TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
メリーさんからの電話

一覧ページ

「メリーさんからの電話」のメインビジュアル

メリーさんからの電話

1 - メリーさんからの電話

♥

37

2021年07月26日

シェアするシェアする
報告する

島田

やれやれ。年をとると、あちこちが痛むわい

定年まぢかの島田は、ため息まじりにつぶやいた。持病の腰痛に加え、右足のひざにも変な痛みが走ったのだ…

その時、遠くで 雷 の音が聞こえた。

島田

嵐が来たか……

島田は立て付けの悪い気の扉を、ガタガタと言わせて開き、地下の宿直室を出て一階に上がった。

洞窟のような暗い廊下がまっすぐ伸び、窓の外では大きな銀杏の木が風にゆさゆさと揺れている。

誰もいない深夜の運動場には、雨が激しく叩きつけていた。稲妻が光り、島田の猫背の影が壁にくっきりと写し出された。

ギシギシと木の床をきしませて、廊下を歩いていくと、壁に飾ってある生徒たちの絵が光りに照らされて、不気味に輝いて見えた…

なぜなぜ子供たちは夜の学校を恐れるのだろうか… ふと、島田はそんなことを考えた。

一つは昼間、あれほどにぎやかだったのが、夜になるとまったくの無人となり、その差が激しすぎるからだ。昼間のにぎわいが、壁や天井にしみ込んでいる。それが夜になり、何かの気配となってあたりに漂っている。

そしてもう一つの理由は、音楽室、理科室、美術室、保健室などの一種独特な空間のせいである。しかもその空間の中には、人体模型やホルマリンづけの標本、古びたピアノ、石膏でできた人の顔などがある。

想像力ゆたかな子供達はそこに大人では見えないものを見、聞き、感じ、さまざまな怖い話を作り出すのだ。

そんな事を考えていると、ふいに、誰かの声が、廊下の奥から聞こえたような気がした…

島田

気のせいだな……

雨の音がますます激しくなり、校舎の中に反響して、ゴオーゴオーと聞こえている。職員室にたどりつき、電気をつけると,なんとなくほっとした。その時、

リリーンリリーン☎️

目の前の黒電話が突然大きな音でなりだした。島田は腰を抜かすほどにおどろき、おもわず机にしがみついた。

リリーンリリーン☎️

島田

((こんな夜ふけにいったい誰だ。

島田は受話器に手を伸ばした。その瞬間、窓の外がオレンジ色に輝き、同時に生木を裂くようなバリバリという強烈な雷鳴がとどろいた。雨音が激しくなり、煌が風の海に没していくような錯覚が覚える。

心臓がちぢみ上がって受話器を落としそうになり、あわてて耳元に持っていった。

島田

はい、銀杏ヶ丘小学校ですか

島田の声はうわずっていた。しかし、電話の向こうからは声がしなかった。ただ何か恐ろしい気配がした。受話器の中に吸い込まれていきそうだ。

島田

もしもし!

たまらず、島田は叫んだ。すると、

メリー

わたし、メリーさん

女の子の可愛らしい声がかすかに聞こえた。

島田

え?どなた

メリー

わたし、メリーさん

今度ははっきりと聞こえた。何だか笑っているようだ。

島田

はあ?どちらにおかけでしょうが

メリー

今正門の前にいるの

島田

もしもし、もしもし

だが電話は切れていた。島田はぶつぶつとつぶやき、受話器を置いた 。

そして、また、

リリーンリリーン☎️

今度は隣の席の電話が鳴り響いた。島田はその電話に吸い寄せれるように飛びついた。

島田

もしもし!

メリー

わたし、メリーさん

島田

……………

メリー

今、花壇の前にいるの

そこで電話は切れた。 花壇の前……。 実際にかけよりカーテンのすきまから花壇の方に目をやったが、誰もいなかった。 花壇の中央に立てられた二宮金次郎の銅像が、稲妻の光を浴びて気味悪く輝いていた。

少し雨の勢いが弱まっている。 誰かのいたずら電話だろうと考えていると、気分も落ち着いた。多分、うちの生徒だ。何年生だろう。まさか、クラスの子では……。 すると、

リリーンリリーン☎️

すぐ脇の電話がなった。島田は腹をたてながら受話器を取った。

島田

もしもし

メリー

わたし、メリーさん

島田

いったい誰だね

メリー

わたし、メリーさん。今職員室の前にいるの

ぶつり,と電話は切れた。

島田

……………

島田はゆっくりと職員室の開いた扉を振り返った。またもや大きな雷の音が鳴り,一瞬蛍光灯のあかりが切れ,すぐにパッとついた。

悲鳴をあげそうになるのをこらえ、おそるおそる廊下に首を出してのぞいてみた。 そして、

リリーンリリーン☎️

今度は廊下の奥にからけたましい電話の音が聞こえてきた。玄関協の公衆電話だ。 ギシギシと床をきしませながら小走りでかけていった。

島田

もしもし!

島田は怒った声で受話器を取った。

メリー

わたし、メリーさん

島田

いい加減にしろ!

メリー

わたし、メリーさん

島田

メリーさんだか、なんだか知らないが、こっちは忙しいんだ!

メリー

わたし、メリーさんなの

島田

おい!

メリー

今、あなたの後ろにいるわ

島田

………………

島田は思わず黙りこんだ。全身に鳥肌が立つ受話器をちぎった手が震えた。 そのままゆっくりゆっくりと首を後ろにねじっていく。何かいる。窓の外が青白く輝き、窓が割れるほどの大きな雷がなった。

島田は焦点が合わなくなった目を背後に向けた。何かがいる。

その時、学校中の電話がいっせいになりだした。 島田は悲鳴をあげ、受話器を落とした。 そして彼が見たものは……。

この作品はいかがでしたか?

37

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