月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
注意!! ・地雷さんは今すぐUターン! ・両片思いの青黒です ・桃さん視点から始まります ・nmmn
月見。
あにきは存外分かりやすい。
いれいす最年長、大黒柱としてずっしり構えて、なんでもどんと来い!ってイメージがあると思うけど、実を言うとそんなことはなく。
勿論動じないこともあるけど、微風レベルのことに揺らぐこともあるし、焦ることだってある。・・・その時アイツが周りを頼るかはまた別問題なのだが。
とにかくそういうわけで、あにきは案外分かりやすい。それが、とある特定の条件の時は、その分かりやすさを一層際立たせるのだ。
ピンポーン、と家の中から聞こえて来るチャイムの音。
暫く待ってみるが、扉が開くどころか足音一つ聞こえてくる様子が無い。
あーこりゃ確定だな、と察した俺は、そっとドアノブに手をかけた。しっかり開いたドア。不用心め。アイツにチクるぞ。
足を踏み入れれば家の中は静かだった。一応「お邪魔しますよー」と声をかけてみたが当然返事は無し。
この家の主がいるであろう彼の自室へと足を向ける。熱中するのは良いけど、そろそろ気付いてくれないかな。これ俺じゃなかったらどうすんの?余裕で不法侵入じゃん。いや俺もだけど。
桃
返事来ないのわかってるのにちゃんと声かける俺、とても偉い。
不法侵入してるけどね。と頭の中でりうらが呟いた。黙らっしゃい最年少くん。
部屋の中からは予想通り返事が無かった。じゃあこちらもお構い無く、とドアを開ける。
桃
一歩足を踏み込んだ部屋の中の有様を、なんと表現したら良いか。一昔前の作家の締切一日前の部屋とか?伝わらないな。
彼に近ければ近いほど、足の踏み場が無い。こいつの部屋の床って白だったっけ、と思うほど、床を埋め尽くす紙、紙、紙。
いよいよ部屋に入った俺にもあにきは動じることなく、俺に背を向けて机と睨めっこ。正確にはその机の上にある紙と。
床に散らばっている紙の一枚を手に取り、目を通す。並べられた彼の字が、多くの言葉を紡いでいる。
桃
二、三枚ほど紙に目を通して、俺は小さく息を吐き出した。
ちらりと視線を投げた彼の背中。その手はまだ止まることなく動き続けている。いつから始まっているのか、どのくらいぶっ続けで書いているのか、分かったもんじゃない。
床を埋め尽くすその紙達をなるべく踏まないように気を付けながら、彼の元へと近づいた。
桃
黒
桃
べしっと頭を叩けば、彼は漸く俺に意識を向けた。うん、遅いね。
何事も無かったかのようにひらりと手を振ってくるあにきに、溜息を一つ吐く。
桃
黒
桃
黒
俺が手にぶら下げていたビニール袋を受け取ったあにきが、ガサガサとその中を漁る。その間に俺は、床に散らばっている紙の数々を集め始めた。
桃
黒
桃
気持ちぎっしり詰まったこんな歌詞低クオじゃねぇよ!!と叫びたくなるのを必死に抑えた。偉いぞ内藤ないこ。流石リーダー。
・・・あにきは、時々こうやって作詞人間になる時がある。
いや、勿論あにきはいれいすのオリ曲の作詞をよく手掛けてくれるのだが、それとこれとはまた別の話で。
まろとあにきは両片思いである。こちらからすれば、なんでそれで付き合ってないの??と思わず拳でも掲げたくなるくらいの距離感でイチャイチャしている二人なのだが、二人は恋人じゃないのだ。
いいよ、ないこさん同性がどうとかメンバー同士でどうとか気にするタイプじゃないから。早く付き合えよバカップル。と何度思ったことか、分かったもんじゃない。
おまけにあにきはこの性格。まろからのあんな大きな愛を受けておきながら「まろが俺のこと恋愛として好きな訳ないやん」と平然と言い放ってしまうくらいには、コイツは馬鹿である。そう、すっごい馬鹿。
お前が見てるまろと俺らが見てるまろは別人物なのか??と思ってしまう。あのまろからあにきへのクソデカ感情がただの“あにきっず”という名前だけで収まる訳がない。
