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コメント
4件
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私は『こころ』を手に取り、ページをめくった。
どこにも佐藤くんからの手紙はなかった。 私が返事をしていないのが原因である事は分かっている。
だけど______。
私は本を持ったまま席に座った。
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ツン、と鼻の奥が痛んだかと思えば、瞳にゆっくり涙が 浮かんできた。
泣きたいわけではないのに、抑え込んでいた感情が 一度に溢れてしまうと取り返しがつかなかった。
私とyaくんの関係を知らずに、憶測で陰口を叩かれることは当然悔しいが、 私が今こんなにも心が痛いのは、二人の言葉が単純にショックだったから。
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隣には全方位パーフェクトな女の子がいるのに。
私は気づいたらメモ帳とペンケースを出していた。
佐藤くんの眩しすぎるほど真っ直ぐな言葉。
「どうかこのまま、本に挟んで文通を続けてくれないか?お願いだ」
その言葉を自分の都合で無視した。
それでもこんな私が良いと言ってくれるなら______。
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どうして私なんですか?
私の事を知っているならものすごく可愛い友達と 一緒に行動していることだってもちろん知ってるでしょ?
それなのに、何の取り柄もない私が気になるなんて 正直、信じられない。
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キーンコーンカーンコーン
次の日、放課後を告げるチャイムと同時に教室を出た。
気になって仕方なかったのだ。
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そこには1枚の便箋が挟まれていた。
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君にしかない良さがある。 少なくとも俺は、分かってるから。
なにかあった?
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胸が掴まれたように痛かった。
短い文章でも佐藤くんの人柄がよくわかる。
ずっと書いていなかった返事に問いただしもせず 「なにかあった?」と心配してくれる。
そんな優しさに鎖されていた心が解放された気分になった。
やはり私は佐藤くんの言葉に救われているのだ。
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ずっと仲良くしてた友達を好きじゃなくなって しまいそうだったり 生きていても辛いことばっかりで最近嫌になってたの。
心配かけてごめんなさい。
でも大丈夫。ありがとう。
それから、やっぱり誰か気になります。 まだ教えてくれない?
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誰にも言えない悩みを佐藤くんになら言える。
私は本に手紙を仕舞い、特等席に座って過去の 行動を顧みた。
私が手紙を入れているのはいつも放課後。 しかし、急いで図書室に来た日も佐藤くんと会うことはなかった。
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申し訳無さそうにしているのは国語教師のじゃっぴだった。
若くて親しみやすいから、密かに生徒の間で呼ばれている。
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なんだったんだ…w
図書室は落ち着く。
もとはyaくんを見るために訪れていたが今はそれだけではない。
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橙さんは、その友達の事が大事なんだな。
思っていることの全部じゃなくていい、 1%でも伝える努力をしてみたらどう?
ごめん。俺のことは言えない。
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ありがとう。
今度頑張って伝えてみようと思う。
教えてくれないなら、私が佐藤くんのこと探してみても良い?
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生クリームがふんだんに使われたパンケーキの画像を見せてくるrn に帰る用意をしながら相槌を打った。
写真投稿アプリには、流行りのスイーツやコスメが沢山出てくる。
私は一応アカウントは所持しているが可愛いものを見る専用だ。
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不安げに見るrnは上目遣いで、しかもそれを無意識にできているのが凄い。
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「思っていることの全部じゃなくていい、1%でも伝える努力をしてみたらどう?」
という佐藤くんの言葉を思い出し私は息を吸った。
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怒られるかな…?
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初めて聞いた。rnがそんなふうに思っていたことを私は全然知らなかった。
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もしかしたらrnのことを勝手に決めつけてる部分が多いのかも知れない。
私は今日も放課後、図書室へ来た。
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探すのはいいけど見つからないと思うな。
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でも、この文からは見つからない絶対的自信があるように見れる。
絶対に佐藤くんを見つけたい…。
ここから、私の「佐藤くん探し」が始まった。