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MARIMO
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夕暮れの大手町。 ガラス張りのビルが立ち並ぶメインストリートを 一際目を引く二人の男が歩いていた。
先頭を行くのは、体に吸い付くような紺色のスーツを完璧に着こなした青年。 鯉登音之進だ。 若くして大手商社の常務に就任した彼は、耳元のワイヤレスイヤホンで 流暢に国際電話をこなしながら、迷いのない足取りで並木道をゆく。
その一歩後ろ。
黒色のスーツに身を包み、周囲の人の混雑を鋭い眼光で払いながら歩く男。 月島基。 彼は主の歩幅を把握し、絶え間なく届くメールに片手で返信しながら 秒刻みのスケジュールを管理する。
そんな「現代の勝者」を地で行く二人を、駅ビルの木陰から買い物袋を捧げた杉元一行が目撃していた。
杉元
杉元が、安売りの卵パックを危うく落としそうになる。
白石
白石
白石が引き気味に呟く。
アシリパはその二人が纏う圧倒的な「仕事人」の空気をじっと観察していた。
アシリパ
信号待ちで足を止めた鯉登が、背後の視線に気づいて振り返る。
サングラスをわずかにずらしたその瞳が、作業着姿の杉元と かつての「敵」たちをとらえた。
鯉登
鯉登
月島は表情一つ変えず、懐から一分の隙もない手帳を取り出した。
月島
月島の一言で、その場の空気が一気に「あの頃」に戻る。
鯉登は流れるような動作で内ポケットから 金色の縁取りがある重厚な名刺を取り出すとそれを 杉元の胸元にパシッと叩きつけるように差し出した。
鯉登
鯉登
月島
月島
月島は最後、白石にだけは「ゴミを見るような目」を向けてから、再び鯉登の背後へと静かに消えていった。
白石
喚く白石を他所に、杉元は渡された名刺を見つめた。
そこには、誰もが知る超高級料亭の名前。
杉元
杉元
アシリパ
冬のオフィス街に、少しだけ懐かしくて暖かい笑い声が響いた。
(前略:大手町での再会後、夜の高級料理店にて)
通されたのは、都会の喧騒が嘘のように静まり返った庭園の見える広大な個室だった。
一客数十万は下らないであろう漆塗りのテーブルを囲み 杉元、アシリパ、白石の三人は、場違いなほどリラックスしている。
白石
白石が、仲居さんが持ってきた最高級の日本酒を勝手に自分で注ぎながら トロを口に放り込む。
アシリパ
アシリパが、美しく盛り付けられた刺身を箸でつついて杉元を見る。
杉本は苦笑いしながら、向かい側に座る「エリート」の二人を見やった。
鯉登は、一着数十万のスーツを少しも崩さず、流れるような所作で食べ物を 口に運んでいる。
その隣では、月島が無表情のまま、鯉登の食べこぼしがないか あるいは毒(ではなく現在の不純物)が混じっていないかを監視するかのような鋭い眼光で淡々と箸を動かしていた。
鯉登
鯉登が自慢げに鼻を鳴らす
杉元
杉元がそう言って、大振りの煮物を一口で頬張る。
月島は、その様子をじっと見つめた後、手元のグラスを置いた。
月島
月島がかつての戦場を思い出すような、けれど少し柔らかい声で名前を呼ぶ。
月島
その言葉に、部屋が一瞬だけ静かになった。
鯉登も、どこか照れくさそうに視線を逸らし
鯉登
と、いつもの無茶振りを口にする。
月島
月島がいつものように即答し、手際よく注文を済ませる。
かつては金塊と命を奪い合った者たちが、今は現代の贅沢を前に
笑い
呆れ
そして静かに絆を確かめ合っている。
杉元
アシリパ
夜は更けていく。 高級料理亭に響くのは似つかわしくないほど賑やかな かつての「生存者たち」の笑い声だった。
MARIMO
MARIMO
MARIMO
MARIMO