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第1話 - あ

2023年10月30日

#恋愛

結城　真矢

ショウセイ

サリ

ショウセイ

今朝、俺の仕事用の靴下が1つ見当たらなかったんだけど、知らない？

ショウセイ

もう時間で間に合わなかったから、プライベート用の靴下はいてきたんだけどさ

サリ

そんなの、知るわけないでしょ

サリ

っていうか、洗濯ものくらい自分でしまってよね

サリ

取り込んだ後、私のものとショウセイのもので分けてあるじゃん

ショウセイ

自分で持って行こうと思ってるよ

ショウセイ

でも、俺がやる前にサリが片づけちゃうんじゃん

サリ

片づけちゃう、ってなんかその言い方...

サリ

私が悪いみたいな言い方じゃん

ショウセイ

だって、そうだろ？

ショウセイ

仕事から帰ってきて、すぐに洗濯物入れたから片付けて、とか言うけどさ

ショウセイ

こっちだって少しは休みてーんだよ

ショウセイ

配達員なんて毎日いろんなところ走り回って、へとへとなんだよ

サリ

それでも、洗濯ものくらいは自分の部屋持って行ってよ

サリ

自分の部屋に行くんだから、手ぶらで行かなくていいでしょ

ショウセイ

何も持てないほど、俺は疲れてるの

ショウセイ

サリにはできないことだし、こんなこと言われても分かんねーと思うけど

サリ

分かんないよ

サリ

でも、私だって普通に会社でOLしてるんだよ

サリ

配達員みたいにそんな走り回る仕事ではないけどさ、残業ある日は疲れてるの

サリ

少しはパートナーの私のこと思いやる気持ちくらい、持ってほしいんだけど

ショウセイ

相手にそういうこと求めるなら、まずは自分のことをしっかりやれよ

サリ

そんな言い方しなくてもいいじゃん

サリ

残業ある日は、普通に22時過ぎることあるのに

サリ

仕事して疲れてるのはお互い様でしょ

ショウセイ

疲れたのレベルが違うじゃん

ショウセイ

そこらへんのことは理解してくれてると思ったんだけどな

ショウセイ

がっかりだよ

サリ

勝手にがっかりしとけばいいじゃん

サリ

私は、しっかり分担しておきたいと思ってるから

ショウセイ

分かった

ショウセイ

じゃあ、これから朝の洗濯ものとか洗い物は俺がやるよ

サリ

え？本当に？

ショウセイ

帰ってきてからはほぼ体動かないし、朝出かける前にやることやった方が、自分的にラクなんだ

サリ

分かった

サリ

じゃあ、朝の洗い物と、洗濯もの回して干すのはよろしくね

サリ

明日からでいいの？

ショウセイ

うん、いいよ

サリ

分かった

サリ

じゃあ、明日からよろしくね

～翌日の朝～

サリ

ねえ、ショウセイ

ショウセイ

あ？

ショウセイ

なんだよ、今運転中だから手短にしてほしいんだけど

サリ

どうして早速、洗濯物干すのやってくれないの？

サリ

今日の朝からやる、って自分から言ったでしょ？

ショウセイ

だって、朝見たら洗濯物洗えてなかったから、干せなかったんだよ

サリ

私、昨日言ったじゃん

サリ

洗濯もの回して、干すのまでよろしくね、って

ショウセイ

でも、サリはいつも朝は干すところから始めてるじゃん

ショウセイ

夜のうちに洗濯する、ってことはそれはサリの仕事になるんだろ？

サリ

は？そういうこと？

サリ

私は、洗濯するのも、そのあと干すのもやってね、ってちゃんと言ったよ？

ショウセイ

知るわけねーだろ、そんなこと...

ショウセイ

なら、サリが俺に洗濯機の使い方教えてくれたらよかったじゃないか

サリ

洗濯機の使い方まで知らないなんて、思ってなかったんだもん

サリ

それで、私のせいにするとか...考えられないんだけど

ショウセイ

んだよ...その馬鹿にした言い方

サリ

だって、本当のことでしょ！？

サリ

なんで家電製品の使い方も知らないわけ？

サリ

それで、使い方知らなかったら教えなかった私のせいにするとか...

