僕の帰る場所

桃赤 青黄

僕の帰る場所

春休みのある日。

僕は何だか眠れなくて

暖かい物でも飲もうと

リビングのドアを開け....

そこには

ソファにママを押し倒しているパパが

.......

すぅ〜〜〜、

ここは見なかった事にして

さっさと立ち去ろう。

少し開けてしまったリビングの

ドアを閉め後ずさりをしようとしたら

何かが足にあたって

ドテンと派手に尻もちをついてしまった

そして途端に止むリビングでの

ママとパパの会話。

あぁ....これはやったかもしれない

とりあえず何につまづいたのか

確認しようと暗闇の中に

座ったまま手探りで両手を伸ばすと

それは昼間橙が遊んでいた積み木で。

なんでこんなところに....

今更嘆いても遅い。

するとゆっくり目の前の扉が開き

ママが顔をのぞかせた。

そして

僕の顔を見るなり顔を真っ赤にする

「暑いなぁ〜//」

なんて自身の顔を手を仰いで

何とか誤魔化そうとするママ。

するとパパが後ろからひょこっと現れて

ニヤニヤしながらママをバックハグした

そうだ

僕は何も悪くないじゃないか

踏ん張って何とか立ち上がり

ビシッと2人を指さして口を開く

へなへなと座り込んで

頭を抱えるママに

僕は邪魔してごめんねと

心の中で謝った。

ママは羞恥心を紛らわすためか

僕をリビングに入れてくれ

パパと3人で暖かい紅茶を飲みながら

分厚い何冊ものアルバムを開いた

ママの指さした写真には

僕が3歳くらいの

ご飯のスプーンを握りしめながら

寝落ちしているところだった

僕が口を尖らすと

ママはえぇ、と不満そうに

アルバムのページを捲る

そこには

旅行に行った時の写真

小学校の入学式で

僕が転んでパパが慌てて慰めている写真

橙が生まれた時の写真

ママの誕生日の写真

他にも沢山の思い出が

ちゃんと写真におさめられていた

写真の中の僕は

感情豊かだが

ほとんどが満面の笑みで

ニコニコと笑っていた

知らなかった

こんなに

こんなに

大切にされている事

愛されている事

微笑んで

アルバムを見ているパパとママに

何だか泣きそうになって

僕は俯いた

今言うのは

とても照れくさいけれど

不思議そうに顔を上げて

こちらを見るパパとママ。

僕の言葉に驚いたのか

2人は顔を見合せた

そしてふわりとママに抱きしめられて

パパに頭を撫でられる。

手で顔を覆って泣き始めたパパに

ママは苦笑いして背中をさすった

その光景が可笑しくて

僕は思わず笑ってしまう。

幸せだな

なんて

幸せなんだろう

美人で優しいママがいて

かっこいい？パパがいて

可愛い弟の橙がいて

頼りになる彼氏の青ちゃんがいて

こんな

奇跡みたいな

あったかくて優しい

帰る場所が

僕にはあるんだ。

新しい高校の制服を身にまとい

鏡の前で

くるりと一回転する。

ついでに両手の人差し指で

笑顔を作ってみる。

鏡の中の自分は

少し緊張していて

思わず苦笑い。

鞄にはママとパパから貰った

キーホルダーをつけて。

パパの呼ぶ声に

僕は少しだけ新しい世界に

1歩足を踏み出した。

入学式が終わった後

俺と桃ちゃんは

満開の桜の下で写真を撮る

息子達を

遠くから眺めていた。

ふと門のところを見ると

かつての彼が

腕を組んで立っているようで

俺はクスリと笑みをこぼした。

隣にいた彼が

俺の顔を覗き込んで

自身の手を俺の手と絡める

俺がそう言うと

桃ちゃんは少し前を向いて

目を細めた。

優しく俺を見て

そう聞き返してくれる彼が

とてつもなく愛おしくて。

冗談っぽく笑って微笑むと

絡められた手が

さらにぎゅっと握られた

そして桃ちゃんの綺麗な瞳が

少しだけ

ほんの少しだけ

潤んだ気がした。

この先

どんな困難が待ち受けていようと

今隣にいる君がいてくれれば

なんの確証もないけど

きっと

大丈夫な気がするんだ。

ね、

そうでしょう？

学校の帰り道。

青ちゃんと別れてから

家の前にたどり着く

僕の

大切な

帰る場所。

少し深呼吸をして

思いっきりドアを開ければ

「「「おかえりーー！！」｣」

大好きな僕の家族の

声が聞こえた。

ℯ𝓃𝒹

꙳✴︎⧾·⬞⸋⸰⸊SpecialThanks꙳✴︎⧾·⬞⸋⸰⸊ コメント、いいねを沢山くださった方々 そして ここまで飽きずに読んでくださった 皆様！！ 本当にありがとうございました！！ 今回家族をテーマに 書かせて頂いた訳なのですが ''家族''といっても 自分が大切にしたいと思った相手を 自分の事を愛してくれる相手を 大切にしていって欲しい そんな思いを込めました！ そんな相手がいる事は 奇跡みたいな事なんですよね笑 君の笑顔が 1つでも増えますよーに！！ これからも応援よろしくお願いします！