コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
覚えています。 君と初めて出会った日のことを。
あの日のぺいんとはやけに嬉しそうで
俺とトラゾーで問い詰めたところ、 しにがみくんを紹介してくれました。
ぺいんと
しにがみ
トラゾー
最初は悪魔なんてびっくりしたし、 戸惑ったけど、
彼女の端正な顔立ちが、 そんな考えを吹き飛ばしていた。
クロノア
しにがみ
それから四人でよく遊んだし、 ぺいんとの弟達も一緒にいっぱい遊んだ。
…そう…すごく楽しかったな…
明るくて、優しくて、ひたむきで、 一緒にいると楽しくて、
彼は悪魔だなんて関係ないくらい、
いたって普通の少年だった。
だからこそ、あの言葉が信じ難かった。
ぺいんと
トラゾー
ある日、ぺいんとが 全身を傷だらけにして倒れていて
目を覚ますなりそんなことを言うのだ。
クロノア
彼は震える唇で語った。
しにがみくんが、 森でぺいんとを食べようとしたこと。
殺されそうな時、咄嗟に腕に傷を負わせ、 彼を追い払えたこと。
その姿は、他の悪魔達と なんら変わらなかったと。
みんな信じたくなかった。
あの優しくてどこか抜けている彼が
一番の親友であるはずの ぺいんとを襲ったなど。
でも、ぺいんとがこんな嘘を言うような奴 じゃないことはみんなわかっていた。
俺とトラゾーはともさんの所へ、
ぺいんとの弟であるロボロくんは、 他のみんなに知らせに行った。
トラゾー
ともさん
ともさん
クロノア
僕らは、ぺいんとの言っていたことを 正確に伝えた。
ともさんはこの村の村長でありながら、 しにがみくんの親代わりでもある。
こんな話をするのは酷だろうが、 彼が関わっている以上、処罰を決めるのは ともさんだ。
ともさんの顔が一瞬怖いものになった。
が、すぐに真剣な表情になると、 僕らにこう告げた。
ともさん
ともさん
トラゾー
その後ロボロくん達と合流し、 先ほどの話を伝える。
みんなそのことに賛成だった。
もちろんぺいんとを襲ったのは許せない。
ただ、しにがみくんを殺したくない という気持ちもあったから。
一度、しにがみくんと 話をしようということになったが、
チーノくんとらっだあさんは 「話す気になれない」と去ってしまった。
バタバタバタ、ガチャン!
トラゾー
しにがみ
トラゾー
しにがみ
部屋について早々、 トラゾーが怒鳴りだす。
しにがみくんは戸惑っている様子だ。
ぺいんとにあんなことをしておいて…
トラゾー
しにがみ
ロボロ
とうとうシラを切るしにがみくんに 我慢ならなくなったのか、 ロボロくんが叫んだ。
ロボロ
しにがみ
クロノア
クロノア
しにがみ
はぁ?って…
しにがみ
しにがみ
…ここでちゃんと、心からの謝罪が 聞きたかったな…
トラゾー
トラゾー
しにがみ
しにがみ
ああもう、君の口から 言い訳なんか聞きたくないよ。
クロノア
クロノア
クロノア
俺がしにがみくんを 犯人として扱う理由はそこだった。
ただ森に行っただけで、 刃型の傷ができる訳ない。
しにがみ
ロボロ
ロボロ
ロボロ
ロボロ
しにがみ
トラゾー
トラゾー
クロノア
クロノア
しにがみくんの顔には 冷や汗が伝っていた。
顔は青ざめ、瞳孔は開いている。
彼は悪魔特有の翼を大きく広げると、 逃げるように窓から飛び立っていった。
トラゾー
クロノア
ロボロ
ロボロ
ロボロ
ダッ!
ロボロ
クロノア
ぺいんとの病室から飛び出してきた彼は、 何故か頭から血を流していて、
薄らと涙を浮かべながら 走り去っていった。
ぴくと
トラゾー
ぴくと
クロノア
ぴくと
ぴくと
どこかおぼつかない足取りのぴくとさん を横目に、ぺいんとの病室に入る。
ロボロ
ぺいんと
…彼は一体、 何をしにここへ来たのだろう。
ぺいんとを襲うでもなく、 謝罪があった訳でもない。
ただ、あの頭の傷が、 ずっと心に引っ掛かっていた。
それから数十分くらい後かな。
しにがみくんが戻ってきたんだ。
全てを諦めたような、生気の無い顔で。
魔術師であった俺は、しにがみくんが 村に入れなくなるよう呪いをかけて、
彼は何も言わずに村を去っていった。
…
これでいい。
これでいいはず。
……
数日後
トラゾーがイナリさんを庇って 大怪我を負った。
原因は森に出没した悪魔。
チーノ
クロノア
魔術を駆使してなんとか取り押さえる。
ともさん
しばらくして、ぺいんとがこっちに 向かってくるのが見えた。
が、悪魔と目が合った瞬間、 ぺいんとの動きが止まる。
クロノア
ぺいんと
ロボロ
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんとの様子がおかしい。
悪魔
悪魔
悪魔
隣の悪魔は不気味なくらいの猫なで声で ぺいんとに喋りかけている。
さっきから何を言ってるんだ? なんだか…嫌な予感がする。
ぺいんと
ぺいんと
ぺいんと
その言葉に、全員が固まった。
今…なんて…?
悪魔
悪魔
悪魔が喋り終わる前に ぺいんとが駆け出す。
俺たちも一斉に走り出した。
クロノア
どういうことだ、どういうことだ、
ぺいんとを襲ったのは、 しにがみくんじゃなかったのか?
クロノア
だとすれば
彼から見るあの日の僕らは、 どんな風に映っていただろう。
クロノア
ドサッ!
彼の絶望したような表情を思い出す。
あの時ちゃんと話を聞いていれば
彼の心情に気づいていれば
今頃、彼は何も変わらずこの村で...
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
クロノア
結局、日が落ちてもしにがみくんを 見つけることはできなくて、
俺たちは全員家路についた。
そこへ、ぺいんととらっだあさんが 帰ってくるのが見えて、
ロボロ
ともさん
ぺいんとの腕の中には、 しにがみくんが抱えられていた。
良かった!見つかったんだ...!
そう安堵して駆け寄る。
しかし、ぺいんとの 光の無い目を見て、足を止めた。
チーノ
ぺいんと
クロノア
らっだあ
ロボロ
らっだあ
らっだあ
もう一度、ぺいんとの腕の中を確認する。
眠っていると思っていたが、 その体はピクリとも動かない。
呼吸で胸が上下する訳でもない。
肌は異様に白く、片腕は力無く ダランと垂れ下がっている。
大切な友人だったはずの“それ”は、
もうどこからどう見ても、 遺体にしか見えなかった。
チーノ
ロボロ
ロボロ
ぺいんと
ぺいんと
頭が、自分でも驚くほど 冷めていくのがわかる。
ロボロくん達の悲痛な声も、 ぺいんとの押し殺すような声も
なんにも、聞こえない。
気づいた時には、ほら、
空っぽ