ショウセイ

考えられないんだけど？

ショウセイ

俺のことを普段からよく見てない証拠だろ

ショウセイ

しっかり観察してないお前が悪いんだよ

サリ

またそんなこと言うんだ

サリ

ほんと最低すぎる

サリ

全部私に責任押し付けるんだから

サリ

そしたら、今日の夜使い方教えるからしっかり覚えてね

サリ

それで、次からは自分で使えるようになってよ

サリ

分かった？

ショウセイ

はいはい、分かったよ

翌日

ショウセイ

おい、何で今日の弁当白米じゃないんだよ？

ショウセイ

弁当にパスタ入れるのは止めてくれ、って言っただろ？

ショウセイ

俺、冷めたパスタはまずくて嫌いなんだよ

サリ

冷めたまずいパスタ食べるはめになったのは、誰のせい？

ショウセイ

は？

ショウセイ

もしかして、昨日のこと根に持ってるわけ？

サリ

違うよ

サリ

ショウセイさ、私が夜のうちに炊飯器セットしてるの知らないでしょ？

ショウセイ

え？そうなの？

サリ

そうだよ

サリ

それ知らなくて、どうせ昨日の夜に炊飯器のコード抜いちゃったんでしょ？

サリ

深夜にカップラーメン食べてたじゃん

ショウセイ

サリ、昨日の夜俺が食べてるところ見てたじゃん

ショウセイ

なんで知ってて、その時に言ってくれなかったんだよ？

サリ

だって、知ってるかと思ってたんだもん

サリ

だから、お湯沸かした後にまた指し直してくれるのかな、って

サリ

でも、本当に全く知らなかったんだ...

