テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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人に優しくしたら、自分が壊れた。

第12話 - 第１２話

2021年03月25日

#ミステリー

#いじめ

#学園

#ホラー

#青春恋愛

#ドラマ

クリオネ

姫川麗蘭

おはよ、真世ちゃん！

山中真世

あ…おはよう

姫川麗蘭

今日から学園祭の準備が始まるね！

姫川麗蘭

私たちは、お化け屋敷の外観制作係に決まったよ

姫川麗蘭

…一緒に頑張ろうね！

山中真世

…うん

姫川麗蘭

真世ちゃん…

姫川麗蘭

…由佳里ちゃんのこと、まだ気にしてるの？

山中真世

う、ううん…

山中真世

そういうわけじゃないよ

姫川麗蘭

…由佳里ちゃんのことは、私も残念だよ

姫川麗蘭

真世ちゃんのこと、ずっと影で裏切ってたんだもん…

山中真世

…もうその話はやめて

姫川麗蘭

あ…っごめんね！

姫川麗蘭

じゃ、まずは飾りに必要な物のリスト作っていこう

山中真世

……うん

山中真世

そうだね！

上原勇也

(平澤…)

上原勇也

(昨日から、どうして連絡が取れないんだ…？！)

上原勇也

(平澤の身に何か起きたとしか考えられない…！！)

上原勇也

(こうして家に閉じ込められてる間に平澤がもっと酷い目に遭わされてるかもしれない)

上原勇也

(なんとかここを出て、平澤を探しに行こう…！！)

勇也の父

おい、勇也

勇也の父

お前、ここを出て行こうったってそうはいかないぞ

上原勇也

父さん…っ

勇也の父

お前は不正を犯して謹慎中の身なんだぞ？

勇也の父

本来なら、縄で縛り付けて叩きのめされててもおかしくはないんだ

勇也の父

それをお前が素直に謝罪したのに免じて、スマホまで返してやったんだ

勇也の父

それに俺は、溜まっていた有給休暇をこうしてお前のために使ってやっているんだぞ？

勇也の父

ありがたく思え！

上原勇也

(いっそのこと、平澤のこと話してみようか…)

上原勇也

(もしかしたら、わかってくれるかもしれない)

