左源次
お姉さん、別嬪さんだねぇ
絢菊
あら、ありがとう
左源次
こんな時間にどうかしたのかい?
絢菊
初めての場所でちょっと迷ったみたい
左源次
ほぅ、お姉さんここいらの人じゃないん
絢菊
ええ、ちょっと用があってね
左源次
それはまずいなぁ。ここいら最近物騒でよ
絢菊
そうなんですか?
左源次
お姉さんみたいな若い子が続けて殺される事件があってよぉ
絢菊
それは怖いわね
左源次
よかったら、おいらが安全な所まで連れてってやるよ。どうだい?
絢菊
そうね〜。それじゃあおねがいできるかしら?
左源次
おう、任せとけぃ
絢菊は親切に声をかけてくれた町人風の小柄な男の後をついて行く
左源次
それじゃあ、大通りへの近道はこっちだ
絢菊
助かったわ〜。だけど若い子が襲われるなんて物騒ね
左源次
ああ、そうだねぇ。本当に物騒だ。3人とも気量良しの可愛い子だったなぁ
絢菊
あら、女の子たちと顔見知りだったの?
左源次
ああ、そりゃあよく知ってる。誰よりもねぇ
絢菊
そうなの?
左源次
ああ、3人とも本当に可愛いかったがお姉さんはもっといいねぇ、ひひっ
絢菊
そう。あまり付き合わせても悪いし、後はひとりで大丈夫よ
左源次
いやぁ、ここまで付き合ったんだ。遠慮はいらねえよぉ
絢菊
いえ、本当にここまでで大丈夫だから
左源次
つれねえなぁ。きっちり今際の際まで付き合わせてもらうぜぇ
絢菊
え? それって
左源次
ついてきたお姉さんが悪いんだぜぇ
絢菊
なにを……
左源次
逢魔時に出歩いちゃダメだぜぇ
そう言うと男は下卑た笑いを顔に浮かべ、懐中から短刀を取り出し、いきなり絢菊に向け振るってきた
絢菊
なによ。突然
絢菊は短刀の攻撃をひらりと避けると、どこかからか取り出した銃を男に放つ
左源次
痛えなぁ。お姉さん、そりゃあねえだろう
男の頭は銃弾により大きく抉れているが、全く気にした様子もなく、まるで大きな鬼のような姿へと変化していく。
鬼十郎
どうやら、あたりか。絢菊下がってろ
絢菊
はい、鬼十郎様
左源次
なんだお前。その姿お仲間かよ
鬼十郎
お前などと同じにしてくれるなよ
左源次
あ〜? 調子に乗ってると同じ妖魔だろうが殺すぞ?
鬼が喋り終えた瞬間鬼十郎が腰の刀を抜き一閃すると鬼の右腕の肘から先が飛んだ
左源次
ぎゃああああ〜! 痛え〜!!
鬼十郎
五月蝿いやつだな
左源次
てめえ、俺を阿弥羅様の1番頭、左源次と知っての狼藉か!?
鬼十郎
今度は本当に当たりだったようだな。左源次とやら阿弥羅はどこにいる
左源次
あ〜!? お前如きが阿弥羅様になんの用だ!
鬼十郎
5年前、猿田村を襲ったのは阿弥羅だろう
左源次
猿田村〜?
鬼十郎
ああ、日向のはずれにある猿田村だ
阿弥羅
どうやらこの国で暴れすぎたようだ。次は日向の外れの村にしようか
左源次
ああ、日向のはずれの村か。思い出した
鬼十郎
お前もいたのか
左源次
あの村の人間の肝をあてに酒盛りしたが、女の肝は格別だったぞ
左源次
ぎゃあああああああああ〜!
鬼十郎
村の人の肝をあてに酒盛りだ!?
左源次
くっ、なにしやがる。お前も妖魔だろうが! 正気か!?
鬼十郎
俺はお前らを殺すためにこの身は妖魔に成り果てたが、心まで畜生に成り下がったつもりはない
左源次
俺たちを殺すために妖魔に!? そんな馬鹿な!
鬼十郎
阿弥羅はどこにいる
左源次
くそっ! お前如きが阿弥羅様の相手になるか〜!!
左源次は鬼十郎へと迫り、大きく口を開きその牙を突き立てようとする
左源次
あ…‥が……
鬼十郎
お前は絶対に許さん。村のみんな、鈴蘭の仇。一片たりとも残さん
首を落とされた左舷寺だが、先に落とされた右腕が再生を始めている
鬼十郎
畜生だけあってしぶといな。先に地獄で待っていろ。すぐに阿弥羅も送ってやる
左源次
く、くそっ
鬼十郎
紅月流滅殺幻夢閃
鬼十郎
鬼十郎の放った剣尖が無数にぶれ一瞬にして左舷寺の身体を切り刻んだ
左源次
阿弥羅様……
鬼十郎
絢菊すまない。せっかく阿弥羅に繋がる情報源だったが、我慢出来なかった
絢菊
わたしも想いは鬼十郎様と一緒です。必ず阿弥羅を地獄に
鬼十郎
ああそうだな。たとえ魂を妖魔に売り渡そうともあいつだけは絶対に殺す!
絢菊
はい、姉さんとみんなのために