・・・まぁそんなあにきだから、勿論彼は自分が今まろに片思いをしているという認識な訳で。
あにきがまろに自分から気持ちを伝えることは絶対無いだろうが、それでも彼の中で溜まっていく気持ちはたっぷりある。
まろへの気持ちがあにきの中だけで抑えきれなくなった時、彼は紙と向かい合う。
そしてそれ以外の全てを忘れたかのように、ひたすら作詞に没頭する。
そんな彼から生み出された歌詞は、とても甘酸っぱい恋の味。
いれいすのオリ曲で恋愛関連の歌の作詞をさせても、あにきは結構大人の恋愛、みたいな曲を書いてくれるから、こんな青春100%みたいな曲は珍しい。
だからこそそんな歌詞を使いたいと思うのに、あにきは断固拒否だ。まろへの気持ちがぎっしり詰まったこの歌詞のどこが低クオなんだよ、いつもと同レベルかそれ以上に最高だわ。と言いたいのを今日も我慢する。
桃
黒
メロンパンを頬張ろうとしていたあにきが咽せる。なんかごめん。
黒
桃
黒
なんだ「やだ」ってかわいいなこの最年長。相変わらずこの歌詞を曲に使う気は無いらしい彼に、俺は唇を尖らせる。
桃
黒
桃
背伸びしても届かないって、まろとあにきの身長差でしょ?それに届かない恋心をかけるって、めっちゃ良いじゃん。いや、普通に好きなんだが。
桃
黒
桃
まろへの気持ちが抑えきれなくなったから作詞にぶつけてるのに、その歌詞にまろが関連してない訳無いじゃん。
桃
黒
桃
まろ、最近簡単にかわいいって言うもんな〜。多分だけど普通の成人男性はそんな簡単にかわいいかわいい言わんのよ。
それにあにきはモヤモヤしてんだろうな〜。かわいいなぁこの最年長。リーダーは最年長の恋を応援してますよ。
まぁその「かわいい」があにきに対してだけ明らかに頻度バグってるのに気付かないあにきもあにきだけどな。
溢れ返った紙には、他にもまろを匂わせる言葉がつらつらと並んでいた。多分いれいすメンバーが読んだら誰だって分かると思う。ほとけっちでも分かるよこれは。
気付かないのはまろくらいだろう。お前あにきのこと大好きなくせになんでそういうのは気付けないの??アホなの??って思うくらいには鈍感になったりするのだ。アイツは。
桃
黒
桃
黒
桃
黒
桃
黒
桃
黒
桃
黒
おいコラ。知るな。当たり前みたいに言うな。
かき集めた紙の束を整え、俺は脇に抱えた。
桃
黒
桃
黒
桃
黒
桃
んじゃ、ちゃんとご飯食べるんだよ。と念を押せば、はいはいとあにきはシュークリームの袋を開けた。あの時のコンビニの店員さんも、まさかこのご飯達を成人済み男性の為に買っているだなんて思ってもいなかっただろうな。
桃
黒
桃
パタンとドアを閉めて、手元にある紙の束に、俺はゆるりと口元を緩めた。
桃
白
水
青
当然のようにチャイム無しノック無しで入った、休日のないこはうす。何やら騒がしい。
桃
白
水
青
最後の水色の発言にカチンと来るも、はいはい喧嘩は後でねーとのないこの言葉に止められる。
青
桃
水
白
ガバッとしょにだがほとけの口を塞いだ。一生塞いどけこの野郎。
三人が囲んでいるテーブルの上には、散乱する沢山の紙。なんやこれ。
ぺらりと一枚手に取って見てみれば、そこには見慣れた文字が並んでいた。
I need youもI miss youも君に筒抜け
何言ったって隠せやしないから
君が知らない言語でも作れないかな
そんなもしも話を愛してさ
恐らく、恋愛ソングの歌詞だ。片思いがテーマなのだろうか。なんてことない白い紙に、甘酸っぱい歌詞が紡がれている。
青
桃
青
桃
白
水
桃
白
ぐっと親指を立て合う二人。そのまま盛り上がる三人の会話をよそに、俺は暫く考え込んでいた。
・・・あにきは、こんな甘酸っぱい恋愛ソングを書く人だったろうか。
あにきが書く恋愛ソングの歌詞は、どちらかと言うと大人の恋愛みたいな感じで。もっとこう、ビターチョコレートのような歌詞だった筈なのに。
桃
────は?
