まわりの教室から授業をする声が聞こえてくる中、静かな廊下を進んでいく 現在の時刻は9時30分 本来ならとっくに授業は始まっているが、遅刻常習犯の俺はどうせ遅刻するし今さら急ぐ気になんてならなかった
ガラガラガラ…
モブ1
モブ2
S
教室に入った瞬間、いつもとは明らかに違う空気になった
俺を見るなり、みんな笑ったりおめでとう、とか頑張れとか言ったりしてきた
S
モブ1
言われた通り、黒板の方に目を向ける
そこには俺を含め、クラスメイト数人の名前が書かれていた
そしてそれぞれ名前の下には正の字が書かれていた
見た感じ、俺の名前の下に正の字が1番多くつけられていた
S
モブ1
S
こいつの言っていることが一瞬理解できなかった だってここは…
S
そう、この学校は男子校 普通なら男子校でシンデレラの劇をやろうだなんて誰も思わないはずで もう既に意味が分からなかった
モブ1
モブ2
S
こいつらからさらに意味の分からない言葉が飛んできた
S
モブ1
いや、いくら男子校だからと言ってもクラスでやる劇なんだからクラスの誰かが役をやる、というのは当たり前だって分かる でも、…
S
モブ2
そうだそうだ〜、とクラスのあちこちから聞こえてくる
正直俺にはあまり理解できなかった 別に女子とそんなに話したい訳でもないし、今のままで十分楽しいから
S
モブ1
モブ2
S
絶対俺のことバカにしてるだろ、 というか自分がやりたくないだけだろ
モブ1
キーンコーンカーンコーン… 必死の抵抗も虚しく一限の終わりを告げるチャイムが鳴る
S
S
あれから3日ほど経ったが、未だに文化祭の劇のことを思い出してはやりたくないという思いが強まるばかりだった
S
実のところ童話に疎い俺はシンデレラの内容を把握していない
S
ゴソゴソ、と鞄の中を漁る そしてまだシワのついてない、仮台本と大きく書かれたホチキス留めのプリントを見つける
その今日配られたばかりの劇の仮台本を取り出す そしてパラパラめくってみる
S
S
読めば読むほど自分には似合わない役だな、と感じる
S
そこで一つ重要なことが頭をよぎった
S