昔から、女性を可愛いと思ったことが なかった。
樹
いふ
だけどそれが変だと分かってたから、 口にしたことはなかった。
大地
だったら誰がタイプ?
いふ
好きな、好きだったやつにそう、 聞かれた
いふ
一番可愛いと言われてて有名。
大地
でも俺は〜〜
いきいきと話すトコを見て、 胸が苦しくなる。
いふ
苦し紛れにそう話す。
大地
タイプなだけ!
いふ
大地
もう…
いふ
乾いた笑いでそう言えば きっと彼は日常の一つとして流す
いふ
俺も女だったらお前に 愛してもらえた?
そんな夢見がちな言葉は 喉を通って溶けていった。
俺は一度だけ告白したことがあった
屋上、 いつも通り彼と弁当を食べている時
いふ
好きなんや
彼が困惑するのは承知の上で、 その気持ちを伝えた
大地
幻滅したような、俺を突き落とす顔
大地
伺うように、言われて仕舞えば
いふ
嘘吐きの俺は
大地
結局嘘なのかよ!!
いふ
大地
また、嘘を繰り返して
大地
良かったわ
いふ
大地
その一言だけで
大地
ねーもん
絶望する理由になる
いふ
偽りの俺を作っていく
ソイツとは結局、中学までの仲で 友人関係は終わっていった
いふ
その日は早く帰って妹の面倒を 見なければならなかった。
いふ
悠佑
ドンッ、と肩に何かの衝撃が走る
いふ
悠佑
俺よりも10センチくらい 背が小さいからか、俺の肩の位置に 彼の頭が来ていた
悠佑
いふ
お互い慌てて謝罪をする
悠佑
いふ
けれどお互い顔を見た瞬間、 固まってしまっていた
いふ
咄嗟に口から出た言葉はそれだった
悠佑
ゆ、悠佑、です!
悠佑
必然的になってしまう上目遣いに トキメキながら俺は質問の答えを返す
いふ
それが、俺たちの出会いだった
悠佑
みたいやな!
学生時代のアルバムを見て そう話す俺のカノジョは笑っている
いふ
恋するとは思わんかったよ
悠佑
悠佑
なんか頭真っ白に
なったんよな
いふ
あの時、余裕がどっちも なかったということもあるだろうが
いふ
あるかもしれないけどさ
悠佑
やったんよね〜
酒を煽っているせいか、 頬が火照っている。
悠佑
なかったかもしれん
ゲイでも、ノンケでもないなんて ありえないと思った俺は質問した
いふ
悠佑
俺は恋したことなかったんよ
いふ
驚きの新事実に俺は驚いた 俺でも付き合ったことはなくても 恋したことは何度もあった
悠佑
コイツや!みたいな
奴おらんくってさ〜
いふ
悠佑
ってことや!
にっこり笑ってハジメテなんて いう彼が、とても愛おしい。
いふ
俺はボソリと呟いた。
これはまだ俺たちが夫婦になる前の ちょっとした日常の話