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テラーノベル(Teller Novel)
LINE936

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2023年07月28日

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シシオ

な~オトメ、また金が無くなっちゃったんだけど。

シシオ

今月のスマホ代が払えないから金貸してくれない?

シシオ

1万円な。

オトメ

また?今月はこれで3回目だよ。

オトメ

なんでいつもそんなにお金が無いの?

シシオ

しょうがないじゃん。今月はバイトのシフトもなかなか入れないし

シシオ

バンド活動にも金が掛かるから、すぐ金欠になっちまうんだよ。

オトメ

私だって、まだ学生だからお金はそんなに無いわよ。

シシオ

オトメは実家暮らしだから、金は持っているだろ?

シシオ

金が無いなら、親から貰って来いよ。

オトメ

ダメよ。親にそんな事頼めないわ。

オトメ

っていうか、彼氏にお金を貸してるなんて知られたら、

オトメ

絶対に怒られるわ。

シシオ

はあ?なんで?

シシオ

金を持ってるなら貸してくれるのが当然だろ。

シシオ

オトメも親のスネをかじってる身で、出し惜しみするなよ。

オトメ

貸すのが当然って…本気でそう思っているの?

シシオ

世の中の常識だろ。ったく、これだから世間知らずの女はダメだな。

シシオ

俺みたいな将来売れるバンドマンの為に、金を出そうとは思わない訳?

オトメ

売れるかどうかは知らないけど、あんまり頻度が高いのはちょっとね。

オトメ

ウチの親も普通の会社員だもん。お金持ちなんかじゃないわよ。

シシオ

親がダメなら、お前が稼いだ金を俺によこせよ。

オトメ

え?私のバイト代をくれって事?

シシオ

そうだよ。

オトメ

私そんなに稼いでいないわよ。

シシオ

じゃあ、もっと働けよ。夜のバイトとかしてさ。

シシオ

お前、まだ若いんだから、キャバとかでも働けるだろう?

オトメ

ダメだって。20歳未満でそういう店で働くのは違法でしょ。

シシオ

いや、18歳を過ぎていれば問題ないって。

シシオ

つーか、年齢なんか適当にごまかせるだろう。

オトメ

え…。

シシオ

なんなら、俺が知り合いの店を紹介してやるよ。

シシオ

そこは日給もいいし、年齢とか細かい事も聞かれないから

シシオ

お前でも十分働けるよ。

オトメ

ヤダ。なんか怖い。

シシオ

なにビビってんだよ。俺の知り合いの店だって言っただろう。

シシオ

な、悪い様にはしないからさ。

オトメ

うーん。でも夜もバイトするとなると、親に何ていわれるか…。

オトメ

まだ門限とかもあるし、厳しいんだもん。

シシオ

あ~親が親がって…お前、いちいち親に聞かなきゃ何も決められないのかよ!

シシオ

18歳だろ?もう成人扱いじゃないか!

シシオ

なのに、その歳で親に逆らえないって、どんだけお嬢様なんだよ。

オトメ

酷い。そんな言い方しなくてもいいでしょう。

オトメ

まだ学生なんだから、親に心配をかけまいとするのが、そんなに悪い事?

シシオ

要領が悪すぎるって言ってんの。

シシオ

親のいう事なんか、反抗してナンボだろ。

オトメ

え~。ちょっと理解出来ない。

シシオ

おまえ、ほんと世間知らずだな。

シシオ

だんだんイライラしてきたわ。

オトメ

夜働いてまで彼氏に貢ぐのが当たり前なの?

シシオ

そりゃそうだろ。お前みたいな地味で平凡な女子大生と、

シシオ

俺みたいなイケメンバンドマンが付き合ってやってるんだぞ?

シシオ

こんなラッキーな事、人生に1度あるか無いかだぞ。

オトメ

そうかなぁ。

シシオ

そうだよ!だからお前ももっと頑張れよ。

シシオ

俺の将来の為に投資しろってば。

オトメ

投資ね。よく分かんない理屈だけど…。

シシオ

とにかく、今度その店を紹介するから、そのつもりでよろしく。

オトメ

はぁ。気乗りしないわね…。

~3日後~

シシオ

オトメ、この間のお店の件なんだけどさ。

シシオ

明日の夜7時に面接だから。必ず来いよな。

オトメ

ええ?ほんとに行くの?私が?

オトメ

夜働く用のドレスも持ってないのに、無理じゃない?

シシオ

大丈夫大丈夫。衣装は店で貸してくれるし、最初はメイクも

シシオ

店ご用達の美容院を紹介してくれるからさ。

シシオ

何も心配なく働けるって。

オトメ

でも、夜遅くまで働くんでしょう?

オトメ

学校にも通わないといけないし、そんな遅くまで働いたら

オトメ

家族に心配かけるから嫌だわ…。

シシオ

いつまでも甘ったれた事をいってんじゃねーよ!

シシオ

何度言ったら分かるんだよ。お前はもう成人なの!

