屋敷は半分ほど吹き飛んでいた。
蔦の絡まる西洋風の屋敷だ。右手側の半分は手入れの行き届いた古風な屋敷であり、
左手側の半分は黒い瓦礫の山だった。瓦礫には残り火がくすぶり、灰色の煙を上げている。屋敷は住宅街から離れた人工林の奥にあるために、怪我人や見物人の姿はなかった。その代わり、七、八人の銃を持った人間がいた。屋敷に向けて小銃を構え、
時々乾いた銃声を響かていた。
太宰治
始まってるね
太宰治
派手な爆発痕。あの爆発のど真ん中に入れて貰えれば、苦しまずに吹っ飛んで死ねたんだろうなあ・・・・・・
雫
太宰君、仕事の後で自殺してください。
中原中也
あーはいはい。後で幾らでもぶっ殺してやるから、今は仕事に集中しろ
雫
・・・武装組織の襲撃ですね。外に八人、中にも何人かいるかも。
太宰治
!前から思ってたけど、雫さんってなんか手慣れてるよね。
爆発の時も余り驚いてなかったし。羊の事も知らないと思ってた
雫
表情に表れないだけでちゃんと驚いてますよ。
羊の事については、
雫の台詞を遮るかのように、破砕音がして建物の壁が吹き飛んだ。
二階あたりの漆喰壁を突き破って、中から武装した男が飛び出てきた。
誰かに吹き飛ばされたらしい。
太宰治
あー、まあ、蘭堂さんの異能相手にこの程度の武装じゃ、
ああなるよね
雫
蘭堂さんってそんなに強い異能者だったんですか?
中原中也
蘭堂?
雫
マフィアの異能者で、これから私達が話を聞きに行く相手です。
えーと、極度の寒がりで、貴方を拘束していた・・・・・・
中原中也
あいつか。 助けに行くか?
太宰治
行くにしても、先ずは相手の所属と作戦規模を知らないことには・・・・・・
雫
(それじゃあ、私のテレパシーで心を読めば・・・)
???
教えて差し上げましょうか
???
両手を上げて振り向きなさい
太宰と中也と雫は一瞬顔を見合わせてから素直に手を上げて後ろを向いた。そこには暗灰色の野戦服を着た男が立っていた。大木のようにどっしりとした男だ。
拳銃を雫と太宰に向けている。
???
なんだ、子供ですか。てっきり増援部隊かと。マフィアが人手不足なのか、あの蘭堂とかいう男に人望がないのか
太宰治
す、すす、すいません!僕達はただの・・・・・・近所の子供です!
太宰が恐怖に震える声を出した。
これが演技だということを雫は0,7秒で理解した。
雫
!
雫
・・・蘭堂さんの家に配達に行く途中で、だからッ・・・・・・
中原中也
おい オッサン
中原中也
お互い時間を節約しようぜ。あんたが俺に一発撃つ。そしたら俺が反撃にあんたを隣町までぶっ飛ばす。ついでに残った襲撃者も全員ぶっ飛ばす。それで襲撃はお開きだ。どうだ?
???
何だと?
太宰治
・・・・・・ああ、もうせっかく演技で騙して、情報を引き出そうと思ったのに・・・・・・
雫
まあまあ、私に出来ることはやりますので・・・
太宰治
ん?今なんでもって云った?
雫
いや云ってませんよ?
太宰治
なに、なんにも心配事は要らないよ!ただ・・・・・・ゴニョゴニョ
雫
! 判りました
そして雫は自分の異能の一部、瞬間移動を使って消えた。
中原中也
どうした?子供は撃てねえか。だがこの世界に生きるなら、敵を見た目で判断しちゃいけねえ事くらい知ってんだろ。装備からして、あんたら《GSS》の戦術班だろ?
男が顔を引きつらせた。
《GSS》
すなわちゼルハルトセキュリテイサアビスはマフィアと対立する非合法組織のひとつだ。