コメント
3件
うわぁ、、最後の桃くんの「忘れていいんだよ」がめっちゃ刺さる⋯、 めっちゃ好きです、はい((??
コメント失礼いたします(❁ᴗ͈ˬᴗ͈) うぉぉ…(((((°°;)読めば読むほど謎が深まっていく…(私に読解力がないだけ説?) 本当にすごいです…この作品をすごいの一言でしか形容できない自分の語彙力が憎いです…(´・_・`)
開いていただきありがとうございます! このストーリーは、この連載の第七話となっております。 注意事項等、第一話の冒頭を"必ず"お読みになってから この後へ進んでください。
彼と出会った日のことは、 ちゃんと覚えている。 あの日、確かに、彼は俺の命を救った。
こちらを覗き込む瞳が持った感情も、 震えていた声の意味も、 俺は知らない。分からない。 ただ、彼は優しくて、 きっと俺に同情してくれたのだろうと思った。
…あぁ、なんだっただろう。 彼は俺に、何かを言わなかっただろうか。 あのコンビニの袋を差し出す前に、何か俺に。
"……よかった、ほんとに……"
安堵しきったような声。 少し泣きそうな表情。
…「優しい」、で。 片付けてしまって、 よかったのだろうか。
…ああ、分からない。 今、そんな顔している彼の気持ちが、 俺にはちっとも分からない。 少しも触れられない。
あの、会議室Aで、 音を発さない唇が紡いだ言葉。 心から搾り出されたような、 「よかった」って動き。
任務がうまくいっているから、とか。 俺が何も失敗していなから、とか。 そんなことじゃ、きっと無かった。
俺の方を見て、うっすらと笑うその表情。 いつも通りを装う、 いつも通りではない彼。
嘘つけ、嘘つけ。 彼が俺の潜伏会社を把握していないなんて思わない。 偽名も彼がつけたもので、 何にせよ俺の先輩で。
見くびらないでほしい。 俺は、貴方が思うほど未熟じゃない。
…たとえ、ひとつの線が欠けていたとしても。 少なくとも、今の貴方よりずっと。
コツコツと、右足が音を立てている。 はっとして動きを止めれば、 眉を下げた笑みを彼が浮かべていた。
なんだか苦しそうな、その顔。
彼が悪戯っぽく笑ってそう言った。 珍しい、名前。確かにそうだ。
"……ないこ、さん?"
だってあの時、ターゲットも。 少し不思議そうな顔をして。
"……なんか、言い馴染みあるんですよね、w"
…あれ?
違う、不思議がってなんかいない。 「ないこ」という名前に彼は、 優しい笑みを浮かべていた。
…この、表情は。 見たことが、ある?
"見つけた"
なんだ、ここ。 広い公園に、ひとつの大きな木。 木陰に入った細すぎる足が、6本見えて。
一瞬浮かんだ情景が、 彼の声によってどこかへ飛ばされていく。 目の前を見れば、俺の肩を掴み、 心配そうにこちらを覗き込む瞳。
あぁ、「ハイド」だ。 もう、揺れていた「誰か」じゃない。
威厳のある声も、 今は少し心配を纏っている。 自分は今、そこまで酷い顔をしているのだろうか。
首筋に、彼の手が触れる。
"殺してやる"
今の、声。誰だ。 なんだ、なんだ。 苦しい。痛い。嫌だ。
思い出したく、ない。
"大丈夫、俺が守るから"
嫌だ。嫌だ。嫌だ。 出てこないで、お願い。
"ここから離れろ"
俺に近づいてこないで。 お願いだから、どこかへ行って。
"よかった"
壊れる。壊れる。 せっかく形成されたこの人格が、 せっかく擦り減らしたこの神経が。
"かくれんぼしよう"
気持ち悪い。痛い。 ごめんなさい、ごめんなさい。
"忘れろ"
忘れるよ。忘れるよ。 だから、思い出させようとしないでよ。
俺じゃない。俺じゃないんだ。
……俺じゃ、ないよ。違うよ。
…誰、だ?
「ハイド」じゃない。 この、俺を真っ直ぐに見つめる瞳は、 只の先輩なんかじゃない。
今話している、自分も。
一体、誰だ。
こんな声、知らない。 こんな震えた、弱く脆い自分など、 俺は知らない。
知らない、知りたくない。
その時。
確かに、目の前の瞳から。 雫が流れ落ちていったのを見た。
…彼が、泣いているのを、初めて見たんだ。
あぁ、切れる。 この思考回路が、 俺に逃げろと訴えている。
目は段々と閉じていき、力が抜け、 俺を覗き込む彼の方へ倒れ込んで。
…忘れて、いい? 俺、もういい?
"りうらっ……、!?"
"お前、今までどこにっ……!!"
"……あれ、俺なんか言ったっけ?w え、初対面でそんなこと言う!?w"
"まあ、意味不明だし、忘れていいよw"
"…早く、忘れな、w"
にげないでよ。りうら。
「ライア -その線で⬛︎して-」 第七話