久我の兄貴が好きだ。
腐ってた京極組を建て直そうと必死に奔走する久我の兄貴の姿に魅入られ、気づいたら恋に落ちていた。相良の兄貴、海瀬の兄貴を改心させた久我の兄貴は、僕にとっての誉れだった。
そんな、久我の兄貴が最近、恋に落ちた。
相手は天羽組の中堅の小峠華太。
天京戦争の時にやり合い、久我の兄貴が敗北した相手だ。
久我の兄貴は酔うと饒舌になる。酔うと必ず小峠さんの話をする。小峠さんの話をする時は決まって、久我の兄貴の瞳をゆらゆらと揺らす。まるで思いを馳せるかのように。
久我虎鉄
この手の話には、協力的な高砂の兄貴が珍しく、言い淀みながら、口を開く。
高砂明夫
久我虎鉄
高砂明夫
久我の兄貴は必死に否定するが、『恋』という単語に、頬を赤く染めている時点で、意識しているは明らか。
そんな兄貴の姿に、失恋してしまえばいいのにと思わずにはいられなかった。
自分の恋心の為に、兄貴の恋を応援出来ない僕は、なんて矮小な男なのか。
その日、天羽組事務所に用事があって、僕は久我の兄貴と空龍街に赴いていた。ただ、事務所には、小峠さんの姿はなかった。会えなかった事を残念がる久我の兄貴を、少しでも元気づけようとしていた帰り道の事だった。
小峠さんが野田さんと二人で歩いる姿を見掛ける。シマの見回り中なのだろう。いち早く、久我の兄貴は小峠さんの姿に気付き、声をかけようとした矢先、野田さんと小峠さんの、二人の陰が重なったのだ。
二人の様子から、何故あの日、高砂の兄貴が深入りするなと釘を刺したのか、分かった気がした。 野田さんと小峠さんの間に漂う雰囲気は、一介の兄貴と舎弟ではない。二人はそういう仲なのだと、傍目からも分かる。
自分の横で、呆然と固まる久我の兄貴の姿を、これ以上、見ていられなくて
野島翔
兄貴の返答を待たずに、僕は強引に兄貴の手を引いて歩く。
恋なんかしてない、と口では、否定していた久我の兄貴だったが、小峠さんに惚れていたのは事実。
久我虎鉄
何時もハキハキと話す、久我の兄貴から溢れる言葉は悲嘆に暮れていて、余計、居たたまれない気持ちにさせられる。
野島翔
失恋の痛みに嘆く、弱々しい兄貴の姿に、本当は伝えるつもりはなかった気持ちが、僕の口をついてでた。
野島翔
僕の言葉に、久我の兄貴は ふはっと吹き出して笑う。
久我虎鉄
野島翔
ずっと兄貴を見てたから、失恋した辛さはよく、分かる。だから、口が裂けても、好きになって下さい、僕だけを見て下さいなんて、酷い言葉を掛けられる筈がない。だからこその妥協の提案なのだ。
久我虎鉄
久我の兄貴は苦笑した。きっと、この先、この時の兄貴の顔を忘れる事はないだろう。
恋とは、時に妥協することも必要。
おわり
あとがき 弱ってる所につけ込むも、失恋の辛さを知っているだけに、つけこみきれない、野島の話。 何処かで、妥協する事は大事だけど、妥協したからといって、幸せになれるとは限らない。 最近、野島見てないな。野島のあの、しゃべり方好きなんだけどな。のじくがも好き。ただ何故か、のじくがを打ってたら、くがかぶを思い付いた。
コメント
5件
ごめんね虎徹ちゃん…かぶちゃんは野田ニキのものなの…(私はのだかぶイチオシ)
ありがとう。野島は見た目は可愛いけど、男らしいとこがいいよね
ひなひな、、、グズカッコ良すぎ。゚(゚´Д`゚)゚。