大人はわかってくれない

バタンッ

ドアを閉める手に

力がこもる

いつもそう

大人は

わかってくれない

わたしのワガママだって、わかってる

それでも…

幼なじみの大和には

わかってほしかったな

男の子だけど

裁縫と料理が得意で

可愛いものが好きな大和

なんでも話せる友達で

わたしの…

次の日

大和はわたしの前を素通りして…

クラスの友達と話始める

あ…

なんか今…

胸の奥がチクッとした

心配そうな凛

答えはわからないまま

時間は

ゆっくりと流れる

昼休み…

大和は教室に居なかった

放課後も

大和と話はできなかった

次の日

大和と話ができないまま

時間だけが過ぎて行く

嬉しいことも

悲しいことも

今のわたしには遠くて…

少し前の自分を

うらやましく思った

いつもなら、こんな時

大和に相談するのに

まっすぐ歩いたら、すぐ家に着く

その時

家の前に人が立っていた

見間違えるはずがない

あれは…

ドクン

ドクン

ドクン

すぐそばに大和が居るのに

声をかければ、大和はきっと気付くはず

なのに…

振り返った大和が、わたしの元へ駆け寄る

わたしは逃げたしたい気持ちでいっぱいだった

大和がニコリと微笑む

…ドキっ

ガサッ

大和が差し出したのは

チェックの紙袋

紙袋の中には

大和は本当に器用だ

わたしは飴細工のように美しいピアスを

うっとりと眺めた

わたしは耳たぶを触る

わたしの耳に…

ピアスの穴は無い

紙袋をのぞくと

金色の金具が見えた

手に取ってみる

それは、丸い飾りのついたイヤリング

オシャレは好きだけど

こういう物には疎いんだよね、わたし…

イヤリングなら、お母さんも怒らないよね？

欲しかったピアスも

ピアスを着けるための金具も貰ったのに

頬を夕日で赤く染め

大和が走り出す

わたしは大和の後ろ姿に

大きく手を降った

学校指定のランドセルが

二人の背中で、カタカタと揺れている