俺の親は狂っていた
毎日家に違う男が来ていた
そんなんだから俺の事は全部後回し
飯代だけ渡して後は最低限の生活ができるだけの事しかしなかった
母との楽しかった思い出は一つもない
俺は次第に家に帰らなくなった
夜の街をほっつき回る
喧嘩をする事も少なくなかった
でもその喧嘩は一方的な物ではなかった
あっきぃ
街の治安を守るための喧嘩だった
傷だらけになりながら喧嘩をして人を助けた
そうしたら俺の中の何かが満たされた
辛くても痛くても絶対に倒れなかった
でもそんな俺の人助けは薄っぺらな物だった
「なぁ聞いたか?」
「えー?何が?」
「アイツ、あの陰キャがまた喧嘩したんだってよ」
「また?」
「がち」
「不良とかダッサ」
「それな?」
「やっぱ関わらない方がいいっしょ」
「な」
俺が喧嘩を吹っかけてしていると勘違いされた
この時俺はわかった
人助けなんてただの俺の自己満足なんだって
人は一番簡単に完結した事しか理解しようとしない
そのせいで俺は不良の烙印を押された
仲の良かった友達もみんな去っていった
それから俺は不良としての道を歩んだ
ストレスのあまり自分から喧嘩に行くことも増えた
その度に
「また喧嘩だってよ」
「よく飽きねぇよな」
「黒歴史製造中で草」
だからなんだよ
お前らが俺を狂わせた
喧嘩に行く気力もなくなんとなく昔のアルバムを開く
するとそこには
俺の夢:あいどるになる!
小さい頃のカタカナすら書けない時の俺
そんな無邪気だった俺が俺を動かした
スマホを開く
前スクランブル交差点の広告に映っていた事務所の名前を検索にかける
そこには
新人アイドル大募集!
と書かれていた
生きていく希望が欲しくて応募してみる
名前、税別、短所、長所
色んな事を記入した
そして最後に
貴方がアイドルになろうと思ったきっかけは?
と書かれていた
あっきぃ
何も思いつかない
質問のはじをみると
【任意】
と書かれていた
なのでそこを空白にし俺は応募した