ショウセイ

そんなの、知るわけないだろ

ショウセイ

そっちだって、俺が知らなかったこと知ってたんじゃないのかよ？

サリ

知らなかったよ

サリ

本当に、私がやってること何も見てないんだね

サリ

びっくりだよ

サリ

っていうか、それ通り越して呆れて文句さえも言えない

ショウセイ

あっそうかよ

ショウセイ

俺がサリがしてることに気づかない、って言うけどさ

ショウセイ

サリも俺が何できないか、把握してくれてないじゃん

ショウセイ

俺に興味ない、ってことだろ？

サリ

は？何言ってんの？

サリ

そういうことじゃないでしょ

サリ

だいたい普段から家のことで何をやらないといけないか分かってれば、

サリ

やらなきゃいけないこととか、目につくはずでしょ？

サリ

まあ、自分の洗濯ものを持って行くことさえもできない人に、

サリ

そんなところまで気が回るはずないよね

ショウセイ

そんな言い方ないだろ

ショウセイ

サリのそういう、ねちねちと遠回しに嫌味言うところが嫌いなんだよ

サリ

直した方がいいぞ

サリ

私は別に遠回しに言ってるつもりないんだけど

サリ

でも、私の言い方が遠回しに聞こえるんだったら、はっきり言わせてもらうね

サリ

離婚したい

ショウセイ

は！？何、いきなり

サリ

ショウセイだって、その方が自分がダラダラしたいときにできるでしょ

サリ

その方が、気がラクなんじゃない？

ショウセイ

俺のこと、邪魔だと思ってるわけだろ？

サリ

別に、そんな言い方してないじゃん

サリ

なんですぐそんな捉え方するわけ？

ショウセイ

内心ではそう思ってるんだろ？

ショウセイ

まあ、でも、もういいよ

サリ

何が？

ショウセイ

俺は、サリに頼らなくても自分で生きていけるから

サリ

は？どういうこと？

ショウセイ

そんなに料理ができなくても、生きていけるし

ショウセイ

外食っていう手だってあるんだしさ

サリ

そんなことして、あとでお金なくなって困るのは自分でしょ

ショウセイ

俺、実は今、株を始めてるんだ

ショウセイ

それで成功したら、1人暮らししててもいい暮らしはできると思うし

サリ

へー

サリ

そんなんでうまくいく人なんて、ほんの一握りじゃん

サリ

ショウセイがお金作る方法で頼るべきところではないんじゃないの？

ショウセイ

まあ、人生大逆転して見せるから

ショウセイ

見てろよ

～１か月後～

ショウセイ

なあ、サリ！

ショウセイ

俺、やったんだよ！

サリ

何？いきなり

サリ

もう関係ないんだから、連絡してこないでよ

ショウセイ

冷たいこと言うなよ

ショウセイ

俺さ、株で成功して、来月に30万入るんだよ！

ショウセイ

今話題の株主育成のネットサロンに入ってさ

サリ

ふーん

サリ

ちなみに、それどんなサロンなの？

ショウセイ

スマホでも最近広告で出てくるやつなんだけど

ショウセイ

成功者99％でさ

ショウセイ

俺、マジで激務の運転手から人生変えれそうなんだけど

サリ

なんか、気分高揚してるところ、悪いんだけどさ

ショウセイ

え？何？

サリ

ニュースでそのサロンが話題になってるの知らないの？

ショウセイ

広告もしてるんだから、ニュースになって人気になるのは別に驚くことじゃねーだろ

サリ

そうじゃなくてさ

サリ

詐欺だ、って報道されてるってことを言ってるの

ショウセイ

え！？マジで！？

サリ

やっぱり、知らなかったんだ

サリ

なんか、ニュース見た時のサロン入会の勧誘方法から怪しいと思ってたんだよね

ショウセイ

え...どこらへんが？

サリ

どこらへんが、って...全部だよ

サリ

いかにも、ショウセイが引っ掛かりそうな手口だよね

サリ

絶対に成功する、とかいう根拠もない言葉にまんまと騙されたんでしょ？

ショウセイ

俺は、騙された何て思ってないからな

ショウセイ

ただ、昨日いきなりセミナーをぶっちされてビビったけど...

サリ

何？ぶっちされたってどういうこと？

ショウセイ

毎週、定例のセミナーがあって、昨日も行ってきたんだ

ショウセイ

そしたら、いきなり今日のセミナーは急用でなくなった、って連絡が来て

ショウセイ

それから、メールしても一切返信が返ってこないんだ

サリ

まあ、その時点で怪しい、って普通思うでしょ

サリ

返信無視なんて、完全に黒でしょ

ショウセイ

マジかよ...

ショウセイ

俺、このサロンはいるために30万も払ったのに

サリ

え！？そんなにするの？

サリ

ほんと、何も疑ってなかったんだね

ショウセイ

30万の収入も、たぶん入ってこないだろうし...

ショウセイ

どうすんだよ...俺配達員の仕事辞めたんだぞ

ショウセイ

これに人生かけてたのに、どうしてくれるんだよ...マジで

サリ

これに人生かけてたんだ

サリ

随分、自分の人生を粗末にするんだね

ショウセイ

俺は真剣だったんだよ

ショウセイ

それを、こんな詐欺にはめて騙すなんて...マジで許せねー

ショウセイ

なあ、サリ、今は家どうしてんの？

サリ

どうしてる？って...

サリ

新しいマンションの部屋を契約して住んでるけど

ショウセイ

そしたら、俺もそこに泊めてくれないか？

サリ

は？そんなの無理に決まってるでしょ！？

ショウセイ

頼む！

ショウセイ

貯金を切り崩しての生活だと、

ショウセイ

とてもじゃないけどサリと住んでたアパートには住めないんだ

ショウセイ

少しでも生活資金残せるように...

ショウセイ

頼むよ！

サリ

無理だって

サリ

だって、私1人じゃなくて新しい彼と同棲してるんだもん

ショウセイ

え！？

ショウセイ

もう新しい彼氏できたのかよ？

サリ

そうだよ

サリ

ショウセイと違って、料理も洗濯も...

サリ

私が言う前にやってくれるの

サリ

ショウセイとは大違いだよ

ショウセイ

そしたらさ、俺からその新しい彼氏に話してみてもいいか？

サリ

何訳の分かんないこと言ってんの！？

サリ

何話すつもり！？

ショウセイ

新しい仕事を見つけるまでの間は、残った貯金のみで暮らすのは難しいから、

ショウセイ

その間だけ泊めてください、って...

サリ

そんなこと、絶対にやめてよ

ショウセイ

ダメもとでもいいから、言わせてくれないか？

ショウセイ

サリから言われたら信用しないと思うけど、

ショウセイ

ちゃんと元カレ、ってことも言って、

ショウセイ

今はもう何もない、って伝えればわかってくれると思うから

サリ

彼はすごい優しいし、ショウセイより何倍もいい人だよ

サリ

でも、それに頼って彼のこと、困らせたくないの

ショウセイ

２人のことは絶対に邪魔しないから！

ショウセイ

ここに約束する！

サリ

本当に無理だから

サリ

まだ付き合ってそんなにしないのに、信頼失いたくないの

サリ

諦めて

サリ

それで、今までの自分の怠けた怠惰なところを反省して直してよ

～後日談～

サリ

その後、ショウセイは詐欺にあったことは友達や親にも知らせず、

サリ

深夜のコンビニアルバイトと昼間のバイトを掛け持ちして、生計を立てたようです

サリ

プライドが高いので、友達に話して泊めてもらうなんてことは、到底できなかったのでしょう

サリ

そして、私は新しい彼と同棲を始めて２カ月がたちました

サリ

毎日すごく充実した暮らしができていて、とても幸せです

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結城　真矢

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