上原勇也

…なぁ、父さん

勇也の父

なんだ

上原勇也

実は…

上原勇也

学校で、ひどいイジメが起きてるんだ

勇也の父

イジメ…？

上原勇也

市議会議員の娘の宮坂が主犯格になって、クラスメイトから集団でいじめられてる女子がいる

勇也の父

し、市議会議員って…

上原勇也

それに、父親は無敗のやり手弁護士だ

上原勇也

みんな、訴えたって勝ち目なんかないと思ってて…

上原勇也

先生も宮坂には逆らえなくて、見て見ぬふりしてる…

勇也の父

………

上原勇也

俺、どうにかしてそのいじめられてる女子を助けたいんだ！

上原勇也

こうしてる今だって、どんな目に遭わされてるかわからない…！

上原勇也

こんなふうに思ったのは初めてなんだ！

上原勇也

だから…頼むよ、父さん

上原勇也

俺を外に出してくれ！！

勇也の父

勇也…

勇也の父

お前がそんなことをして、何が変わるっていうんだ？

上原勇也

と、父さん…？

勇也の父

もし仮にお前がその子を助けたとして…

勇也の父

次にイジメのターゲットになるのは…勇也、お前なんだぞ？

上原勇也

………

勇也の父

このストレス社会において…

勇也の父

人は誰でも、いろんなストレスを抱えながら生きているんだ

勇也の父

身近にちょうどいい吐け口になるようなものがあったら、人は攻撃せずにはいられない生き物なんだよ

上原勇也

吐け口…？

勇也の父

そうだ

勇也の父

容姿が人よりも劣っていたり、勉強もスポーツもできなくてなんの取り柄もなさそうなグズが一人いたら…

勇也の父

それは、集団の中の「はみ出し者」となる

勇也の父

人はな、そんな「はみ出し者」を集団で疎外して攻撃して…

勇也の父

優越感に浸りたがるものなんだよ…勇也

上原勇也

………

上原勇也

そんな気持ち、俺には理解できない

上原勇也

…理解したくもない！

勇也の父

そういえば、俺の職場にも一人…

勇也の父

仕事もできない、女にもモテない、気の弱い冴えない男がいるんだ…

上原勇也

ま、まさか…

勇也の父

…そうだよ

勇也の父

俺も周りと同じように、そいつがちょっとしたストレス発散の吐け口なんだ

上原勇也

父さん…！！

勇也の父

なぁ、勇也…

勇也の父

弱い者は、どうあがいたって強い者には勝てないんだよ

勇也の父

世の中はな、うまくそういう仕組みになっているんだ

勇也の父

だからな、イジメなんてものがこの世から消えることはない

勇也の父

お前がどれだけ正義漢ぶって抗おうが、無意味なのさ

勇也の父

…わかるだろう？

勇也の父

だから、そんなバカなことはやめておくんだな

上原勇也

………

上原勇也

自分の親がここまで腐ってたとは…

上原勇也

思いもしなかったよ（笑）

勇也の父

なんとでも言え

勇也の父

お前も人生長く生きてると、そのうち俺の言ったことがわかる時が来る

上原勇也

………

溢れる怒りを、拳の中で押し殺した

勇也の母

…ただいま

勇也の母

あなた、今日も有給使ったの…

勇也の父

それの何が悪い？

勇也の父

お前一人に勇也を任せられないから、こうして俺が監視してやってるんだ

勇也の母

監視って…

勇也の母

何もそこまですることないんじゃない？

勇也の母

勇也が可哀想よ

上原勇也

………

勇也の父

…ふん

勇也の父

そんなこと言って、本当は自分が不倫について追求されると困るから都合が悪いんだろう？

勇也の母

なっ…！

勇也の母

違うわ！私は…！

上原勇也

もういいよ、二人とも

上原勇也

(これ以上、俺に幻滅させないでくれ)

その時、勇也のスマホに着信が入った

上原勇也

(樹里から電話…？！)

上原勇也

(一体なんの用なんだ…)

上原勇也

(平澤のことを庇うような発言は控えないといけないな)

上原勇也

(とりあえず、出てみよう)

