暇72
君が飛び降りてしばらく、
俺は震える手で、救急車を呼んだ。
暇72
乾燥した目は、きりきりと痛んだ。
グループにはLINEを回した。
“すちが飛び降りた”と。
がらがら、と扉が開く。
は、と顔を上げればそこには 先生がいた。
暇72
医師
医師
暇72
医師
医師
医師
医師
そっから先の話はほとんど覚えていない。
すちは生きていた。 その安堵とと共に襲うリアル。
もし目を覚ましても彼は、
俺らのことを覚えていない。
俺は医師に連れられ、話を終える。
病室に向かえば、ただ一人。
目を瞑って動かない、君がいた。
いるま
こさめ
みこと
俺の車の中は今、賑やかだった。
なつから、すちが 飛び降りたことを聞いた時
一瞬、俺の息が止まった。
らん
らん
エンジンが、悲鳴を上げる。
一番冷静ないるまと、 泣き崩れたこさめ、 下を向いて言葉を発さないみこと、 一番焦っている俺。
ハンドルは、手汗で湿っていた。
現在5時47分。
空はもう、茜色になっていた。
らん
現在5時45分。
俺は黙って、ベッドで目を瞑る すちの手を握っていた。
なんでこんなことになったのか、 すちは何を考えて行動を起こしたのか
それはもう、知ることのできない、 深い深い記憶の底に沈んでいった。
生きてはいるが、記憶はなく、 ただ静かに眠る君の姿は、
窓から覗く夕陽のせいで いつになく儚く見えた。
暇72
ぽつり、言葉が溢れる。
俺が一番すちのことを知っていたのに
飛び降りるまで、それに気が付かなかった。
なんで、なんでなんで。
頭の中を、その言葉が反芻する。
暇72
バン!
勢いよく扉が開く。 こんな馬鹿みたいな真似をするのは あいつしかいない。
あいつらが来たのを横目で確認すると 2度目の安心で また涙が溢れた。
らん
いるま
こさめ
みこと
こんなうるさくてもすちはまだ 目を開かない。
どうせまた、いつもみたいに…
そんな言い訳が、過ぎる。
暇72
すちの周りを皆んなが囲う。
いるま
いるま
いるまはそう言って、 俺の背中を優しく摩った。
嗚咽混じりに、先生が言っていた すちの現状を全て話す。
みんなはそれを黙って
何も言わず
聞いていた。
ただ黙って、 ただ涙を流して。
『目を、覚まして。』
『忘れないで』
『もう一度、目を覚まして俺らとー』
そう言葉をかけながらすちの手に みんな手をのせた。
死ぬわけでもないのに。
生きてはいるのに。
動かない彼が、どうも非現実的で
どうも心が、苦しくって。
ベッドに、俺ら5人の涙で模様ができるまで
時間の速さを、 俺らは気が付かなかった。
コメント
46件
4周目、読み始めたw やっぱり神作なんだよぉおお ほんとに大好きです。 もう、弟子入りしたい✨️
2000にします。もう、やばいです。好きです。すちくぅぅん泣
1000にしたよ♥♥