特別

特別

stxxx BL 黄青 黄○

誰もいない生徒会室で呟いた

親しい先輩の名前を思わず口に出す

毎日適当に生きてた

家に帰んないことも多かったし

帰ったら傷が増えて

どんどん普通から離れてくだけ

でも先輩が意味をくれたから

がらがらの声も

ぼろぼろで短かった爪も

少し綺麗にかける文字も

全部先輩が価値を見出してくれた

だからすきだったのに…

　生徒会室にいると自然と思い出す

部室に向かうと明らかに怪しい人影

本当に馬鹿らしい

微かにドアのあいた部室から 音を盗みきく

その曲って昔僕と作ったやつだよね

あの時僕が聴いてくれたから

　恋人に曲送るのはいいかなとか 言ってたくせに

僕は先輩のために作った楽譜の裏に 殴り書きでやめますと書いた

そうやったら橙先輩の顔も見ずに走った

先輩、ぼくなんの価値もなくなりました

さっき汚い字書いちゃいました

楽譜ももう捨てました

いろんな場所うろうろして

橙先輩からは連絡くるのに

先輩は連絡くれなくて

うざいなって思ってたら 自然と海に来てた

先輩と遊んだところ

あの日近くの楽器屋で ギターを買ったけどチューナーがなくて

そしたら海に捨てられた 瓶を使ってボトルネック奏方を 教えてくれたね

　全部覚えてるんだよ

あの日は2人でサボったから 全然人はいなかったけど

今日は土曜だから人たくさんいるよ

　先輩が思い出を 彼女と更新していくように

　僕も全部変えるんだよ

前より爪が伸びた指で弦を抑えて

ピックで弾く

チューニングしてないから コードを弾いても音が変

だから少し真似するね

僕はそこらへんに 捨てられた瓶を手に取る

まだ上手に弾けないから

大きな声で歌った

この曲覚えてるかな

あの日弾いてくれたんだよ

歌詞は後から作ったよね

　自然と周りに人が集まってくる

曲が終わると自然と拍手が起こって

あー、人に認められるって こんなに幸せなんだ

あの日先輩が教えてくれたよね

あー、先輩だ

彼女はどうしたんだろう

もう誤魔化したくない

そうやって首に爪をつきたてる

先輩が黙ってる

静かな沈黙を破ったのは 携帯の着信音

先輩が画面を見て顔を顰める

あー、ようやくケリがつく

先輩が僕に背を向けて 携帯を耳元に当てる

やっぱそうだよね

知ってたよ

僕は瓶をギターに当てて割る

そうして瓶のかけらで首を切った

先輩は苦しめばいいよ

どっちも選べないままずっと1人で