咲弥
単純群の分類が完成して以後の有限群論の主要課題のひとつとして、 分類定理の証明を簡
易化するという問題があげられる。 あの長く複雑な証明を、 だれにでも理解できるようにし
たいというのは、 非常に自然な考えであると思われる。 ここでは、 Amalgam method と呼
ばれる方法と、 それが単純群の分類のどの部分にどのように応用されるかについて解説す
る。
まず、 ことばの定義からはじめる。
定義. 群 $G$ は偶数位数であるとする。
(1) 部分群 $L$ が $G$ の 2-局所部分群であるとは、 ある単位群でない 2-部分群 $T$ に対
して、 $L=N_{G}(T)$ となることである。
(2) 群 $G$ が標数 2 型であるとは、 $G$ のすべての 2-局所部分群 $L$ に対して、
$C_{L}(O_{2}(L))\subseteq O_{2}(L)$
が成り立っことである。 (ただし、 $o_{2^{(L)}}$ は、 $L$ の最大の正規 2-部分群をあらわす。 )
例. 最も典型的な標数 2 型の群として、 標数 2 の有限体上で定義された Lie 型の単純
群があげられる。例えば、
$G^{*}\cong PSL_{\mathcal{R}+1}(q)$ $(q=2^{m})$
とする。 (以後、 中心は無視して、 $G^{*}=SL_{n+1}(q)$ とみなす。 ) 群
$G^{*}$ の極大 2-局所部分
群
$M^{*}$ をとる。 よく知られているように (Borel-Tits の定理,) 、
$M^{*}$ は
$G^{*}$ の極大放物型部
分群になるので、 特に、 $G^{*}$ のシロー 2-部分群 $S^{*}$ を含む。共役により、
数理解析研究所講究録
第 794 巻 1992 年 30-37
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$S^{*}=\{(\begin{array}{lllll} 1* \cdots \cdots\vdots **\prime 0 l .. \vdots **\vdots \vdots \vdots \vdots 0 0 \vdots 1*0 0 \cdots 0 l\end{array})\}$
とすると、
$M^{*}=\{(\begin{array}{llllll}** *** \vdots .\cdot *** .\cdot *** \vdots .\cdot *\vdots .\cdot \vdots\vdots \vdots ..\vdots \vdots** .\cdot \vdots*** \vdots \vdots *00 \vdots o** \vdots \vdots *00 \vdots o** \vdots \vdots *\vdots \vdots\vdots \vdots \vdots \vdots 00 .0** \vdots\vdots \vdots .\cdot *\end{array})\}$
となる。行列の簡単な計算により、
$\backslash _{\vee}$
(
$o_{2}(M^{*})=\{(000001000001$
.
.
.
$00000100***100***1$
.
$\cdot$
.
$00***1)\}$
であり、 したがって、
$C_{M}^{*}(O_{2}(M^{*}))\subseteqq 0_{2^{(M^{*})}}$
となる。
単純群の分類定理の現在の証明は、 標数 2 型の単純群とそれ以外の単純群とに分けて行わ
れている。 このように分けることは、 有限群論における素数 2 の特殊性を考えれば自然なこ
とと思われるので、 われわれもこれを踏襲する。 また、 標数 2 型でない単純群に対しては、
それらを扱うよい一般論が存在するので、 ここではそれも認めるごとにする。 したがって、
われわれがこれから考察の対象とするのは、 標数 2 型の単純群である。 上の例で述べたよ
うに、 標数 2 の Lie 型の単純群は標数 2 型であるが、 実はその逆がほぼ成立する。すなわ
ち、
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標数 2 型の単純群は、 少数の例外を除けば標数 2 の Lie 型である。
われわれは、 この命題を証明することを目標とする。
与えられた単純群が Lie 型であることを示す最も自然な方法は、 BN 対を構成することで
ある。 われわれの場合でいえば、 標数 2 型の単純群の中に標数 2 の分裂 BN 対を構成でき
ればよいのであるが、 例外の場合をも含めて扱うために、 BN 対よりもやや弱い概念を定義
する。
定義. 群 $G$ は偶数位数であるとする。 単位群と異なる $G$ の 2-部分群 $S$ と、 $S$ を含む
$G$ の部分群 $x_{1},$
$.$
$x_{n}$ に対して、 組 (X1
$x_{n^{;}}S$ ) が $G$ の標数 $2$ 、 階数 $\eta$
. の放物
系であるとは、 次の条件を満たすことである。
