?いやまあ今はそんなことはどうでも良くてだな。
とにかく俺はその日いつものように幼馴染みである真央と一緒に帰っていたわけなんだが――
「ねぇ、私ね好きな人が出来たかもしれない」
真央の言葉を聞いた瞬間俺の足取りは止まった。
「え?」
今こいつなんて言った!?『好き』だとぉ!!おいおいおいおい!嘘だろマジなのかよ……

陽太

私にとっては特別な意味を持つ名前である。それは私の母の名前だ。そして、父にとっても同じ意味を持っているはずだ。母は私が幼い頃に亡くなり、父は母のことを思い出す暇もないほど多忙でいつも家にはいなかったけれど、それでも私は母の名前を大事にしている。だからその名前を付けられたときはとても嬉しかった。
しかし、その名の意味を知る前に母は死んでしまった。そのせいか、父のことをあまり好きになれないのだ。
母が死んだ後、父は新しい女を作った。彼女はとても美しくて優しかったけど……私は彼女を受け入れられなかった。
だから彼女を殺した。そしてその罪を償う為に自ら命を絶った――はずだった。
気付くと見知らぬ場所にいた。そこには一人の男がいた。彼は私に優しく微笑みかけてきた。まるで天使のように。
彼が言うにはここは死者の国だという。天国でも地獄でもないらしい。ここでは罪を犯した者は罰を受ける代わりに第二の人生を歩むことができるのだそうだ。
私は彼に言った。

陽太

私の名前はクレア。
年齢は15歳。身長150センチ。体重40キロ。スリーサイズは上から80-56-84。
私は今年で王立学園を卒業する18歳のお姉様と一緒に暮らしている。
そして今日は私が通う学園の卒業式だ。
「卒業証書授与式。卒業生代表、リリアーナ=アーガレイン」
「はい!」
凛とした声が響き渡り、壇上に上がる美しい少女。彼女の名はリリアーナ。私の自慢のお姉様なのだ! 金色の長い髪に碧い瞳をした美少女。だけどそれだけじゃない。彼女は成績優秀、武術の腕もピカ一で魔力だって多いんだから! そんな凄い人がなんでこんな辺境の街にいるのかと言うと……
お父様とお母様の仕事の都合で王都に住んでいたんだけど、去年の冬にこの街に引っ越してきたの。なんでも『街おこし』とかいうのに協力する為らしいわ。
リリアーナお姉様にかかればどんな田舎でも都会になると思うけどね。
それにしてもなんでこんな事に……? 僕――水橋奏太は今、女の子二人に挟まれている。
僕の右隣にいるのはクラスメイト兼幼馴染の黒羽文香さん。艶やかな長い髪に端正な顔立ちをした美少女だ。その綺麗な横顔を眺めるだけで幸せな気分になるけど、彼女は僕の左腕にしがみついていて、その柔らかい感触のせいで心臓がバクバクして困っている。そして左隣の席に座っているのは同じ部活に所属している後輩の真冬千春ちゃん。彼女のことはよく知っている。いつも明るくて笑顔を絶やすことがない元気いっぱいの後輩で――僕の彼女でもあるから。
そう。僕たちは今、恋人同士のデートの最中なのだ!
***
今日は土曜日だけど学校はお休みではない。授業はもちろんあるわけで……。でも午前中で終わるので午後からはフリーとなる。なので僕は朝早くから真冬の家へ向かった。
「あーっ!」
真冬の部屋のドアを開けるなり彼女が大きな声を上げたのでびっくりした。
「ど、どうしたの?」
「先輩、もうちょっと待っててくださいね。すぐ終わりますから」
机に向かって勉強をしていたらしい真冬が振り返ったかと思うと、再びノートへと視線を落とした。
「うん? 何をやってるんだい?」
「見ての通りです」
そう言ってシャーペンを走らせている。
ああ、なるほど。そういうことか。
納得しつつベッドの方を見るとそこにも一人の少女がいた。僕の大切な女の子である黒羽文香さんだ。
「えっと、何をしているのか聞いてもいいかな?」
恐る恐る尋ねると、彼女はさらりとこう言った。
「見ればわかるでしょう。読書よ」
本を読んでいたのは一目瞭

