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冬葵
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禪院家の本邸
磨き上げられた廊下を、十五になった甚爾の足音が汚していく
彼が身に纏っているのは、およそ名門の息子が着るものとは思えない、ボロボロの着物だった
???
座る当主が吐き捨てるように言った
周囲を囲む親族たちの、笑い声が聞こえてくる
ボロ衣のような着物は、その余裕のある仕立てのおかげで、彼の異常な筋肉は塗りつぶされている。
一見すれば、ただの無個性の少年にしか見えない
甚爾
甚爾
当主
当主
当主
当主
当主の声には、期待の微塵もこもってない
あるのは、無個性を抱える『家の恥』をどう処理するかという計算だけだ
当主
当主
甚爾
甚爾は、前髪の隙間から冷え切った瞳で男を見つめた
普通の少年なら絶望し、張り付くような場面
だが、甚爾の口元に浮かんだのは、薄汚い三日月のような笑みだった
当主が不快そうに目を細める
甚爾はさっさと背を向け、部屋を出た
自室という名の、薄暗い物置部屋
甚爾
甚爾はボロ衣に包まったまま、天井を上を見上げた
前世から続く「運の悪さ」には、もう期待していない
だが、この「個性」という名の「呪い」が支配する世界を、心の底から嫌悪していた
『雄英高校』
そこは、個性で平和を救おうとするガキ共が集まる場所
そこで「無個性」の自分が殴り込み、片っ端にエリート共を否定してぶっ潰す
そこに、自分をゴミ扱いした禪院家への復讐であり、同時に、自分を縛り続ける「天与呪縛」という宿命への、唯一の反撃だった
呪力も個性も無い、ただの肉体一つ
この肉体一つで、ヒーロー社会の常識を叩き潰す時が動き出すのであった