(a) $S\in Sy1_{2}(X_{\dot{t}})$ $(1\leqq i\leqq n)$
(b) $x_{i}$ $( 1\leqq- i \leqq n)$ は $s-$ 既約 ( すなわち 、 $x_{i}$ の $S$ を含む極大部分群はただひと
$\supset)$
$tc)O_{S}(\langle X_{1},$ $.$ $x_{n^{\rangle)}}=1$ (すなわち、 $S$ のどの単位群と異なる部分群もすべて
の $x_{1},$
$.$
$X_{\mathcal{R}}$ で正規部分群になることはない。 )
(d)
$c_{X,2\prime i^{(O(X_{i}))}}\subseteqq O_{2}(X_{i})$
$(1\leqq Ji\leqq n)$
例. 標数 $2$ 、 階数 $n$ の Lie 型の単純群 $G^{*}$ は、 標数 $2$ 、 階数 $n$ の放物系をもっ。 実
際、 $S^{*}\in Sy1_{2}(G^{*}I$ 、 $B^{*}=N_{G^{*}}(S^{*})$ とすれば、 $B^{*}$ は
$G^{*}$ の Borel 部分群であり、 $G^{*}$ の
$B’*$ を含む極小放物型部分群 $P_{1}^{*},$ $.$ $P_{n}^{*}$ を取 っ て、 $X_{-i}^{*}=O^{2’}(P_{i}^{*})$ $(1\leqq i\leqq n)$ とおけ
ば、 組 ( $X_{1}^{*},$ $.$ $x_{n^{;S^{*})}}^{*}$ は $G$ の標数 $2$ 、 階数 $n$ の放物系である。
前の例でいうと、
$G^{*}\cong PSL_{n+1}(q)$ $(q=2^{m_{)}}$
$S^{*}=\{(\begin{array}{lllll} l* \vdots **0 1\prime \vdots .**\vdots \vdots \vdots \vdots 0 0 \vdots \cdots 1*0 0 \vdots 0 l\end{array})\}\in Sy1_{2}(G^{*})$
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$B^{*}=N_{G^{*}}(S^{*})=\{(\begin{array}{llll}** .**0* .**\vdots . \vdots\vdots 00 \vdots**00 \vdots o*\end{array})\}$
$P_{i}^{*}=\{(\begin{array}{llll} ***\backslash * \vdots .*.\cdot \vdots**** \vdots. * \vdots o*** o* \vdots* \vdots o*** \vdots \vdots*.0 \vdots 0 \vdots \vdots*\vdots \vdots\vdots \vdots ..0 \vdots 00 0\cdot .*\end{array})((ii_{+1}\}$
$x_{i}^{*}=\{(\begin{array}{lllllll} **** \vdots \vdots * \vdots\vdots \vdots \vdots \vdots \vdots\vdots \vdots \vdots 1*** \cdots *. \vdots o***o*** \vdots\cdots \vdots\cdots \cdots \cdots **_{\prime}.0 \vdots 0 \vdots 0 1 \cdots *\vdots \vdots\vdots \vdots \vdots \vdots \vdots 0 \vdots 0 \vdots 0 0 \cdots 1\end{array})t1^{I},ii+1\}$
である。
われわれは、 標数 2 型の単純群 $G$ を次のプログラムにしたがって分類することを目標と
する。
(1) 群 $G$ の放物系 $(X_{1}, , X_{n^{;}}S)$ で、 $S\in Sy1_{2}(G)$ となるもの (さらに、 付帯条
件 $(*)$ があってもよい) を見つける。
(2) 条件 $(*)$ を満たす放物系の同型類を分類する。
(3) もし $(X_{1}’ X_{n};S)\cong(X_{1}^{*}, . X_{n}^{*};S^{*})$ ならば、 $G\cong G^{*}$ を示す。
このプログラムが、 標数 2 型のすべての単純群に対してうまく実行でき巻かどうかについ
ては、 今のところよくわからない。 しかし、 例外の場合をも含めて標数 2 型の単純群を理解
するのには、 最も自然でかっ魅力的な方法であると思われる。 ここで、 このプログラムが
非常にうまく実行できた例を述べる。
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例 (五味、 林、 田中) 標数 2 型の単純群 $G$ で、 そのすべての 2-局所部分群が可解群
であるものの分類
