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ラナ

……え、まって。天井、割れてる。

起き上がった瞬間、まず目に入ったのは悲惨な部屋の光景だった。 壁には焦げ跡、床には木片、そしてベッドの横には──穴。 えぐれてる。まるで小型爆弾でも落ちたみたいに。

ラナ

……わたし、やらかした……?

手のひらを見つめながら呟く。じんわり、まだ廃力の余韻が残ってる。

そこに、バンツーとドアが開いた。 メイドの声が裏返ってる。そりゃそうだ、屋敷の一角ごと吹っ飛ばしたんだから

メイド


ラナお嬢様っ!?ご無事ですかっ!!?

ラナ

あ、うん。ちょっと.....その、実験を.....?
(いやいや、どんな実験だよ!)

とりあえず笑ってごまかそうとしたそのとき、メイドの視線がラナの背後を見て凍りついた。

レオネル・ド・グランディア

....何をしていた?

低く冷たい声。 振り返ると、扉の前に立っていたのは一お父様、レオネル・ド・グランディア。 まるで氷の像みたいな無表情に、ラナの背筋が勝手に伸びる。

ラナ

え、えっと......掃除を.....?(違う!言葉選べ!!)

レオネル・ド・グランディア

……掃除、だと?

ラナ

(ひぃっ……声が低い!!)
えっ、えっと……ちょっと、魔力で?ほこり?を、飛ばそうかと……

レオネル・ド・グランディア

魔力でほこりを飛ばした結果、屋敷の壁が消し飛んだと?

ラナ

(……終わった。詰んだ。)

ラナ

す、すみません……少しだけ試してみようと……

レオネル・ド・グランディア

……“少し”でこの有様か

レオネルは低く呟き、足元の瓦礫を見下ろした。 その目に怒りが宿る――が、ほんの一瞬だけ、ラナの手に残る火傷跡を見て、 その瞳が、かすかに揺れた。

レオネル・ド・グランディア


…次からは、護符を使え。無駄に傷を作るな

ラナ

えっ……あ、はい……

ラナ

(今の……心配、した? いやいや、まさか)

レオネル・ド・グランディア

……医務室へ行け。報告は後で聞く。

背を向けて去っていくレオネルの背中を見ながら、ラナは固まったまま、 小さく呟いた。

ラナ

おかしいな...漫画と違う。

医務室の白い天井を見上げながら、ラナは頬をぷくっとふくらませた。

ラナ

……怒られた。

小さく呟く声に、包帯を巻いてくれていたメイドがくすりと笑う。

メイド

お嬢様、あれだけ屋敷を吹き飛ばして“ちょっと試した”は通りませんよ?

ラナ

うう……そんなに吹き飛ばしてないもん……たぶん……

軽口を叩いてみせながらも、ラナの胸の奥はざわついていた。 ——あのとき、ほんの一瞬だけ見えた、レオネルの揺れた瞳。 怒ってるだけじゃ、なかった気がする。

ラナ

一つ聞いてもいい..⁇

メイドの顔を覗き込むように慎重に聞く。

メイド

はい、なんでしょうか

ラナ

なんで……その、私が魔力を暴走させたのに、そんなに驚いてないの?

メイド

え?

ラナ

だって、天井も壁も吹っ飛んだんだよ!?普通もっと『きゃー!』とか『バケモノ!』とかなるでしょ!?

自分でもおかしいと思うくらいに なぜか焦っていた。まるで自分にトラウマがあるように、[バケモノ]と思われたくない、 嫌われたくないと。

ラナ

(おかしいな...私にお決まりの悲しい過去なんてないはずなのに...)

メイドの返事をまっている間少し息が荒くなってくる。

メイドは一瞬きょとんとして、少しだけ笑った

メイド

……お嬢様が“初めて”魔力を使われたのですもの。これくらいで済んだなら、むしろ上出来かと

メイド

それよりも、私は...(ラナお嬢様の性格が変わったことが気になる..頭を打つ前はまるで悪女だったけど..今は..)

メイド

い、いえ!なんでもございません!

ラナ

上出来!?

メイド

ええ。奥様も初めてのときは屋敷半分を吹き飛ばされたそうですし

ラナ

じゃあ私の魔力は弱いってこと..⁇

メイド

決してそんなことはありませんよ。みんな不得意があるように、お嬢様にも得意な魔法などができるはずです!

ラナ

なるほど..

メイド

ですが……レオネル様があんなにお優しい目をされたのは、久しぶりに拝見しました

ラナはピタリと動きを止める。

ラナ

……え、優しい目? あれが? 氷の彫刻みたいな人の? あれが優しい?

メイド

そうですね..お嬢様が頭を打つ前はあまりそもそも興味を示していなかったですよね..

メイドは自分の言葉に気付き 口を押さえる

メイド

申し訳ありません..ラナお嬢様!

ラナ

気にしないで‼︎あいつが私のことなんて眼中にないなんてとっくに知ってるわ!

メイド

...あまりお気になさらないでくださいね。

ラナ

もちろんよ!

メイドがそっと包帯の端を結びながら、

メイド

……ですが、ラナお嬢様。あの方は本当に“氷”のようなお方なのですよ

ラナ

え?

ラナ

そんなこと知ってるけど..

メイド

優しい目をされたのを、私たちは十年以上見たことがありませんでした

ラナは少しだけ息を呑む。

ラナ

10年以上...?

胸の奥に、何かひっかかる。

ラナ

(あれ? 私が転生してきたのって、まだ十歳くらいのはず……。それってつまり、私が生まれる前から……?)

少しの沈黙

メイド

……いえ、なんでもありません。今はお休みくださいませ

メイドが部屋を出ていくと、 ラナは天井を見上げて小さくため息をつく。

ラナ

……なんか、思ってた“悪役令嬢ルート”と全然違うんだけど……。
 氷のパパが、もしかして人間味あるとか、聞いてないんだけど……

ラナは頬を膨らませ、包帯を見つめながらぼそりと呟く。

ラナ


……やっぱり、私の転生ストーリー、何かズレてる気がする

ラナ

(ま、いっか。どうせそのうち“運命の出会い”とかあるでしょ!)

そう言い聞かせて笑おうとした瞬間、 ――胸の奥が、ちくりと痛んだ。

ラナ

(……“どうせそのうち”……?)

どこかで、誰かの笑い声がかすかに響く。 ――“ラナって、ほんと空気読めないよね”

ラナ

...?

ラナは思わず辺りを見回す。 誰もいない。 でも、耳の奥には確かに残っていた。あの日の声が。

ラナ

……あれ? 今の……

そう呟いて、自分の胸に手を当てる。 鼓動が速い。 “嫌われたくない”――その言葉が、形のない不安として残った。

ラナ

……寝よ、寝よ。考えすぎだわ!

そう言って毛布を引き寄せるが、 瞼を閉じても、どこか冷たい笑い声が頭から離れなかった

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