主
この私の事は主様とでも言ってくれて構わない

ジン
そうか……主さんよ聞きたい事がある

主
……

ジン
まずは統べる者とはなんなんだ?

主
いきなり大元を聞くのだな

ジン
いけないか?

主
別に構わんが、貴様は好きなものを最初に食べるタイプだな

ジン
時と場合によるかな

妹
もう!なんの話ですか!

主
……統べる者とは即ち、世界の主軸になろうとする『者達』だ

妹
者達……?

ジン
なんだと……

主
おや?統べる者は1人だと思っていたのか?まぁ厳密に言えば1人ではあるが、柱になる者が1人おり、その支柱が複数人いるようになっている

ジン
複数人って……それじゃ

主
そう。貴様に宿ったのは大元……つまりは柱になった者だ

ジン
ちょっと待て!それじゃ他に統べる者と言われる奴らがいるのか?

主
そうだ

ジン
そんな……

主
ここまで分かれば簡単であろう……

妹
……支柱になる人を

ジン
集める……

主
そうだ。そこの者を支える者を世界から見つけ出せば良い

妹
……

ジン
いや、簡単にいうけどな!めちゃくちゃ大変なんじゃないのか??

主
大変だ。ものすごくな……なにせ世界から探すのだからな

ジン
世界から……

妹
支柱は一体何人いるのですか??

ジン
そうだ!全部で何人いるんだ!?

主
わからんのか?

ジン
わかるかーい!

主
フッ……『まだ』覚醒しきれておらんのか……

ジン
あんだと??どうゆう事だ?

妹
貴方、随分と詳しいですよね。聖者といえど統べる者をそんなに知っているものなのですか?

主
確かに君達よりは詳しい。だが問題はなかろう。私の方が統べる者に関して少しだけ貴様達より知っている……それだけの事だ

ジン
なんだと!?そんなの理由になって……

主
統べる者よ。貴様の力はなんだと思う?

ジン
あんだよ急に……

主
貴様の力だ。戦う力……そう言った方がわかりやすいか……

ジン
……俺の力……?

主
そこの者の方が感じているかもしれんな

妹
……

ジン
妹さん?

妹
ジンさん……村を襲われた時、ジンさんは私達の村の為に果敢に戦ってくれました。ですけど……

ジン
……?

妹
余りにも……力がありすぎる

ジン
へ?俺が?

妹
はい。スピードはお父さんの……力は……

主
あのライオンの男か……

妹
…!

ジン
……え?ちょっと待ってくれ!確かにあの時は無我夢中で戦ったが……

主
感じていたはずだ……並々ならぬ力とスピードを手に入れたと……

ジン
それは……

妹
あの戦いは……ジンさんの力と何か関係があるのですか?

主
……フッ

妹
答えてください!

主
感じとったのだ

ジン
なに?

妹
感じとった?力を?

主
そう……スピードも……あのパワーも…あの戦いで1番のステータスを感じとったのだ

ジン
……そんなまさか

妹
コピーしたの?

主
共感。貴様の能力の1つ……

ジン
共感……

主
共感したステータスは“永続的”に得る事ができる。更に上となる者が現れれば更新されていく……このサイクルこそが統べる者の一つの力だ

妹
だからあんな動きが?

主
統べる者の能力はステータスの共感……相手が強ければ強いほど大きな力を得る。だがこの力は己を過信し、潜在的な力をすぐに発揮できるものではない……流石に10年20年鍛えた者の経験にはほど勝てん……

ジン
確かにな……

主
だがラッキーな事に鼠族のスピードと猫族の……しかもライオンのパワーを今は得ておる……余程の猛者でも出ない限り負ける事はない……だが……

ジン
……なんだ……?

主
今の貴様は生まれたての赤子の同等かそれ以下だ……このままではいずれどこかの野原で倒れるであろうな……

ジン
んなわけねーだろ!

妹
そうです!そんなことは私が絶対にさせません!

主
……鼠族よ。貴女はどうやら統べる者に対して絶対な信頼をおいているようだな

妹
そうです!この人は……私が守ります!それが父と姉との約束なんです!

主
守るか……

ジン
なんだよ。こっちを見て……

主
このアルタクはどんな戦闘行為も許される事はない。捕まった場合は永久追放の印を押され、2度と街の中に入れなくなる……

ジン
だからなんだよ

主
このアルタクは中立都市だけあって商人や建築やらと賑わっている。所謂将来を見据えた者達が集まり街を発展させていっているのだ。

妹
……

主
この街に入らなくなると今後色々と不便が生じる事になるな……

ジン
焦ったいぞ……何が言いたい?

主
鼠族よ……貴女の想いを見せていただこう

妹
え!!?

主
我が君よ……風神の想いを乗せ……邪たる者を受けつけかねん!暴風城壁(ストリームフィールド)

主が唱えると部屋全体を風が纏い、かまいたちが部屋の隅々で動き回っていた
ジン
な!ちょっと待て!

妹
そんな事したら聖騎士が!

主
フッ……どうする?

ジン
ちっ!何か企んでいらようだが……

妹
ええ!やらなければやられてしまいます

主
回りは暴風が吹き溢れている。少しでも油断すると切り刻んでこの世から消えてしまうから気をつけたまえ……

ジン
えげつない技だぜ

妹
技??いえ……多分これは……

ジン
ん??

妹
魔法です。しかもかなり上位の

主
御名答!私の数ある魔法の1つだ……

ジン
魔、魔、魔、魔法!す、すげー!初めて見た!

妹
そんな悠長な事言っている場合ですか?早くここから脱出しないと!

ジン
そうだな……いや待てよ……そう言えば俺は共感できるんだよな?

妹
……!そうです!主の能力を既に共感しているかも!

ジン
よっし!俺もやってみるぜ!

妹
……

ジン
……

妹
……

ジン
……どうやるんだ?

妹
ですよねぇー!!

主
先程も伝えたはずだ。これが経験というものだ。貴様は私の魔力を共感したが、それは結局“魔力”だけなのだ……術式、呪文、そのような知識がないだけで貴様は能力は皆無に等しいのだ。

ジン
にゃろー言わしておけば……

妹
でもあってはいますね

ジン
うぐ……

妹
でしたら2人で立ち向かいましょう。魔法は詠唱なしでは発揮できないものです。」

ジン
そうか……だったら詠唱をさせる暇を与えないように攻撃していけば……

妹
はい!行きましょう

主
フッ……

妹
はっ!!!!

主
……

妹
なっ!軽々と蹴りを…

ジン
ずりゃ!!

主
……!

ジン
なっ!簡単に避けて

主
甘いですよ……はっ!

ジン
ぐぁ!

妹
ジンさん!

ジン
くそ!なんで読まれるんだ?

主
貴方達の考える事は簡単ですよ……これもまた経験の差です

妹
あのお方、体術も中々です

ジン
あぁ、そうだな……

ジン
え…

ジン
なんだ??

妹
どうしました?

ジン
いや、なんだか…

ジン
自分の鼓動が聞こえ

ジン
ナ……をあたえよ……

『ナ』ヲアタエ…………サスレバ……ジュ…………ノシチュウヲシタガエシ……
妹
ジンさん!!

主
……

ジン
……

妹
え?今なんて……

ジン
其方に……

妹
ジンさん!!

ジン
其方に…与え……

妹
……え?

ジン
『ナ』を………

妹
……ム……ツキ……?

その瞬間……妹から光が溢れ出し、爆風と閃光が巻き起こった。ジンは爆風があると言うのに、光が溢れ出ている先を微動だせずに見守っていた。まるでそれはこれから生まれようとするものを見守る“神”の如く