シシオ

いちいち親の顔色を窺っていたら、金は稼げないだろ。

オトメ

だって、私はお金に困っているわけじゃないもん。

オトメ

シシオが金欠だからって、私が働かなきゃいけない意味が分からない。

シシオ

だ~か~ら~!未来あるイケメンバンドマンの俺に

シシオ

投資しろって言ってるだろ!何回も言わせるなよ。

オトメ

投資といっても。私に返す気ある?今までの借金。

オトメ

半年しか付き合ってないけど、すでに10万円は貸しているよ?

オトメ

それも殆ど私のバイト代で。

シシオ

もう、金の事ばかり言って、お前もめんどくせーな。

シシオ

だまって俺の紹介する店で働けばそれでいいんだよ!

オトメ

そんな。無理なものは無理よ。

オトメ

そんなにお金が必要なら、自分でもっと働いてよ。

オトメ

デート代も、出してくれたのは最初の一回目の時だけで

オトメ

あとは全部私が払っているじゃない。

オトメ

借金以外のデート代も合わせると、もっとお金を使ってるわよ。

シシオ

なんだよ、デート代も俺に返せとか言ってくるのか?

シシオ

お前、そんなセコイ女だったっけ。

オトメ

別に、デート代まで返せなんて言ってないわ。

オトメ

ただ、お金の事ばかりにうるさいのはシシオのほうだよね。

シシオ

だからなんだよ。

シシオ

店で働くのも嫌、借金も返せと?

オトメ

…そうよ。

シシオ

なら、俺達は別れるしかないな。

オトメ

え?そんな脅しみたいな事を言わないでよ。

オトメ

別れたいなんて一言も言ってないじゃん。

シシオ

じゃあ、俺の言う事を聞けよ。店で働くだろ?

オトメ

そんな…。

シシオ

明日、駅前で待ってるから。そのあと店で面接な。必ず来いよ!

オトメ

はぁ…。

~1時間後~

オトメ

お兄ちゃん、今お話しがあるんだけど、いい?

ウシオ

おお、オトメ。どうしたの。

オトメ

あのね、付き合ってる彼氏の事なんだけど…。

ウシオ

なんだ、トラブルでもあったのか?

オトメ

うん。トラブルというかね、別れた方が良いのかなって思って。

ウシオ

何があったの。というか、まだあのバンドマンと付き合ってたのか。

オトメ

そう。実は、お金を貸してるの。

ウシオ

何だって。いくら貸しているんだ。

オトメ

10万円よ。それにデート代も私がいつも払っているから、

オトメ

せっかくバイトしても、みんな使われちゃう感じなの。

ウシオ

そりゃぁ、すぐにでも分かれた方がいい!

ウシオ

じゃないと、もっと金をせびられるぞ。

オトメ

そう、その事なんだけど、もう金が出せないっていうのなら

オトメ

夜の店で働けって脅されてるの…。

ウシオ

なんだと!オトメに夜の店で働かせようっていうのか。

オトメ

うん。しかも接客系のお店らしくて。

ウシオ

ダメだ。絶対に別れろ!

ウシオ

そいつは紛れもないクズだ。お前の将来をメチャクチャにされるぞ。

オトメ

やっぱりそうだよね。

オトメ

私も別れた方がいいかなって思ったんだけど、貸した10万円はどうしよう。

オトメ

諦めた方がいいのかな。凄く悔しいんだけど…。

ウシオ

そうだなぁ。その男、バンドマンだと言ったっけ?

ウシオ

なんか曲とか持ってるのか?

オトメ

先月の誕生日に、自作の歌を歌ってくれたよ。

オトメ

ちょっと見てみる?

ウシオ

おう、見てみよっか。

オトメ

動画送信

オトメ

どう?見られた?

ウシオ

あ、ああ…見られたけど。

ウシオ

こ、これを誕生日にプレゼントされたのか?

ウシオ

なんか、シュールで笑えるんだがww

オトメ

でしょう?友達に見せたらめっちゃウケてたの。

オトメ

でも皆、誕生日のプレゼントが歌だけってのもオカシイって言ってた。

ウシオ

そりゃそうだ。

ウシオ

でもこの動画、もしかしたら使えるかも…。

オトメ

え?この歌が?そうとう音痴だと思うけど…。

ウシオ

まあ、歌はドヘタだけど、かなり面白い。

オトメ

だいぶ自己陶酔に入っちゃってるもんね。イテテって感じ?

オトメ

正直、こんな歌いらないって思っちゃったけど。

ウシオ

まあ、彼女の誕生日なら、奮発して良いレストランとか

ウシオ

彼女が欲しがるプレゼントとかを選ぶだろうよ。

オトメ

私に使うお金は無いんだって。

ウシオ

あ、そう。そりゃダメだ。

オトメ

お前は世間知らず過ぎる、甘えた事を言ってないで

オトメ

俺のいう事を聞いて夜の店で働けって。

オトメ

そんな事ばかり言って、まともに話も出来ないの。

ウシオ

そうか。それならオレに任せろ。

オトメ

え?任せろって、どんな風に。

ウシオ

とりあえず、もう一度その男とLINEしてみろ。

ウシオ

オレがガツンとやってやるよ!