白
桃
白
水
桃
青
ほとけの言葉に、嬉しそうにガタッと音を立てて椅子から立ち上がったないこの言葉を遮って叫ぶ。突然叫んだ俺を、三人はきょとんとした表情で見つめて来た。
白
青
桃
青
桃
俺の言葉に、ないこは特別驚いた様子も無く笑顔を浮かべた。
桃
青
目の前のコイツは、一体何を言ってるんだろうか。
白
水
白
桃
青
なんでそんな平然と話をしていられるんだろうか。俺の頭は未だ混乱状態で、上手く言葉を話すことも出来ない。
青
白
桃
水
知らない。そんなの、知らない。
目の前で喋ってる三人の声が、酷く遠くに感じる。目の前がどんどん暗くなっていくような、そんな感覚。
桃
青
ないこの嫌にハッキリした声が、俺の名前を呼んだ。
さっきまで笑っていたないこが、真剣な視線を真っ直ぐ俺に向けて来る。
桃
青
桃
握られた拳が、俺の胸元へと突き付けられる。
桃
家を飛び出して行ったまろの背中を見送り、ちょっぴり脱力した様子のいむしょーの二人に、お疲れ〜と声をかける。
白
桃
白
水
白
桃
黙り込む漢検特級男の肩を叩きながら、俺は机の上に広げられた紙を眺めた。
桃
水
白
桃
水
賑やかに弾む会話に、俺は笑みを浮かべた。
黒
玄関のドアを開けたあにきが、驚いた様子で俺を見つめる。
ずっと走って来て荒くなった息。呼吸を整える俺の手には、一枚の紙。
青
黒
その紙をあにきに突き付けるように見せれば、あにきは文字を読んでぶわっと顔を赤らめた。
ああ、嫌だ。あにきは、俺が知らない誰かのことを想ってこんな歌詞を書いて、こんな顔をするのか。
胸を締める嫌悪感。ただひたすらに、嫌だと思う。
青
黒
居心地が悪そうにあにきが視線を逸らす。
でも、と俺は続ける。
青
黒
上手な言葉を紡ぐ余裕すら無い。ただ胸に抱いた感情を、そのまま音にするだけ。
青
黒
青
この身の全ては君の為に存在するって、証明し続けるから。
青
君の恋の音を他の誰かに聞かせるなんて、死んでもごめんだ。
青
君の音全部、独り占めしたいんだ。
黒
青
あにきの口から漏れたのは、なんとも可愛らしい、そんな些細な罵倒。
黒
青
黒
青
俺の目の前に差し出されたのは、一枚の紙。俺が今手に持っているのと同じように、彼の文字が並んでいる。彼が書いたものだろう。
黒
そう言うと、あにきはパタンと玄関のドアを閉めて、家の中へと引っ込んでしまった。
押し付けられる形で受け取ったその紙に、俺は少しの間呆然としていた。
・・・と言うか、さっきからおまけみたいに付けられた「ばか」ってめっちゃかわいいな??
そんなことをブレずに思いながら、俺は漸くその紙に目を通した。
青
そこに綴られた最大限の恋の告白に、俺は彼の名前を叫びながらそのドアを開けたのだった。
ドアを開けたその場所に、顔を真っ赤にした彼が立っている。
───二人の恋が、交わる音がした。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
I need youもI miss youも君に筒抜け 何言ったって隠せやしないから 君が知らない言語でも作れないかな そんなもしも話を愛してさ
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
月見。
コメント
11件
日本語の天才か?
あれ、、、?ifってもしもだっけ? まあ私英検特級だからいっか!
通りすがりのものです! 神作ありがとうございます!(´▽`) もし〜なら🟰If という事ですね!?