⚠紫赤
nanamori
ざーさーと地面に大粒の雨が打ち付けられる。
傘を家に忘れてしまった俺に対して、この状況は最悪だった。
スマホに入れていた天気予報のアプリを開くと、傘のマークがばっちり表示されている。
その天気予報によると夜の23時頃まで降り続けるらしい。
今の時間は19時。流石に4時間も学校で雨宿りなんてしていられない。
なんでこんな時間まで学校に居たのかって?
授業が終わって帰ろうとしていたところ、学級担任の先生に声をかけられたのだ。
理科室の道具を片付けるのを手伝ってくれ、という内容で、特に用事が無かった俺はそれをすんなりと受け入れた。
まさかこんなに時間がかかるとは思っていなかったのだけど。
nanamori
服やら髪やらは濡れてしまうが仕方ない。
天気予報を確認せずに忘れてきてしまった自分が悪いのだから。
それに、家では愛しい兄弟達が待ってくれている。
莉犬くんが作ってくれる夕飯も楽しみだ。今日はお寿司かな。ステーキかな。なんでも嬉しいや。
そんなことを考えながら、俺は雨の中走り出した。
アスファルトの道路を走るたび、ぴちゃりと水たまりが跳ねる音がした。
きっと今着ている俺のジャージには泥が沢山付いてしまっているのだろう。
早く帰って洗わなきゃ。
nanamori
濡れて邪魔な前髪を右手でかきあげる。
視界が晴れて遠くがよく見えるようになった。
じっと目を細めてそこを見ると、1つ先の電柱の側に、赤く揺れる何かが見える。
俺と同じで傘を指さず、ずぶ濡れになっている人のようだ。
珍しい赤色の髪には見覚えがあった。
もしかして…と半信半疑で彼に近づき、とんとんと肩を叩く。
nanamori
ri−nu
やっぱりそうだった。びんご。
突然現れた俺にびっくりしたのか、特徴的な紫と黄色の瞳が大きく見開かれた。
夕飯の買い物にでも出ていたのだろうか。
手に持っているエコバッグがびしょびしょに濡れている。
何も入っていないあたり、途中で雨が降ってきて諦めて帰っている途中なのだろう。
ri−nu
nanamori
nanamori
ri−nu
そう言いながら身を震わせる莉犬くん。
俺は長袖長ズボンなのに対して莉犬くんはTシャツに短パンだ。
寒いに決まってる。
今すぐにでも温めてやりたかったが、ハンカチで肌を拭いてやるくらいしかできなかった。
ただ雨が激しく、またすぐ濡れてしまう。
これじゃあキリがない。早く屋根のある場所に入らなければ。
ri−nu
拭いたことに対するお礼を言ってくる莉犬くん。
にこりとした笑みが可愛くて癒やされる。天使だ。
一日の疲れが一瞬で吹き飛んだ気がする。
nanamori
冷えてしまっている小さな手を握る。
成長期が来ないーっ!なんて騒いで毎日のように俺と手を比べていた頃と全然変わらない大きさだ。
手やら身長やら小さいのは男としてはマイナス要素なのかもしれないけど、ぶっちゃけ莉犬くんはそこも可愛いと思う。
なんて本人の前で言ったら拗ねてしまうのだろうけど。
nanamori
少しも弱まる様子を見せない雨が身体にぽつぽつと降っていた。
莉犬くんの手を握ってまた走り出す。
昔から雨は嫌いだ。
雨のせいで家族で楽しみにしてた遊園地に行けなくなったり、じめじめしているから洗濯物がなかなか乾かなかったり。
ことごとく雨に笑顔を奪われている気がする。 今日もこんな風に濡れてしまうし。
隣の莉犬くんも、寒そうに時々くしゃみをしている。
早くお風呂に入らせないと。
はぁ…と口からため息が零れた。
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