僕はいったい何が起こっているのかも、 この現状が把握できなくて、 一人立ち尽くしていた。
JUNGKOOK
僕の家に入って、 テヒョニヒョンと2人でみんなの帰りを待つことになった。
ソファーに座るテヒョニヒョンの表情は、 青ざめている。
それでも、 テヒョニヒョンは必死に笑顔を作って僕の頭を撫でた。
V
V
大丈夫…?
…うん、 テヒョニヒョンがそう言うなら、 間違いない。
笑顔で頷いた時、 家のインターホンが鳴る。
二人同時に玄関をみて、 鍵を開けるため駆け寄った。
ガチャっと、 音を立てて開かれる扉。
すると、 その先にいたのは、 テヒョニヒョンのパパだった。
テヒョンの父
テヒョンの父
テヒョニヒョン…のパパ?
テヒョンの父
テヒョンの父
走ってきたのだろうか、 汗を垂らして、 顔をしかめているテヒョニヒョンのパパ。
僕の問いかけには答えず、 「行こう…」と、 僕とテヒョニヒョンの手を取った。
テヒョニヒョンのお父さんに手を引かれているテヒョニヒョンの顔を見れば、 何かを察したのか、 先程よりも顔が真っ青。
…みんな、 どうしたの?
みんな揃って青い顔して… 何をそんなに、 焦っているの?
慌てて…るの?
僕だけが…ことの重大さに、 気づいていないの?
僕とテヒョニヒョンを乗せた車が、 町の私立病院で止まった。
僕とテヒョニヒョンの手を引いて、 病院の中へ入るテヒョニヒョンのパパ。
僕はなんだかわからなくて、 けれど一つだけ、 わかったことがあった。
何か、 とんでもなく悪いことが起きたのだと。
テヒョニヒョンは先程から一言も話さず、 ずっと下を向いているし、 テヒョニヒョンのパパの僕達を握っている手は、 異常なほど汗をかいている。
とある病室の前で、 テヒョニヒョンパパが立ち止まった。
すると、 病室の前には、 マスクをした先生らしき人が。
病院の先生
先生の質問に、 テヒョニヒョンのパパは 「娘さんです」と言った。
すると先生らしき人は何も言わずに頭をゆっくりと下げ、 病室の扉を開ける。
テヒョニヒョンのパパが、 僕に入りなさいと言うように頷いたので、 僕は中に入った。
そこには、 顔の上に白い布を置いて、 ベッドに寝ている誰かと、 おばあちゃんの姿があった。
グクのおばあちゃん
JUNGKOOK
どうして… おばあちゃんが?
それ、に…
JUNGKOOK
僕は、 ベッドに指さしてそう聞いた。
おばあちゃんはまさに顔面蒼白(がんめんそうはく)と言った表情で、 目を手で隠すように覆う。
そして、 おばあちゃんの口から飛び出た言葉に、 僕は頭の中が真っ白になった。
グクのおばあちゃん
…え?
JUNGKOOK
おばあちゃん、 何言ってるの?
白い布のせいで、 顔が見えない。
けれどもよく見ると、 髪型、 そして耳についているピアスは、 お母さんのものだった。
そう、 ずっと、 付けていたもの。
JUNGKOOK
JUNGKOOK
理解が、 できなかった。
どうして? お母さんが?
ここ布は? どうして動かないの?
お母さん…? どうしてこんなところで寝ているの?
浮かび上がった1つの説を、 頭が拒絶する。
けれど、 体は理解していたのだろう。
僕の目からは、 ポロポロと涙が溢れ出していた。
テヒョンの父
テヒョンの父
病室の奥で、 テヒョニヒョンのパパがそう言った。
JUNGKOOK
テヒョンの父
そうだ。
さっき、 お母さんは2人を連れ戻してくると言った。
それで… 慌てて、 走っていった。
その、 先で… 事故にあったの…?
JUNGKOOK
認めたくなかった。
けれど、 この場にあるすべてが何が起こったのかを物語っていた。
すると、 さっきの僕の質問に、 誰もが口を閉ざす。
JUNGKOOK
こんな時に…。
お父さんは、 どこへ行ってしまったの?
