学芸会の奇跡

あやかは私の幼馴染で、小学校から仲がいい大親友だ。

この会話から分かるように私はごく普通の地味な女だ。

顔を上げるとあやかが鏡を持っていた。

見るとマッキーで塗りつぶしたかのような真っ黒なクマが出来ていた。

キーンコーンカーンコーン…

あやかはそそくさと席に戻る。

それは私が1番嫌いなイベントだった。

「おおー」

と歓声が上がる。

「蓮くん」という「柄澤 蓮」は

私の初恋相手であり、現在進行形で片想い中の相手だ。

シーン…

イェーイ！と盛り上がる。

女子が次々と手を挙げる。

その中にはあやかもいた。

すると綺麗に全員の手がスっと下がった。

女子数人が「やりなよー」と誰かを勧める。

またまた「おおー」と歓声が上がる。

ハッハッハと豪快に先生が笑う。

と先生がニヤッと笑った。

キーンコーンカーンコーン…

ガタガタガタガタ…

みんなが席から離れて湊崎みゆの席を囲む。

2週間後…

白雪姫の練習中…

私は白雪姫の小人の役だ。

と今度は声を高くしてセリフを言った。

晴果は学校でも有名ないじめっ子だ。

昔は毎日一緒に遊ぶような仲だったのだが、

ある日を境に晴果から避けられるようになった。

それからというもの毎日私に対する嫌がらせをしてくる。

4週間後…

蓮くんも驚いている。

そういえば私のセリフは

「白雪姫ー！」だけだった。

1時間後…

30分後…

ブザーが鳴り幕が上がる。

舞台は順調に進められた。

次はいよいよキスシーンの場面だ。

バサッ

大きな音がした。

床にあった小道具のブロックに足を引っ掛け舞台で盛大に転んでしまった。

客席の奥に悪魔のように笑う顔が見えた。

それは当然、晴果だ。

私は悔しくて泣きだしそうだった。

だがその時、

なんとここで蓮くんがアドリブを入れて綺麗に話を繋いでくれたのだ。

そしてキスシーン…

とキスをしながら蓮くんが私の耳元で囁いた。