ガキの頃、俺には恩人がいた。
放任主義、というか子供に関心の薄い親の下で育ち
家での留守番が続いて、孤独に耐えきれなくなった時は
よく近所のショッピングモールに足を運び、時間を潰していた。
そこでよく会っていたのが……
ハンバーガーおじさん
ハンバーガーおじさん
フードコートで子供たちにハンバーガーなどのセット商品
「ハピネスセット」を無償で配る謎のおじさん。
俺は「ハンバーガーおじさん」と勝手に呼んでいた。
ハンバーガーおじさん
ハンバーガーおじさん
まるでサンタクロースの様な大きな袋を横に置いて、両手で数えきれないほどのハピネスセットを机に広げ
豪快にガハハと笑うおじさんが俺は大好きだった。
周囲の大人たち
周囲の大人たち
周囲の大人たち
俺含めた数人の子供以外は、おじさんの事を快く思っていなかった。
「怪しい人には近づいてはいけない」
親が持つ端末で見る、しつけ用動画で言っていた様に
恐らく周囲の『善良な大人』の方が社会的には正しいのだろう。
ハンバーガーおじさん
ハンバーガーおじさん
だとしても、実際に俺の飢えと孤独を癒してくれたのは……
嫌われ者のハンバーガーおじさんだった。
俺より少し前に会社に入ってきたと言う爺さんは、返事をする事なく手に持っているスマホに釘付けだった。
爺さんがこちらにグイグイ見せつけてくるスマホを仕方なく覗くと……
「ハピネスセット」に付いてくる新しいおもちゃについての記事だった。
…‥間違いない
目の前の、転売目的のおもちゃの品定めをしていたこの爺さんは……
「ハンバーガーおじさん」だ
…‥きっとあの爺さんは
何も変わらず、後ろ指を指されながら死ぬまで同じ事を続けるだろう。
でも、救われた身としては彼を止める気にはなれない。
俺と同じ様な子供が、また救われるかもしれないし。
……じゃあな、大好きだったよ。
「ハンバーガーおじさん」。
コメント
3件
周りが眉を顰めても、おもちゃの転売目的で善意から来るものじゃないと知っても、過去の自分は間違いなく救われた… 教科書通りの善行じゃなくても、自分にその気はなくても救われる人もいるしその逆も然りですよね🤔。 久しぶりにテラーに戻ってきましたがやはり花音さ…ラルバさんの作品が一番考えさせられるし面白いです!