TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

落書き

一覧ページ

「落書き」のメインビジュアル

落書き

1 - 落書き

♥

160

2019年07月14日

シェアするシェアする
報告する

青島譲

早く!早く!

長峰慎也

もう着くから!

急な尿意を催した青島が横でしきりにそわそわしながら、運転する長峰に懇願した。

とある廃墟へ向かう途中の些細なハプニングだった。

少し車を走らせると、薄明かりの街灯に照らされた公衆トイレが目に入った。

長峰が車を一時停止すると、青島は尻に火が付いたようにトイレに駆け込んだ。

島田理枝

島田理枝

なんだか気味が悪い所ねぇ…

後部座席にいた理枝が窓越しから周囲の闇を見回しながら呟いた。

島田理枝

これから向かう廃墟ってどんな所?

長峰慎也

山で独り暮らししてた老人が住んでた小さな小屋だよ

長峰慎也

口コミだとその老人が突然姿を消して

長峰慎也

不気味な小屋だけが当時のまま残されたらしいよ

島田理枝

そんな所に行こうだなんて

島田理枝

青島くんってよっぽどの変わり者ね

長峰慎也

まぁあいつは廃墟とかB級スポット巡りとかが趣味だし(笑)

長峰慎也

今回の廃墟もネットでたまたま見付けたらしいからね

長峰慎也

ただ、たまに傷なのがそういうスポット巡りが好きなくせに

長峰慎也

単独で行くのだけは出来ない弱虫なところだね(笑)

島田理枝

だからってなにも長峰くんと私を巻き込むことないじゃないのよ

理枝は自然と長峰を責めるような口調になったが、長峰は苦笑しながら外を見た。

長峰慎也

遅いなぁ

島田理枝

大きい方かな?

長峰慎也

こら、女性がそんなこと軽々しく口にするんじゃないよ

長峰慎也

ちょっと俺見てくるよ

長峰は車を降りると、一人きりになるのを不安がる理枝をよそに公衆トイレへと駆けた。

青島は、トイレの壁を見詰めていた。

長峰慎也

なにしてんだよ

青島譲

いや、これ…

青島が震える手で指差す壁には赤い文字でこう書かれていた。

「四角いもう一つの世界が眠る場所から」

「Help me」

青島譲

これ、もしかして血じゃないか…

長峰慎也

血?

長峰は文字に手を触れたが、壁に完璧に染み込んでいるため判断の仕様がなかった。

長峰慎也

どうせ絵の具かなんかだよ

長峰慎也

この先に廃墟があるから

長峰慎也

誰かが面白半分で書いたんだろ

長峰慎也

青島みたいな利用者を怖がらせる為に

青島譲

…ならいいけど

青島はすんなり納得し、二人は車へ戻った。

それから数十分後、山の中腹辺りでようやく例の小屋に到着した。

理枝も行くか行くまいかで悩んだ末、長峰たちと一緒に行くと決意した。

長峰慎也

ここの老人はよくこんな狭い空間で暮らしたよなぁ

青島譲

俺だったら息が詰まるな

小屋はほぼ物置小屋と変わらないぐらいの広さで、とても生活には向かない。

島田理枝

…ねぇ

島田理枝

こんなに狭いならちょっと見てもう帰ろうよ…

青島譲

ダメダメ

青島譲

ここは廃墟なんだぜ?

長峰慎也

だから?

青島譲

廃墟探索のもう一つの楽しみと言えば残留物のチェックだよ

青島譲

その場所に取り残されたまま

青島譲

数年間も変わらず放置された品物を探して回るのも

青島譲

廃墟探索の醍醐味なんだぞ

長峰慎也

俺には分からないなぁ

島田理枝

生憎私にも…

青島譲

ともかく、少しだけ小屋の中になにがあるか探してみよう

青島は片手に懐中電灯、反対の手に軍手をして床を手探りし始めた。

長峰と理枝は呆れながらその様子を見守っていたが、不意に青島が声を上げ、身震いした。

青島譲

ちょっとこれ見てみろよ

青島が光を照らすと、部屋の端に掌に収まるぐらいの手鏡が落ちていた。

長峰慎也

それが廃墟マニアの心を刺激する残留物かい?(笑)

青島譲

この場所に似つかわしくないような気がしてさ

島田理枝

独り暮らしの老人が鏡を使ってちゃおかしいかしら?

長峰慎也

そんなの生活用品として使ってた可能性があるだろう?

青島は手鏡を裏返してみた。

そこにマジックでこう書かれていた。

「四角いもう一つの私の世界」

理枝は首を傾げて書かれた言葉を口に呟いていた。

隣の二人が得体の知れない恐怖と、背筋に冷たい戦慄が走っているのも知らず。

長峰慎也

長峰慎也

さっきのトイレで見た落書きと似てる…

青島譲

しかもあれには「Help me」って…

島田理枝

なんの話してるの…?

青島譲

この手鏡が「四角いもう一つの世界」で

青島譲

それが「眠る場所」と言えばここだ

長峰慎也

ここに手鏡が落ちてたんだからそういうことになるな…

長峰慎也

そして「Help me」…

青島譲

青島譲

もう帰ろう

長峰慎也

さ、賛成

島田理枝

どういうこと??

状況が呑み込めない理枝を連れて車に乗り込み、長峰はエンジンを掛けた。

理由は分からないが、長峰の危険アラームが胸の奥でガンガン鳴り響いていた。

後ろの小屋がどんどん小さくなって行く。

ホッと一安心した長峰と青島。

理枝は相変わらず意味が分からない顔をしていたが、嫌な廃墟探索が早く切り上げられすぐほくそ笑んだ。

青島譲

バックミラーを見ていた青島の表情が恐怖に引きつった。

続いて走りながら覗いた長峰も凍り付いた。

長峰慎也

白い無地の服をまとった髪の長い女が生気の感じられない顔色で、

口を大きく開き両手を前に突き出しながら猛スピードで車に接近していたのだ。

振り返って存在に気付いた理枝も思わず悲鳴を上げた。

青島譲

逃げろ、逃げろっ!

長峰は無我夢中で車を走らせた。

長峰慎也

三人は無事、悪魔の形相を浮かべた女の怨霊から逃げ切れた。

が、誰も彼らの話を信じなかった。

何故なら、後日それを調べに赴いた仲間の誰もが、青島を降ろした公衆トイレを、

見付けられなかったからだ。

更に奇妙なことに、青島がネットで見付けた廃墟の情報も消えていれば、

手鏡が落ちていた小屋自体もその場から姿を消していたのだった。

2019.07.14 作

この作品はいかがでしたか?

160

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