境界は、今日も綺麗だ。
曖昧で、脆くて、触れれば壊れそうで。
だからこそ、面白い。
灰縁
さて
鳥居の影に腰を下ろし、俺は独りごちる。
灰縁
次は……誰を揺らそうか
叶夜はもう"揺れている"
本人は気づいていないが、十分だ
美琴は守る側。
強いけど、強すぎる心は折れやすい
灰縁
……でも
口元が、自然と歪む
灰縁
1番危ういのは__
穏やかで、静かで、
選ばないことを"選んでいる"巫女。
灰縁
叶結 夜鈴……よりぃ、か
掟を守っている。
でも、それは盲信じゃない。
灰縁
自分で分かってて、
停まってる
停まってる
それは、危険だ
とても。
灰縁
選ばせる価値があるかな ~
誰かを壊したい訳じゃない
ただ__
灰縁
境界は超えるためにあるもんね ~
俺は立ち上がり、夜の奥へ溶けていく
灰縁
さてさて
次の夜は、少し賑やかになりそうだ。
叶夜
……話し合いって、こんな感じなのかな
小さな部屋
布団を避けて、3人で向かい合って 座っている
美琴
話し合いって言うほどじゃないでしょ
美琴が腕を組んで言う
よりぃ
でも、まぁ、大事だと思うわ
よりぃさんはいつもより穏やかだ
空気は少しだけ張り詰めている
叶夜
今日のこと……
話しておきたい
話しておきたい
私が言うと、美琴が頷いた。
美琴
妖が近づいてきてる
美琴
…しかも言葉で
よりぃさんは静かに聞いている
美琴
……灰縁っていう妖に、
会ったの
会ったの
よりぃ
……
美琴が続ける
美琴
叶夜が止めてくれなかったら、私……
その先は言わなかった。
よりぃ
止められて、よかった
よりぃさんが、柔らかく言う
よりぃ
でもね
少しだけ、声の調子が変わる
よりぃ
"止める"だけじゃ、
よりぃ
足りなくなる時もある
私は、息を呑んだ
叶夜
……どういう意味ですか?
よりぃ
選ばされる前に、話す必要があるってこと
よりぃさんは、私と美琴を交互に見る
よりぃ
外に出る、出ないじゃない
よりぃ
"何を信じるか"の話
美琴が、唇を噛む
美琴
……私は、叶夜を守りたい
美琴
それだけ
よりぃ
うん、そっか
よりぃさんは否定しない。
よりぃ
それは、とても正しいわ
1拍置いて
よりぃ
でもね、美琴
よりぃ
守るって、"決める"ことでもあるの
沈黙
叶夜
……私は
私が口を開く
叶夜
まだ、何も決められません
叶夜
外のことも、掟のことも
でも。
叶夜
……2人と話す時間は、嫌じゃないです
美琴の表情が少しだけ緩んだ。
美琴
……当たり前でしょ笑
よりぃ
じゃあ今日はそれだけで
十分だよ ~
十分だよ ~
よりぃ
答えはまだ要らない
よりぃさんは微笑んだまま言う
よりぃ
……まだ、ね
よりぃさんはなにが呟いたけど よく聞こえなかった
叶夜
……?
叶夜
(何言ったんだろ、
夜は、深まっていく
外では、誰かが境界を見つめていることも 知らずに。







