放課後の図書室の窓際のいつもの席で
彼女は本を読んでいる
派手さはないけれど 知的な横顔が綺麗で
それは窓枠で切り取った 一枚の絵のよう
彼女の時々口元がほころぶ
彼女が何を感じているのか
知りたいと切に願った
拓巳
聞いてもいいかな?
彩香
なに?
拓巳
どんな本をよんでるの?
彩香
色々だけど……
彩香
今は「世界の拷問道具」
拓巳
……
彩香
……おもしろいよ?
放課後の教室の窓から
グラウンドの彼女を見ている
前を見つめて走る真剣な表情の横顔
何を考えながら走っているのか
知りたいと切に願った
拓巳
あのさ
拓巳
ちょっといいかな?
千尋
あ
拓巳
え?
千尋
いつも窓からジロジロ見てるけど
何がしたいわけ?
何がしたいわけ?
拓巳
え、いや、えーっと
千尋
気持ち悪いんだけど
放課後の美術室で
彼女は絵を描いている
真剣な眼差しでキャンバスを睨む横顔
まだ白いキャンバスに
彼女が何を見ているのか
知りたいと切に願った
拓巳
あの……
明里
入部希望ですか?
拓巳
いえ、違います
明里
だったら毎日のぞかないでください
気が散るので
気が散るので
拓巳
すみません……
放課後帰り道
秋の高い空を見上げて
彼女が欲しいと
切に切に
願った