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黒岩

瀬尾先生....

瀬尾

ダメじゃないこんなところに忍び込んで

瀬尾

1人で何してたの?

綾辻

こんばんは

瀬尾

わっ

瀬尾

気づかなかった、えっと

綾辻

3年の綾辻詩織です

瀬尾

ああ、最近転校してきた

瀬尾

2人とも何してるの
無断での立ち入りはダメで

言いかけたところで、瀬尾先生の視線が体育倉庫に釘付けになった

瀬尾

何かいる?

綾辻

はい

綾辻

先生なら分かるはずです

瀬尾

....ああ

瀬尾

やっぱり学校わらしじゃなかったのね

綾辻

はい

瀬尾

あれは私?

綾辻

....はい

瀬尾

だから呼び出したのね

瀬尾

私にどうしろと?

綾辻

説得を

綾辻

先生の声ならば届きます

瀬尾

分かったわ

瀬尾先生は、影に近づいていく

「ユルサナイユルサナイユルサナイ」

瀬尾

あなたはずっとここにいたのね

「コロシテヤルコロシテヤルコロシテヤル」

瀬尾

もういいのよ、全部終わったの

「アイツラガワルイアイツラガワルインダ、アイツラガワルイアイツラヲコロシテヤル」

瀬尾

あなたは十分苦しんだわ

瀬尾

これ以上苦しむ必要は無いの

瀬尾

もう終わりにしよう

影が徐々に薄くなり、顔が少しづつ見えてきた

若い頃の瀬尾先生だろうか

涙を流しているように黒岩には見えた

「サミシイサミシイサミシイサミシイ」

「ツラカッタツラカツタツラカッタ」

瀬尾

もうひとりじゃないわ

「シニタイシニタイシニタイシニタイ」

瀬尾

あなたのおかげで生きてこられた

瀬尾先生は、影に近づき両手を縄から外させるとそのまま抱き寄せた

瀬尾先生は影の耳元で何かを囁いていたが、黒岩には聞こえなかった

「ありがとう」だろうか?

そうであって欲しいと黒岩は思った

月にかかっていた雲が晴れ、体育倉庫の窓から光が差し込む

影は消えて、瀬尾先生だけになった

しばらくの沈黙の後、瀬尾先生が帰りましょうと言った

時刻は22時をまわっており、生徒だけで帰らせられないとの事で黒岩と綾辻は車の中にいた

車の中で瀬尾先生は話してくれた

いじめのきっかけは覚えていないくらい些細なことだったと

同じバレー部の女子2人を中心にいじめが始まり、それがクラス全体に広がったらしい

瀬尾

そういえば、なんで学校わらしだなんて言ったの?

瀬尾

影の正体を知っていたわけでしょ?

黒岩

いや、その時ぼくは知りませんでした

黒岩

どうやら、影のことを学校わらしだと嘘を流して力を弱らせる作戦だったみたいです

瀬尾

なるほどね、そういうこともできるのか

くすっ

瀬尾先生は笑った

瀬尾

でも、学校わらしは本当にいるよ

黒岩

えっ?

綾辻も驚いた表情をしている

瀬尾

私が本当に辛くて死んでしまおうと思った時、あの体育倉庫で私あったの

瀬尾

縄を持って首をかけようとした時トントンと肩を叩かれたんだ

瀬尾

振り返っても誰もいるはずがない
でも不思議と、死ぬのをやめようって気になって何とか持ち直したのよ

黒岩

....そうですか

瀬尾

黒岩くん、学校わらしに肩を叩かれるとラッキーなことが続くって言ってたよね

瀬尾

その日から少しづついじめが無くなっていったんだよね

瀬尾

だから卒業まで頑張れたんだと思う

瀬尾

まあ、いじめられっ子から誰にもかまわれない空気に変わっただけだけど

黒岩

そうだったんですね

これには綾辻も驚いたようだった

全くのでっちあげで利用した学校わらしに先生は出会っていたのだ

綾辻

あ、私はここで

瀬尾

大丈夫?家まで送ろうか?

綾辻

いや、ここからすぐなので
車で行くと逆に遠回りになっちゃいます

瀬尾

わかったわ、気をつけてね

綾辻は、駅の近くで降りていった 街灯も多いし、彼女なら多分平気だろう

瀬尾

じゃあ、次は黒岩くんね

黒岩

はい、お願いします

瀬尾

もう、夜中に勝手に学校に来るのはやめてね

黒岩

はい、すみません

瀬尾

この道を真っ直ぐだよね

黒岩

はい

黒岩は少し疑問に思っていたことを聞いてみた

黒岩

先生はなんで学校の先生になろうと思ったんですか?

黒岩

あまり学校にいい思い出がないと思うんですけど

瀬尾

そうだなー

瀬尾

辛い思いをする生徒が出ないようにしたいっていうのが大きいかな

瀬尾

私がいじめられていた時、周りの先生は助けてくれなかったから

黒岩

なるほど

瀬尾

あとは恩返しかな

黒岩

恩返し?

瀬尾

そう、私を助けてくれた学校わらしにね

黒岩

ああ、なるほど

瀬尾

そういえば、学校わらしに肩を叩かれるとラッキーなことが続くって言ってたじゃない?

黒岩

はい

瀬尾

さっきの続きでもっといいことがあったの

瀬尾

私が大学生の時に、私をいじめていた2人が交通事故で亡くなったのよ

黒岩

瀬尾

運転していたら子供が飛び出しできたらしくて、避けようとして壁にドカーン!

瀬尾

その話を聞いて学校わらしに恩返ししなくちゃって思ったの

黒岩

....

瀬尾

でなきゃこんなクソ学校戻ってこないわ

瀬尾先生は笑った

×月×日

人間は変われる生き物だ。

しかし、変わらなくてもいいことや、変われない部分もあるのだと思った。

車の中での告白に私は驚いたが、よく考えてみればそれでいいのだと思う。

私の知っている瀬尾先生も、体育倉庫にいた瀬尾先生もどちらも本物なのだ。

私の影もどこかに引っかかっているのかもしれないと考えた。

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