もやしくん
もやしくん
もやしくん
もやしくん
お兄様に頂いたワイシャツに着替えると、長く寒い廊下を渡り、無駄に広い食堂に向かう。
これまた無駄に大きく分厚いドアを開けると、人の目に触れずにいる装飾品達が私を出迎えた。
イギリス
銀の燭台が置かれた目の前、私の特等席に座る。
インド
インドは私の前に置かれたティーカップに紅茶を注いだ。
茶葉の甘い香りと林檎のフルーティーな香りが広がる。
インド
イギリス
湯気が立つ紅茶に口を付けたが、熱くて暫くは飲めそうになかった。
今日はお兄様は居ない。だから、こんな時間に起きてゆっくり食事を取れるのだ。
お兄様が家にいらっしゃると、食事を取らせて貰えないことなんて日常茶飯事だ。
…
今日はお兄様が忙しなく鳴らす早歩きのヒールの音も無いし、お兄様のご機嫌取りをするインドの声も無い。
勿論、お兄様の罵声も鞭の音も僕の謝罪も聞こえない。
静かな家が、心地良かった。
インド
私はいつの間にか、無駄に長い机に突っ伏していた。
イギリス
イギリス
インド
インドは私の前に銀の食器達を並べた。お兄様が買い付けた食器だけれど、私は陶器の食器の方がずっと好きだった。
インド
イギリス
私は数学が嫌いだ。インドの教え方は難しい。なのに、私が怒られる。だから嫌いだ。
私はスプーンでスープを掬い、口に運ぶ。嗚呼、美味しい。
私は深く、溜息を吐く。
お兄様が滅ぶ事など、想像が付かない。私への教育も躾も、全て無駄では無いか?私はずっと思っている。
インドに伝えても、そんなことを考えている暇があるなら勉強しろと言われた。私は真面目に言っているのに。
そもそも、私は殆ど外に出たことが無い。時々お兄様に連れられて、知らない大人達が沢山居るところに行くだけだ。
こんな私に、国のトップは務まらない。
インド
インドの声で、我に返る。考え事に集中し過ぎたせいで、食事はすっかり冷めきってしまった。
イギリス
インド
インド
イギリス
私は口に、食事を詰め始めた。
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