(1) 群 $G$ の標数 $2$ 、 階数 2 の放物系 $(X_{1}, X_{2^{;}}S)$ で、 条件 (a), (b), (c), (d) とさらに
付帯条件
(e) $S=[O_{2}(X_{1}) ’ o^{2}(X_{1})](O_{2}(X_{1})\cap O_{2}(X_{2}))[O_{2}(X_{2}), O^{2}(X_{2})]$
を満たすものが存在する。 (多少の例外が存在するが、 それらは一般論により処理でき
る。 )
(2) 条件 (a) $-(e)$ を満たす放物系の同型類が分類できる。
(3) (2) の結果を使って、 $G$ が分類できる。
今後の目標は、 同様の方法をもっと広いクラスの単純群の分類に応用することである。
ここで、 放物系の分類に威力を発揮する Amalgam method にっいて解説する。 その場
合、 放物系がどの単純群 (あるいは、 もっと一般に有限群) に含まれているかはそれほど重
要でないので、 放物系の定義を次のように変更しておく。
定義. 単位群と異なる 2- 群 $S$ と、 $S$ と同型な部分群を含む群 $X_{1},$
$.$ $X_{n}$ (ただ
し、 この同型により $S\subseteqq X_{li}$ $( 1\leqq- i \leqq n)$ とみなす ) に対して 、 組 $(X_{1}, . x_{n^{;}}S)$ が標
数 $2$ 、 階数 $n$ の放物系であるとは、 次の条件を満たすことである。
(a) $S\in Sy1_{2}(X_{i})$ $(1\leqq\prime i\leqq n)$
(b) $x_{i}$
$(1\leqq\prime i\leqq n)$ は $s-$ 既約 ( すなわち 、 $x_{i}$ の $S$ を含む極大部分群はただひと
つ)
(c) $O_{S}(X_{1}, . x_{n})=1$ (すなわち、 $S$ のどの単位群と異なる部分群もすべての
$x_{1},$
$.$
$x_{n}$ で正規部分群になることはない。 )
(d) $C_{X_{i}}(O_{2}(X_{i}))\underline{\subseteq}O_{2}(X_{i})$
$(1\leqq i\leqq n)$
放物系の性質と、 それから自然に得られる作用群をもっ幾何学的対象 (例えばグラフな
ど) の幾何学的性質が互いに反映しあう。 さらに、 放物系の性質と、 その作用群をもっ幾何
学的対象に付随して得られる部分群束の群論的性質が互いに反映しあう。 われわれは、 放物
系の分類に際して、 そのような幾何学的対象や部分群束に着目する。
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以後、 標数 $2$ 、 階数 2 の放物系の場合にやや詳しく説明する。 標数 $2$ 、 階数 2 の放物系
$(X, Y;S)$ に対して、 $G=xgY$ ( $X$ と $Y$ の 3 上の融合積) とおき、 $X$ 、
$Y$ 、
$S$ をそれぞ
れ $G$ の部分群とみなす。 ここで、 グラフ $\Gamma$ を次のように定義する。 グラフ $\Gamma$ の頂点集合
$V(\Gamma)$ は、 $G$ における $X$ と $Y$ の右剰余類の全体であり、 ふたっの頂点 $\alpha,$ $\beta\in V(\Gamma)$ は、
$\alpha\neq\beta$ かつ $\alpha\cap\beta\neq\emptyset$ のとき、 かっそのときに限り結ばれるものとする。 このとき、 群
$G$ はグラフ $\Gamma$ に右から作用するが、 その作用は $\Gamma$ の辺集合上可移である。 かってな
$\xi\in V(\Gamma)$ に対して、 $\xi$ の $G$ における固定部分群を $G_{\xi}$ とかく。融合積の性質により、 か
ってな隣接する頂点 $\xi,\eta\in V(\Gamma)$ に対して、 同型
(X, $1^{r};S$ ) $\cong(G_{\xi}, G_{\eta};c_{\xi\eta})$
が成り立っことに注意する。さらに、
$Q\xi=O_{2}(G_{\xi})$
$V_{\xi}\backslash =\langle\Omega_{1}(Z(G_{\xi\eta}))|d(\xi, \eta)=1\rangle$
とおき、パラメータ $b$ を
$b= \min\{d(\alpha, \delta)|V\alpha\not\in^{\neq}Q\}\delta$
と定義する。
以後、 簡単のために、 $b$ は偶数とする。 頂点 $\alpha,$ $\delta\in V(\Gamma)$ を、 $d(\alpha, \delta)=b$ かつ
$-\alpha$
$V_{\alpha}\not\leqq Q\delta$ を満たすようにとり、 次のような部分群束の絵をかいてみる。
寿
X $arrow-$ $\beta$
. $-$ . $-$ $-$ $arrow$ $-$ . $\gamma$ $f$
