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僕らは、愛されたかっただけなんだ。
幼い頃に、神様に向かってそう言った。
『普通に』憧れていただけなんだ。
幼い頃に、何かに向かってそう嘆いた。
こんなことをしていたのに
心に傷があったことを知ったのは、最近だった。
前を向きたいと誓う夜
それを邪魔するのは、いつまでも『あの頃』だ。
怒鳴り声と、ガラス瓶の割れる音。
頬に走る痛みと、鈍くなっていく痛覚。
涙と、煙草の匂いと、怒鳴り声と
フラッシュバックして、僕の邪魔をする。
『……………初めまして』
『僕はアダルトチルドレンです』
もしも、と何度でも思った。
もしも僕が愛されたら。
きっと友達ができた。
『ざまぁwwww』
『調子に乗ってんじゃねーよ、ブス!』
もしも僕が愛されたら。
きっと優しくなれた。
『クソがッ…、!クソが、クソ野郎共がッッ、!』
5畳の畳の部屋に寝転がる。
目を塞ぎ、明かりを遮る。
頭に浮かぶもしもを、『そんなこと考えたってもう今更じゃないか』と消す。
僕らはもう、狂っていても生きていかなくちゃいけなかった。
剥き出しの丸電球に照らされる、なにもつけられていない細い指。
僕らは今未経験の愛で、誰かを愛さなければならない。
結局は、愛されたかっただけだった。
繕った笑顔も慣れてきた。
心の傷を見ないふりをできて、大人になれたよ。
『だからその手でそっと撫でて欲しい。』
一生頭に置かれることのなかった、温度のある大きな手。
そんな頃を思い出す。
いっその事笑い飛ばして欲しい。
『なんでぼくら、このままうまれてきちゃったんだろう。』
もしも僕が愛されたら。
撫でられるのはは当たり前だったんだ。
もしも僕が愛されたら。
ちゃんと挨拶もできていた。
もしも僕が愛されたら。
ちゃんと笑顔になれていたんだ。
もしも僕が
もしも僕が愛されたら。
もしも僕も愛されたら。
どうやって返せばいいだろう。
教えて、パパ
教えて、ママ
教えて、愛をくれなかった人たちよ。
もしも僕が愛されたら。
教えて欲しい、と思うはなかった。
もしもばかりで辛くなっても。
今じゃそれなりに生きていける。
雑踏に紛れていれば、どこにでも居るような青年に腐った。
だから僕も凡人、ってことで
どこにでもいるやつってことで。
そういうことにしてくれよ。
そういうことにしたいのに
単純に殴られた傷が消えなくて。
消えなくて。
消えなくて。
消えなくて。
消えなくて。
消えなくて。
消えなくて。
消えない愛とやらで、何もかも抱きしめて欲しい。
そう思って手を差し出しても、何も返ってこない。
もしも僕が愛されたら。
そんなことは今更だった。
僕らは今、全部全部忘れやしない傷を抱えて生きていかなくちゃいけない。
愛されているやつがずるいさ。
友達ができて
周りに優しくできて
挨拶もできて
ちゃんと笑顔になれて。
そんなやつらがずるい。
ずるくて辛くて。
ずるくて辛いけど
僕らは今傷跡と一緒に強く生きていかなくちゃいけない。