陽太

吾輩は猫である。名前はあるけど名乗るつもりはない。
さて、本日は私の家族を紹介しようと思う。
私の名前はミーシャ。雌だ。そして家族の構成は、父と母と兄と弟がいる。私は末っ子なのだ。ちなみに父は黒豹で母は黒猫だ。兄弟はみんな真っ白い毛並みをしている。兄弟の中で一番体が弱いのは弟のブランシェだ。彼はまだ生まれて一年経っていない。そんな彼が心配だからか、いつもお姉ちゃんの私が面倒を見ているのだ。
今日も今日とて、私はブラッシングをしていた。最近になってやっとブラシの扱いにも慣れてきたから、気持ちよくなっているのか、毛並みが綺麗な艶を帯びている。
その証拠として、私を見上げる猫の顔はとても幸せそうだ。だから私はもっと喜んで貰おうと丁寧にブラッシングしてあげるのだ。すると、いつもより多めにゴロゴロ鳴いてくれた。可愛い! でも、そんな幸せな時間は長く続かないものだ。
突然私の手が止まったかと思うと、猫は急に暴れだした。
痛っ……何? どうしたというのだろう。私が何かしただろうか。何もしていないはずだけれど……。あぁそうか、きっとあれだ。私が小さい頃、あの人にもらったバラの花が原因なのね。あの時私は嬉しくて嬉しくて仕方なかったから、お返しをするなんて考えにも及ばなかったんだわ。だからこんなことになったのだ。ごめんなさいね、私のせいよ。貴方は何も悪くないの。でももう遅いかもしれない。だってほら、あの人があんな顔でこっちを見てるじゃない。違うの! 悪いのは全部私なんだから!!
「うふふ、今日も綺麗なお庭ですねぇ~!」
「……えぇ、本当に」
「ここのお花はどれも元気いっぱいですね。毎日楽しそうだなって思ってたんですけど、こうして間近で見るとますます実感します」
「それは良かったわ……」
「あっ、でも少し手入れ不足でしょうか? 葉っぱに元気がありませんよね?」
「いいのよ別に、放っておいて大丈夫よ」
「駄目ですよぉ。せっかく咲いたんですもん、ちゃんとお世話してあげないと可哀想です。それに、枯れちゃったらもしかしたら次の年も同じ花を咲かせられないかもしれません。来年こそはこの子が咲くかもとか、そういう期待を持っちゃいけないんですよ」
「そんなことまで気にする必要あるのかしら……」
「ありますよ

陽太

私の名前は東城瑛里華。二年生で生徒会副会長を務めている。
容姿端麗成績優秀文武両道――自分で言うのも何だけど、まあそんな感じね。
けど私は自分が完璧だなんて思っていない。
確かに勉強はできる方だし、運動だってそれなりにこなせる自信はあるわ。でもそれだけよ。
他人より少しばかり器用だからこうして何でもできてしまうだけで、何もかもが中途半端な人間。それが俺だ。そんなことは分かっているけれど、でも俺は今から自分の人生を変えようと決めたのだ。そう、あの日のように。
高校二年生の春休み。
桜の花はまだ咲いていないけど、今日はとてもいい天気で暖かい。
俺は自転車に乗ってとある場所へ向かっていた。家から二十分ほどの距離にあるその場所は、毎年この時期になると人で溢れ返る有名な花見スポットである。そしてその目的地とは、都内有数の大きな公園―――通称『東京ドームシティ』であった。
なぜこんな場所に来ているのかと言うと、それは三月の下旬にまで遡る……
***
「え? 何これ?」
突然目の前に差し出された赤い薔薇を見て、私は思わず目を見開いた。
「あ……あのねっ! これあげる!」
私より一つ年下のその少女は、頬を赤く染めながらそう言った。
差し出された真っ赤な薔薇を受け取りながらも、彼女の意図がわからなくて首を傾げる。すると彼女は少し俯きがちになってボソッと言った。
「わ、私の気持ちです……受け取ってください」
「え?」
聞き取れなかったわけじゃないけれど、一瞬理解できなくて聞き返してしまった。だって今までこんな風に告白されたことがなかったんだもん。どう反応すればいいかわからないよ。
でもすぐにハッとして慌てて言葉を紡ぐ。
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