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僕は光じゃない。照らす側じゃなくて、ただの影。 でも誰かの光に照らされるのは案外悪くない。 僕はずっと「主役」になれない子供だった。 クラスのリーダーにもなれない。 学芸会ではいつも脇役。ポジションも真ん中からズレた場所。 時は速かったけど誰かの応援を受けることは少なかった。 そんな僕が初めて認められたのは「動き」だった。 部活のダンス発表会。 みんなが一瞬止まった振りの後、自分一人が流れるように動いたその時。 今の子すごく綺麗に動いたね。 観客がざわめいた。 韓国に渡ったのはただの衝動。 「才能あるよ」なんて褒められて調子にのったまま気づいたら飛行機に乗っていた。 でも現実は甘くなんかない。 練習生のダンスルームには、上がいた。 表現力、キレ、感情の乗せ方。全てにおいて尖っていた。 「影のようなダンスだな」 それはある日トレーナーに言われた一言。 また主役になれないのか。 まぁそれでもいい。 そう思った。 ダンスは光を浴びるためのものだと思っていた。 でもアストレインでの活動を通して、少しずつ考えが変わっていった。 そあとのユニゾンを踊った時。 いぇじゅんひょんと振りを合わせた時。 誰かと一緒に動く度、 僕の影が誰かの光を引き立てていることに気づく。 ステージ上で自分が光そのものになれなくても。 光をきちんと受け止めていることはできるんだ。
AO
あおひょんが言ったその一言が、僕の中で小さく灯る。 光じゃないけど深い。 魅せると言うより引き込むダンス。 誰かの視線を集めるタイプじゃなくても、 誰かの心は動かすことが出来る。 ステージの上、曲が流れ始める瞬間。 ほんの少しうつむいたまま、静かに立つ。 でも1歩歩み出すと影が動き出す。 照明を受けてでてきた影が、誰よりも存在感を放つ。 それがひなたという存在の形。 主役じゃなくていい。 でもステージのどこかでいることはやっぱり嬉しい。 僕は今日も誰かの光に照らされながら踊る。 その姿が誰かの記憶に、そっと影を落とすように。