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条件 (b) より $G_{\alpha}$ は 2-既約な可解群であるから、 $b$ の最小性により、
$Q_{\alpha}\in Sy1_{2}(c_{c_{\alpha}}(V_{\alpha}))$
が成り立っ。同様に、
$Q\delta\in Sy1_{2}(C_{G_{\delta}}(V_{\delta}))$
も成り立っ。 したがって、 条件
$V_{\alpha}\not\leqq Q\delta$
$[V_{\alpha}, V_{\delta}]\neq 1$
$V\delta\not\leqq Q_{\alpha}$
がすべて同値になる。対称性により、
$|V_{\alpha}$ : $V\alpha\cap Q|\delta\leqq|V_{\delta}$ : $V_{\delta}\cap Q_{\alpha}|$
と仮定すると、 $\overline{c}_{\alpha}(=G_{\alpha}/C_{G_{\alpha}}(V_{\alpha}))$ は、 次の定理の仮定を満たす。
定理. 群 $G$ は 2- 既約で、 $O_{2}(G)=1$ とする。忠実な $GF(2)G-$ 加群 $V$ と $G$ の単位群と
異なる基本可換 2-部分群 $A$ で、 次の条件を満たすものが存在すると仮定する。
$|V$ ; $c_{V^{(A)|}}\leqq|A|$
このとき、 $G$ の
$0^{2_{(G)}}$ を含む正規部分群 $N$ で、 次の性質をもっものが存在する。
$N\cong SL_{2}(2^{m})\cross\cdot$ X $SL_{2}(2^{m})$ $(m\geqq 1)$ または、
$\Sigma 2m+1X$ X $z_{2m+1}$
$(m=2^{\ell}\geqq 1)$ であり、
また、 $[V, N]$ と $A$ はそれぞれ自然なものである。
この定理を使って、 次の定理が得られる。
定理. 標数 $2$ 、 階数 2 の放物系 $(X, Y;S)$ においては、 っねに $X \oint SdY$ が成り立
つ。
次に、 部分群 $V_{\alpha}$ と $V\delta$ は、 互いに他を正規化する可換部分群であるから、
$[V_{\alpha}, V_{\delta}, V_{\delta}]\subseteqq[V\delta’ V_{\delta}]=1$
である。 っまり、 部分群 $V\delta$ は部分群 $V\alpha$ 上に、 ‘
quadratic” に作用する。 したがって、
群 $c_{\alpha}$ は、 部分群 $V\alpha$ に含まれる主組成因子を $GF(2)c_{\alpha^{-}}$ 加群とみることにより、 次の定理
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の仮定を満たす。
定理. 群 $G$ は 2-既約で、 $0_{2^{(G)}}=1$ とする。 また、 $GF(2)G-$ 加群 $V$ は、 $V_{1V}$ (ただ
し、 $N=O^{2}(G)$ ) が完全可約であり 、
$G$ の 2- 部分群 $T$ で、 $[V, T, T]=0$ かつ
$V=$ $\sum$ $c_{V^{(T)^{X}}}$ となるものが存在すると仮定する。 このとき、 次が成り立っ。
$x\in N$
$V=$ $\Sigma$ $c_{V^{(U)}}$
$|T$ :
$U|\leqq 2^{r}$
ただし、 $r=\prime r(G)$ は、 $G$ の組成因子の同型類によって決まる自然数で、 次のように定義す
る。
$\tau(G)=\max${ $r(L)|L$ は $G$ の組成因子}
$’ \cdot(L)=\max\{m(A)|_{A}^{G}V\iotah\not\in^{*}$ $r^{)\cong L\text{実てある_{}j}}|hF_{\backslash }(G_{jGF\langle 2)G-l\#\text{群_{る}}^{\text{有限_{}G}ffi_{a)}}}$
}
$h[V,A, A]=0^{\backslash }$
と $r$ 基本可換 $2-f1$部$g$群
$\}$
もし、 $G$ が可解群ならば、 $\tau(G)=1$ であり、 この事実が上で例にあげたすべての 2-局
所部分群が可解群である標数 2 型の単純群の分類に重要な役割をはたしている。その証明を
詳しく検討してみると、 標数 $2$ 、 階数 2 の放物系 $(X, Y;S)$ の分類に関しては、 $\tau tX$ ) と
$r(Y)$ がともに小さければ、 同様の方法が使えることがわかる。 一方、 $r(G)$ が大きい単純
群 $G$ は、 多少の例外を除いて標数 2 の Lie 型であるので、 結局、 標数 $2$ 、 階数 2 の放物系
$(X, Y;S)$ としては、 知られている単純群の中に実在するもの以外にはほとんど存在しない
ことがわかる。