オトメ

そう?頼っちゃっていいの。

ウシオ

もちろん。オレが警察官だって事を忘れたのか。

ウシオ

そんなヤバい男、普段から慣れているよ。

オトメ

そうだったね!さすがお兄ちゃん。

ウシオ

というわけで、その男とのLINEに、あとで招待してな。

オトメ

うん。わかったよお兄ちゃん。

~1時間後~

オトメ

シシオ、今ちょっといい?

シシオ

何だよ。今さら明日は行きませんってか?

シシオ

もう店と約束を取り付けたから、キャンセルはダメだぞ。

シシオ

必ず明日は来いよな。

オトメ

うん。そのことだけどさ。

オトメ

やっぱりお店では働けないわ。私。

シシオ

はあ?今更ふざけんなって。

シシオ

お前、やるって言っただろう。

オトメ

言ってないよ。私は嫌だって伝えたでしょう。

シシオ

いいや、聞いてない!

オトメ

言ったよ。LINEの履歴にもあるわよ。

シシオ

そんなの関係ねーよ!働かないと許さないぞ!

オトメ

…それなら第三者に入ってもらいましょ。全然解決しそうもないから。

シシオ

へ?

シシオ

第三者って誰だよ。

~オトメがウシオをLINEグループに招待しました~

ウシオ

こんにちは。オトメの兄のウシオです。

シシオ

はぁ?オトメの兄貴だと?

シシオ

部外者が俺達の事に口を出すな!

ウシオ

あなた、20歳未満に夜の接客業のあっせんをしましたね?

シシオ

は?何のことを言ってんだ。

ウシオ

県の迷惑防止条例違反ですよ。

ウシオ

酒やたばこが禁じられている20歳未満の人間に、

ウシオ

夜の、そういう接客業に就かせるのは禁止だし

ウシオ

あっせんをする事も禁止です!

シシオ

ふざけんな。適当な事を言いやがって。

シシオ

オトメの兄だか何だか知らねーが、とっとと消えろ!

ウシオ

威勢は良いようですね。オリノシシオさん。

シシオ

は?

ウシオ

オトメからあなたの住所もフルネームも、全部聞きました。

ウシオ

妹に怪しい仕事を強制しようとしていたので、

ウシオ

あなたを警察に通報しました。

シシオ

なに!?

オトメ

あのね、言う必要なかったから今まで黙っていたけど

オトメ

私の兄は警察官なのよ。

シシオ

え?ウソだろう。

ウシオ

本当ですよ。あ、ちなみにね。

ウシオ

あなたとオトメの、ここ数日のLINEのやり取りは全部スクショに撮ってあります。

オトメ

そ。ブロックしたり、逃げたりしてもムダって事よ。

オトメ

それに、貸してたお金も回収させてもらうわ。

シシオ

そんな。メチャクチャな事すんなよ。

ウシオ

メチャクチャな事をしているのは、お前だろう!

ウシオ

オレの妹をコケにしやがって。絶対に許さないぞ。

シシオ

ひぃ!

オトメ

あ、お兄ちゃんは空手1段だから。

オトメ

喧嘩を吹っ掛けても勝てないと思うよ。あなたより全然、体格も良いしね。

シシオ

そんな…。

ウシオ

まぁ、警察が来るまで大人しく待っている事ですね。

ウシオ

すぐ行くと思いますよ。

オトメ

逃げてもムダよ♪

シシオ

嫌だ…警察沙汰は嫌だ…。

オトメ

はい。さようなら~。

~後日談~

オトメ

シシオは、あの後すぐ警察に連れて行かれました。

オトメ

私に紹介しようとしていた店は、想像した通り、ただの接客業ではなく、

オトメ

いわゆる違法な、危ないお店でした。

オトメ

そんなお店を紹介する事は、当然法に触れますので

オトメ

シシオがしばらく警察のお世話になる事は、免れないでしょう。

オトメ

貸したお金は、シシオから直接返してもらう事は出来ませんでしたが、

オトメ

あの誕生日プレゼントの歌を、動画でSNSに流してみた所

オトメ

自分でもビックリするくらいの再生回数を稼いでしまい、

オトメ

ちょっとだけ広告収入がありました。

オトメ

あ、もちろんシシオの顔は、見えないように隠してあげました。

オトメ

むしろ有名人になれて良かったねと本人に言ってあげたい所ですが

オトメ

もう、連絡を取る事はないでしょう。

オトメ

これも頼もしい兄が守ってくれたお陰です。

オトメ

しばらく恋はこりごりなので、大学でのお勉強を

オトメ

頑張ってやっていこうと思います!

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