テヒョンの父
テヒョニヒョンのママと… おでかけ、 したの?
JUNGKOOK
違う。
おでかけなんて、 そんな一時的な外出ではないんだろう。
連絡がつかないんだなんて、 遠くに行ってしまったにきまってる。
そうだ、 僕はどうして、 目をそらしていたんだろう。
お父さんは、 出ていってしまったんだ。
テヒョニヒョンのママと。
僕と、 お母さんを捨てて。
やっとわかった途端、 体に力が入らなくなって、 僕はその場に崩れ落ちた。
JUNGKOOK
どう、しよう…。
JUNGKOOK
V
僕の肩に、 置かれた手。
僕の名も呼ぶテヒョニヒョンの声も、 震えていた。
JUNGKOOK
JUNGKOOK
僕、 1人になっちゃった。
V
V
JUNGKOOK
V
テヒョニヒョンがそう言った瞬間、 僕はギュッとテヒョニヒョンに強く抱きしめられた。
…背中が湿ってる…?
テヒョニヒョン、 泣いてるんですか…?
そうだ。
テヒョニヒョンだって、 お母さんがいなくなったんだ。
…辛いに、 決まってる。
泣きたいに、 決まってる。
JUNGKOOK
JUNGKOOK
悪いのは、 きっと僕なんだ。
僕が悪い子だから、 こんなことになってしまった。
V
お父さんとお母さんは、 毎日のように激しく怒鳴りあっていた。
見たことがある。
お母さんがいない時、 お父さんがリビングで何かを漁っていたのを。
そして、 お父さんの部屋に、 いくつもの段ボールがあるのも見た。
テヒョニヒョンのママと、 お父さんがチューしているのも見た。
…そうだ。
全部全部、 僕が悪いんだ。
全部知っていたのに、 気づいていたのに。
確信が得られないまま、 知らないフリをして。
お父さんを引き止めることも、 できなかった。
僕が、 いい子だったら…お父さんだって、 出ていかなかったはずだ。
僕の情けない泣き声が、 病室に響く。
誰も何も口にしなくて、 ただただ声上げて泣いた。
V
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この言葉に、 いったいどれだけ僕が救われたか…。
テヒョニヒョンは、 きっと知らないだろう。
僕を抱きしめるテヒョニヒョンの手を、 僕は必死に… 必死に、 握った。
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V
V
バンドのステージが終わって、 テヒョニヒョンは真っ先に僕のもとへ駆け寄ってきてくれた。
キラキラと眩しい笑顔を浮かべるテヒョニヒョンに、 僕も同じように笑顔を向ける。
JUNGKOOK
JUNGKOOK
V
V
照れくさそうに、 テヒョニヒョンが笑う。
今日は、 テヒョニヒョンの中学の学園祭が開かれていた。
6月30日…。
学園祭にしては少し早い気もする。
テヒョニヒョンは、 その出し物で演奏をしていたのだ。
軽音部で、 ギターとボーカルをしているテヒョニヒョン。
その姿はとても輝いていてかっこよくて、 僕はドキドキが止まらなかった。
V
JUNGKOOK
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V
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そんなことをサラッと言うテヒョニヒョンに、 顔に熱が集まる。
中学2年生になったテヒョニヒョンは、 それはもうかっこいい男の子になり、 小学6年生の僕とでは、 比べ物にならないほど大人に見える。
早く来年にならないかな… そしたら、 テヒョニヒョンと同じ中学に通えるのに。
やっと、 一緒に通えるのに。
僕は、 中学生と小学生で離れた期間が寂しすぎて、 たまらなかった。
テヒョニヒョンは部活に入って、 僕達が会う時間も減った。
コメント
18件
6月30日は、私の誕生日だからすごい嬉しかったわ
楽しまにしときます🤩♡♡
今回も最高っした!✨ 体調管理しっかりして無理しないで頑張って下さい 応援してます。