コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
主
主
主
主
主
主
主
主
主
街に雪が降り始めた
粉のような軽い粒が、街灯に照らされながら静かに舞っている
吐く息が白く溶け
空に消えていく
__その中を俺は歩いていた
ポケットの中のリングケースが、指に触れる
開けたことのない箱
渡せなかった想い…
桃
静かな夜道でつぶやく
その声は雪の音ですぐに消えた
去年のイブも雪が降っていた
その日青と一緒に歩いた帰り道。
凍るような風の中で青は言った
「来年も、同じ場所で会おうねッ!」
あの笑顔を鮮明に覚えている
頬を赤くして
手袋の中で指を擦りながら
「寒い寒い」って文句を言いながら、、でも楽しそうで…
だがその「来年」はこなかった
それどころか
「明日」さえも
別れた後に通り魔事件にあったんだ
無差別で人を殺す事件…
あいつは春も待たずに旅立った
病院の白い天井
届かなかった言葉
握れなかった手
どれも全部まだ胸の中に残ってる
たがら今年もこの場所に来た
約束のカフェ
街の隅にある
あの日と同じ小さな店
灯りは柔らかく、店内は暖かい
でも、心の中はずっと寒いままだ
向かいの席は空いている
そこに青がいる気がして
目を閉じると幻が浮かんでくる
青
桃
____くだらない会話さえ愛おしい
外ではカップルたちの笑い声
楽しそうな音が遠く聞こえる
その中に、もう自分たちはいない
桃
小さく呟いてしまった
店主は事情を知ってるため優しく俺を励ますかのように
注文をしていない俺をそっとしててくれた
その時にテーブルのキャンドルがふっと揺れた
_____風?いや、窓は閉まってる
次の瞬間
懐かしい声がした
青
桃
息が止まった
顔を上げる
そこに青がいた
白い光をまとって
雪の粒みたいに淡く揺れている
笑っている
あの日と同じマフラーを巻いて
桃
青
青は少し照れくさそうに笑った
青
時間が止まる
涙が勝手に溢れた
桃
青
青が席に座る
その仕草も
声の響きも何もかもが懐かしい
桃
青
青
青
桃
青が手を伸ばす
助けているのに温もりがあった気がした
青
桃
青
桃
青
青は冗談のように言った
俺の胸で何かが弾んだ
桃
桃
照れ隠しのように言った苦し紛れの言い訳
その瞬間世界が静まりかえる
雪が止み
音がなくなる
青が俺の手を自分の頬に寄せてきた
指先が頬に触れ、目が合う
あと、少し
呼吸が触れ合う距離
青
青の声が震える
青
俺は首を振った
桃
桃
青
青
青
ゆっくり目を閉じる
その時唇の辺りに微かな熱
ほんの一瞬確かに感じた
雪よりも冷たくて、涙よりも暖かい
儚いキス
青が耳元で囁く
「…好きだよ、ずっと」
目を開けた時
あいつの姿はなかった
テーブルの上には
青のマフラーの紐がひらひら光っていた
桃
桃
箱の中には去年買った結婚指輪
不思議と涙が頬をつたう
孤独と恋しさと
あの唇の温もり
全部、全部が愛おしくて
でも手に入らない
桃
青
桃
青
桃
桃
笑うしかなかった
カランコロン
あの人同じ帰り道
指輪の箱を強く握る
今しか言えない
今じゃないと駄目だ
桃
青
桃
青
あぁ、
あの日の通り魔事件、
あの犯人捕まってなかったのかよ
…
でも、これで青と一緒になれるなら
桃
「…好きだよ、ずっと」
俺は
「また来年も」
俺は、
「クリスマスイブに」
俺は、生きて、
これを渡すって、
決めたじゃんかよ
桃
桃
桃
桃
桃
ピーポーピーポー
桃
桃
桃
桃
桃
11時59分
もうすぐクリスマス
青
ひざまづいて
一年越しに箱を開ける
青
桃
桃
桃
桃
青
青
青
指輪を薬指にはめる
桃
桃
青
青がどんどん薄くなってく
青
桃
好きって言おう
主
主
主
主
主
主
主
主