ハロウィンが近づくにつれて、 俺はずっと悩んでいた。 「仮装するかしないか」。
一人で悩んでても らちがあかないから 彼氏持ちの永玖に聞いてみることにした。
直弥.
永玖.
永玖はスマホから顔を上げて、 不思議そうな顔で俺を見た。
直弥.
俺は少し探るような口調で尋ねた。
永玖.
永玖はため息まじりに答えた。
直弥.
永玖.
純粋な興味で聞くと、永玖は急に顔を赤くして、 小さな声で言った。
永玖.
直弥.
すると永玖はニヤリと笑った。
永玖.
永玖の言う通りだ。 哲汰は、俺が可愛いものを身に着けるのが 大好きだ。特に、予想外のサプライズには弱い。
直弥.
俺はまだ躊躇していた。 ガッツリした仮装は恥ずかしすぎる。
永玖.
哲汰にもよく「にゃあにゃあ」とか、 冗談で言われたりもする。 それに、猫なら耳としっぽくらいで済むし、 ハードルも低い気がした。
その瞬間、僕の中で何かが決まった。 哲汰を喜ばせたい。
直弥.
永玖.
永玖の提案に、俺の胸が高鳴った。 サプライズ仮装でお出迎え。 俺はすぐに猫耳と尻尾、そして肉球のついた手袋をネットで注文した。 少しフワフワした黒いパーカーも合わせて。
そして迎えたハロウィン当日。 哲汰は仕事で遅くなると言っていた。 俺は永玖に相談した通り、哲汰が帰ってくる直前に猫の仮装に着替えた。
鏡に映る自分。 黒いパーカーのフードにはピンと立った猫耳。 腰からはフワフワの長い尻尾。 頬にはアイライナーでひげを描いてみた。 …うん、思ったよりも可愛いかもしれない。 ちょっと照れくさいけど、 哲汰の驚く顔を想像したら、それも吹き飛んだ。
玄関のドアが開く音がした。
哲汰.
哲汰の疲れたような声が聞こえる。 僕はソファーの後ろに隠れて、 哲汰がリビングに入ってくるのを待った。 哲汰がリビングの電気をつけて、 ハッと息をのんだのがわかった。
直弥.
少し照れくさそうな、 でも精一杯可愛い声を出しながら、 ソファーの後ろから顔を出した。
哲汰.
哲汰の目が大きく見開かれる。 一瞬の静寂の後、哲汰の顔に 満面の笑みが広がった。 その笑みは、嬉しさというより、 獲物を見つけたような…なんというか、 猛獣のような笑みだった。
哲汰.
哲汰は疲れているはずなのに、 物凄い勢いで僕に駆け寄ってきた。
哲汰.
直弥.
俺が言葉を言い終わる前に、 哲汰は俺を抱きかかえて、 そのまま寝室に直行した。
哲汰に抱き上げられたままベッドに連れて行かれた俺は、そのまま柔らかい布団の上に下ろされた。
直弥.
哲汰.
哲汰の耳元での囁きに、僕の体は熱くなった。
哲汰はゆっくりと俺を見下ろし、 その瞳は熱を帯びていた。
哲汰.
そう言って、俺の頬にそっと触れる。 その手が少し震えているのに気づいて、 俺の胸は高鳴った。
直弥.
俺がそう言うと、哲汰は優しく笑った。
哲汰.
ゆっくりと俺に覆いかぶさってくる。
直弥.
哲汰.
俺が何か言う前に、哲汰は再び俺にキスをした。 今度はさっきよりもずっと情熱的で、 俺の呼吸を奪うようなキスだった。
哲汰は、俺が着ている黒い衣装に手をかけ、 ゆっくりと、愛おしむように その服を脱がせていく。 服がはだけていくたびに、肌に触れる哲汰の指先が熱くて、俺は身悶えた。
哲汰.
直弥.
哲汰は俺の肌にキスを落とす。
俺は哲汰の首に手を回した。
来年も、再来年も、哲汰とこんな甘い夜を 過ごせたらいいな、と願いながら。
コメント
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ものすごく面白かったです えいはやも見てみたいです