言い争いしている両親をチラッと見ると、勇也はリビングを出て電話に出た

上原勇也

…もしもし

宮坂樹里

もっしー、勇也ぁ？

宮坂樹里

謹慎生活、エンジョイしてるーっ？！（笑）

上原勇也

え？

上原勇也

あぁ、お陰様でな

上原勇也

なんだ…お前、えらく機嫌がいいみたいだけど

宮坂樹里

当たり前でしょー

宮坂樹里

やりたいこと、やり尽くして…

宮坂樹里

スッキリしたんだもん…

スマホの向こう側で、樹里はニヤリとほくそ笑んだ

上原勇也

スッキリしたって…

上原勇也

どういう意味なんだ？！樹里！！

宮坂樹里

まぁまぁ、そんなに慌てないでよ

宮坂樹里

あんたの謹慎、解除してやってもいいって言おうとしてるのに（笑）

上原勇也

そ、それって…！

宮坂樹里

…もう、あんたに邪魔されて困ることなんてなくなった…ってこと

上原勇也

……！！

上原勇也

お前…

上原勇也

平澤に何をしたんだ…！！

上原勇也

答えろ！！

宮坂樹里

…心配しなくてもすぐにわかるよ

宮坂樹里

もう平澤は、まともに学校にも来れなくなったんだから（笑）

上原勇也

学校に来てないのか…？

上原勇也

じゃあ平澤は家にいるってことか…

宮坂樹里

家があれば…の話だけどね（笑）

上原勇也

……え？

宮坂樹里

昨日、平澤がいない間に家にお邪魔させてもらった時にね…

宮坂樹里

可愛くて愛想のいい妹ちゃんのこと見てたらついつい、火遊びしたくなっちゃって…

上原勇也

火遊び…？

宮坂樹里

古い木造の家だから、思いのほか燃えやすくて私まで危なかったんだけどね（笑）

上原勇也

…何…言ってるんだ？

上原勇也

お、お前…まさか…っ！

宮坂樹里

平澤の家に行ってみたらわかるんじゃない？（笑）

宮坂樹里

…って言っても

宮坂樹里

もうとっくに手遅れだけどねっ（笑）

上原勇也

樹里…！！

上原勇也

お前、自分が何をしたかわかってるのか？！

宮坂樹里

…もちろん、わかってるよ

宮坂樹里

それぐらい、私はあんたのことが好きで…

宮坂樹里

誰にも渡したくないってこと…

宮坂樹里

これでわかったでしょ？

宮坂樹里

…あんたは何をしても、私から逃げられないのよ！！

上原勇也

……！！

上原勇也

菱木先生が助けてくれたって平澤から聞いた

上原勇也

お前だって、ただじゃすまされないはずだ！！

宮坂樹里

ああ…

宮坂樹里

その菱木先生なら

宮坂樹里

あんたの母親とよろしくやってるから、あてにしない方がいいよ

上原勇也

な、なんだって…？！

上原勇也

菱木先生が…母さんと…？

宮坂樹里

このネタは、あんたが本気で私を裏切った時のために置いといたんだけど

宮坂樹里

もう黙っておく必要もないから教えてあげる

宮坂樹里

私ね、菱木先生をどうにか操る方法を探るために興信所を使って先生のこと調べてもらったの

宮坂樹里

そしたら、あんたの母親と不倫してるってわかって…笑っちゃった！（笑）

上原勇也

そんな…！！

上原勇也

嘘だろ…

リビングのドアのすりガラスの向こうで、父と言い争う母の姿を見つめた

上原勇也

………

宮坂樹里

そのことで揺すりをかけたら…

宮坂樹里

先生、私の思い通りに動いてくれたよ

宮坂樹里

…ね？

宮坂樹里

大人って、やっぱり自分のことしか考えてないでしょ？

宮坂樹里

菱木先生も、あんたの母親も、仕事ばかりで家庭を顧みない父親も…

上原勇也

………

上原勇也

そうだな

上原勇也

お前の言う通りだよ、樹里

宮坂樹里

ゆ、勇也っ…！

宮坂樹里

じゃあ、私のこと…理解してくれたんだね？！

上原勇也

ああ

上原勇也

お前の親だって、仕事と権力と体裁を守ることしか考えてないから…

上原勇也

そんな環境で育ったお前に、今まで同情してたんだ

宮坂樹里

ほ、本当…？！

上原勇也

でも、今の俺は

上原勇也

今すぐにでも、お前の顔をボコボコに殴り倒してやりたい気分だよ

宮坂樹里

……！！

宮坂樹里

…あっそう

宮坂樹里

黙っといてやったけど、あんたがそんな態度なら…！

宮坂樹里

菱木先生とあんたの母親のこと、全部暴露してやるから！！

宮坂樹里

証拠の写真だって、私の手元にあるんだからね…！

上原勇也

………

宮坂樹里

そしたら、あんたの父親は怒り狂って…家庭崩壊は確実だね（笑）

宮坂樹里

妻が息子の担任教師と不倫だなんて…

宮坂樹里

これほどの汚名を注がれて、一流銀行員がまともに勤務することも許されないだろうからね（笑）

宮坂樹里

あんただって、高校を卒業することも叶わないよ？

宮坂樹里

…一家揃って、お先真っ暗だね！

宮坂樹里

あははははは！！

上原勇也

勝手にすればいい

宮坂樹里

…え？

上原勇也

親が社会的に破滅しようが、離婚しようが、俺が退学になろうが…

上原勇也

もう、そんなことどうだっていい

上原勇也

こんな腐りきった連中と無関係になれるのなら、本望だよ

宮坂樹里

ほ…本気で言ってるの？！

上原勇也

平澤がいなきゃ、今の俺はここにはいない

上原勇也

お前なんかには一生をかけてもわからないことだよ、樹里

宮坂樹里

あんた…

宮坂樹里

後悔しても知らないからね…！！

ツーッ、ツーッ、ツーッ

勇也の父

…おい！

勇也の父

お前どこに行く気だ！！

上原勇也

…大切な子を助けに行く

勇也の父

お前…まだそんなことを言ってるのか？！

勇也の母

あなた…もう放っておきなさいよ！

勇也の母

この子には、この子のやりたいことだってあるんだから…

上原勇也

………

上原勇也

そうだよ、母さん

上原勇也

母さんが俺の担任の菱木先生と付き合ってるように、俺にもやりたいことがあるんだ

勇也の父

なっ…！！

勇也の母

ゆ、勇也？！

勇也の父

なんだと…！

上原勇也

証拠を握られてるみたいだし、世間にバレるのも時間の問題だよ

勇也の母

そ、そんな…

勇也の母

どうして…どうしてそれを？！

勇也の父

由紀子…テメェ…！

勇也の母

あ、あなた…っ！！

勇也の父

この…っ

勇也の父

恥さらしの売女がぁぁ！！！

勇也の母

なっ…なによっ？！

勇也の母

元はと言えば、私に見向きもしないあなたが原因でしょ？！

勇也の父

許せんっ…！

勇也の父

この俺の顔に泥を塗りやがって…！！

勇也の父

よりによって、息子の担任教師と不倫とは何事だ！！

勇也の母

し、仕方なかったのよ…！

勇也の母

勇也の個人懇談の時にお会いしたのをキッカケに、意気投合してしまって…

勇也の母

気が付けば、私は一人の女としての人生を再び歩み出していたの！！

勇也の父

由紀子…っ！お前…！！

上原勇也

…もうやめなよ、みっともない

上原勇也

言い争ってる暇があるなら、これから先のこと考えた方がいいんじゃない？

上原勇也

この家のローンもまだまだ残ってるし、父さんのベンツだっていつまで乗れるかわからないんだよ？

上原勇也

なんなら…

上原勇也

二人で仲良く、夜逃げの作戦でも練っとけば？（笑）

勇也の父

…待て！勇也っ！！

信じられないほどに清々しく、吹っ切れた勇也は力強く玄関のドアを開けたのだった

人に優しくしたら、自分が壊れた。

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いけー！勇也！

クリオネ

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