《GSS》、元は海外資本の真っ当な民間警備会社だったが、本国から援助打ち切りを受けた後に非合法化し、今は安全の保障だけでなく危険の創造にも荷担している。一般的に云えば「海賊」だ。契約していない企業の船を襲撃し、積み荷を奪う。ただし《GSS》と警備契約を結んだ企業は襲われない。悪名がそのまま顧客獲得広報になる、一挙両得の副業だ。そしてその副業で何度かポートマフィアの荷を沈め、二つの組織は現在極めて険悪な関係にある。訓練教官が本物の軍人であるために構成員の戦闘練度が高く、マフィアも苦戦を強いられている。
中原中也
GSS
中原中也
中也が銃に優しく触れている。それだけで、軽量の拳銃が巨大な鉄塊に変わってしまったかのように男の手に優しくのしかかる。中也が拳銃を軽くつつくと、いきなり拳銃が男の胸めがけて横向きに落下した。大砲のような重量で、拳銃が男の防弾外衣にめり込む。胸の骨が衝撃で軋む。男が悲鳴をあげた。胸を押さえて後ずさる男の足元に、拳銃が落ちてカランと軽い音を立てた。中也の手を離れたため、先程の重量は既に消えている。
GSS
男が怒声とともに拳を放った。
中原中也
軍隊仕込みの逆突きが中也に到達するよりも早く、黒い旋風が男の顎に叩き込まれた。 中也が跳び上がって放った高速後ろ回し蹴りが直撃したのだ。
中原中也
男は仰向けに倒れた。脳震盪を起こし、気絶している。
太宰治
太宰治
中也の異能は重力子を操る。その操作は触れた対象だけでなく、中也自身の肉体においても及ぶ。己の重力を減じさせて軽くし、高速軌道の攻撃を行いつつ、 命中する瞬間にだけ重力を戻す。そうすることで、羽毛の速度で放たれた蹴りが、鉄球の重さで突き刺さるのだ。
雫
雫が紙のような物を太宰に渡す。
太宰治
中原中也
太宰治
太宰が云い終えると同時に、十名ほどの人影が現れた。銃を持った人影だ。太宰と中也と雫を半包囲するように広がり、二人に小銃を向けている。
中原中也
太宰治
雫
雫
その瞬間、大音量で音楽が掛かった。 雫の手に持つ携帯からだ。
太宰治
GSS
一斉に銃火があがる。