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空

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1 - 空

♥

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2023年05月13日

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僕はダメな子なんだ。

勉強も出来ないし

何か得意なことがあるって わけでもない。

ずっと続けているピアノだって

下手でも上手でもない。

何をしても中途半端なんだ。

紫にいみたいな リーダーシップもなければ

赤にいみたいに勉強も出来ない。

桃にいみたいなストイックさもないし

青にいみたいに愛嬌もなくて

橙にいみたいな面白さもない。

僕には

何もない。

お兄ちゃんたちは

僕がいくらテストの点数が悪かろうと

成績が悪かろうと

「大丈夫だよ」

「頑張ってるの知ってるよ」

って言って怒ったりはしない。

それが余計に苦しい。

怒るなら怒ってほしい、 なんて思っても

実際怒られたらきっと落ち込む。

僕は一体何を求めているのだろうか。

死にたいとは思わない。

でも、生きたいとも思わない。

ただ時間は流れていくばかりで

僕にかまってくれたりしない。

暖かな風が僕の頬を撫で、

見上げれば澄み切った青空が ずっと広がっている。

この空に吸い込まれたら どんなに楽なのかと

今まで何度考えたかわからない。

実際吸い込まれるわけがないし

消えることができるわけもない。

それは重々承知の上で

それでも空に 吸い込まれてしまいたい。

そう思うくらい、僕は

辛いのかもしれない。

...なんて

誰にも言えないけど

何が誰にも言えないの〜?

驚いて後ろを振り向くと、 青にいが立っていた。

な、なんでここに

なんでって...家が一緒だから...?笑

気づけば家の近くの 横断歩道まで来ていたらしい。

青信号を何回逃したのだろうか。

確かに...

...ずーっと突っ立って

何考えてたの

僕の隣に来てそう言う青にい。

...もし

もし僕がいなくなったらどう思いますか

なに急に笑

ん〜...

そりゃあ...悲しむよ?

泣くなあ...たぶん

泣く...

うん

可愛い弟がいなくなったら泣くでしょ笑

...、

僕...もう嫌なんです

...?

なんの取り柄もない自分が

何をしても中途半端な自分が嫌で嫌で仕方なくて

...でも、死にたいとかじゃないんです

かと言って...生きたくもない...

......

...このまま

このまま空に吸い込まれたいなあ...なんて...笑

...、

...わかってるんですよ

空に吸い込まれることもないし

消えることもできないことくらい...笑

どんなにバカな僕でもわかります...笑

黄くん

...、

...辛いんでしょ

...!

自分の気持ちに嘘つかなくてもいいんだよ

...僕は

僕は...

...辛いですポロ

辛いよ...青にい...ポロ

...!

ギュ...

...!ポロ

黄くんは...頑張ってるんだよ

本当に頑張ってる

いつも頑張ってるねって言ってきたけど

あの言葉に嘘はない

僕は...僕たちは...本当に思ってる

...でも

でも...

僕は勉強も出来ないし

お兄ちゃんたちみたいな個性もない

良いところもないんです...ポロ

それなのに...

どこが頑張ってるんですか...

僕は...頑張ってなんかない...!ポロ

生きてるだけで頑張ってる...!

...!ポロ

...生きるのって大変なんだよ

どんなに勉強ができても

どんなに個性があって

良いところがあっても

全部がうまくいくなんてことありえない

完璧はないのに完璧に向かわないといけない

正解かどうかわからない道を歩き続けないといけない

...大変なんだよ

だから...だから

ここまで生きてきた黄くんが...頑張ってないわけない

...、ポロ

...黄くんの気持ちは少しわかるんだ

僕も...ダメな子だったからさ...笑

...?ポロ

僕は上3人と比べて全く勉強ができなくて

何か特別できることもなくてさ

ゲームも好きだったけど

桃にいには勝てないしさ...?笑

兄ちゃんたちは勉強ができない気持ちがわからないから

きっと呆れられてるんだろうな...とか思ったら悲しかったし辛くてさ...笑

今でこそ大学に行けてるけど

そんなに学力が高い学校でもないし

それでも学費を払ってくれてる兄ちゃんには感謝しかなくてね

まあ...もちろん自分で払ってる部分もあるけど

兄ちゃんたちがくれてるのはお金だけじゃないからね

お金だけじゃない...?

うん

でも...それは今から僕がもっともっと黄くんにあげるべきものかな〜笑

...?

僕が...もらえるもの...

なんだろう...

ふふ笑

そのうち気づくよ

僕でも気づけたんだから

...そうですかね

うん、きっとね

できるよ、と言うように 暖かい風が僕たちの間を吹き抜けた。

ふぅ...

作業を終え、ベランダに出る。

無事高校を卒業し、音楽の専門学校に 通うことになった僕。

兄ちゃんたちがくれてるのはお金だけじゃないからね

あの時はわからなかった 青にいの言葉。

今はわかる。

お兄ちゃんたちが僕にくれているのは

“愛”

そうでしょ?

青にい

ふふ笑

さあ?笑

とぼけていた青にいだけど、きっと 当たっている。

あの日と同じ綺麗な空。

もう、「吸い込まれてしまいたい」 なんて思わない。

だって...

こんなに素敵な... いや、“愛”をくれるお兄ちゃんたちが 僕にはいるから。

...頑張ろ

暖かい風が僕の頬を撫でた。

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