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ふわりと、まるで遊ぶように風が吹く

何もかも包み込んでしまうような、平和な春風

季節はすっかり‪”‬春‪”‬に移り変っていた

花びらが淡いピンク色を日常に撒き散らし、少しでも暖かに寄り添った

桜の木が沢山生えている道を、三人は歩いていた

どうせならと寄り道して赤ちゃんとブラックの二人が歩いていた所を、すまない先生がついて来ていたのだ

わぁっ、と小さな声を漏らして、無邪気な小さな子供のように見上げている

ブラック

今年も見事な桜ですね、ほぼ満開と言ってもよろしいでしょう

赤ちゃん

やっぱ綺麗だよなー!春にはいい事が沢山あるぜ!

赤ちゃん

動物さん達が起きてくれるし、うめぇもんもたくさん取れるからな!

赤ちゃん

起きたら、いっぱい遊ぶって約束したんだぜ!!

すまない先生

あはは!赤ちゃんらしいね!!

すまない先生は赤ちゃんの何気ない一言に笑い

赤ちゃんはへへへ、と照れたように頭を軽くかいた

それをブラックはまるで保護者のように目を細めて見つめていた

すまない先生

ってかブラック君!何他人事みたいに見つめてるの!?

ブラック

ふふ……バレましたか

赤ちゃん

おいおい!!どういう冗談だよ!!

ブラック

いえ、意思的にやった訳ではないのですが……

すまない先生

いや本当にどういう事!?!?

「アハハッ!!」

弾けるような笑い声だ

───天高く飛んでいくような。

しばらくの間笑った後、ゼェゼェと息を整えて、すまない先生は空を見上げた

ふと、何気ない事だった

すまない先生

…あれから…一年くらい経つね

ふわりと、春風が重い空気を彼らに運ぶ

二人は無言で、そっと頷いた

‪”‬あれから‪”‬……もう、上手く説明しなくても、伝わるだろう

何よりも、たったの一晩の事だけれど、強く熱く焼き付いている、あの出来事を。

そんな中、ブラックが口を開いた

ブラック

忘れるはずもありません…死ぬまで、忘れることはないでしょう

赤ちゃん

…当たり前だぜ

赤ちゃん

アイツらも……もしかしたらここに‪”‬居れた‪”‬のかもな……

すまない先生

…でも、その後僕達は見つけられたからね

すまない先生はポツリとこぼす

二人が顔を見合わせていたのに対して、先生は一人だけ明後日の方向を見ていた

先生は二人に顔を向け、微笑んだ

すまない先生

……皆の決意を…

すまない先生

僕らは最初、これは運命なのか…?とか

すまない先生

こんな事を神様は仕掛けてくるのか…?みたいな事も、

すまない先生

少しは頭にあったでしょ?

すまない先生

だから……あれを見て、僕らは確信できたんだ

ブラック

あれがなかったら…私達はどうなっていたのでしょうか

赤ちゃん

さぁな…ん〜……どうだろ…

赤ちゃんはうんぬんと唸りながら腕を組むと、突然「あっ!!」と叫ぶ

赤ちゃん

多分立ち直れてねぇな!家に引きこもってたと思うぜ!

赤ちゃん

いや俺どんだけ明るくポップに言ってんだよ!?

赤ちゃん

そんな嬉しいような事じゃねぇのに!?

すまない先生

確かに明るく言う事じゃないと思うけど……

すまない先生

本当にそうなっていた「未来」も有り得た話なのも事実……

ブラック

あの映像には…‪”‬計画していた事‪”‬が大きく出されていましたが…

ブラック

……かなり深い裏話もあったのでしょうね…

ブラック

決断は…人間、早々に出来るものではないですから……

すまない先生

……そうだろうね

すまない先生は目を瞑り、静かに頷いた

赤ちゃんは会話を聞きつつ、桜に視線を向け続けていた

ふと、桜でピンクに染まった瞳で彼は呟く

赤ちゃん

…そういや、丁度この位の季節だったよな?

ブラック

何ですか?ミスター赤ちゃん

赤ちゃん

桜が今みたいに満開になってて…ほら、覚えてねぇのか?

そう問いかける赤ちゃんだが、二人はピンと来ないのかけげんそうにしている

赤ちゃんは続ける

赤ちゃん

え?忘れちまったのか?

赤ちゃん

俺も詳しくは覚えてねぇんだけど……

赤ちゃん

休日に皆で行ったのかは知らねぇけど、八人で花見に行っただろ?

赤ちゃん

桜が道に沿って、両端に咲いてた綺麗な桜並木で……

赤ちゃんはそっと言葉を切る。

すまない先生がギュッと拳を握り締めていたのに気付いたからだ

赤ちゃんが声をかける前に、すまない先生が自ら呟く

風の赴くままに揺さぶられ、このまま遠くに行ってしまいそうな、散るピンクの花弁を目で追いながら。

すまない先生

…そんな事、あったなぁ

すまない先生

多分…確か僕が、「また来年も楽しもうね!」的なこと言ったんだっけ…

すまない先生

……叶わなかったな……

赤ちゃん

すまない先生…

ブラック

……

言葉が詰まって出てこない。 喉の奥で勝手に引っかかっている様。

寂しげな沈黙が走り、知って知らずか花びらが宙を舞っている

ふわりと跳ねるように動いて、彼らの肌を掠めた

ふと、ブラックは手を伸ばし、飛んでいた一枚を手の中に収めた

両手を使い、閉じ込めるようにしていたが…指の隙間から器用にするりと抜け出てしまった

「あ、」と言わんばかりの顔で、ブラックは目を見開き、首を動きに合わせて動かした

二人も知らぬ間にブラックと同じようにしていた

チラリチラリと、上へ舞い上がって行く桜の花びら

見上げると空を覆い隠すようなピンク色の花々。

その隙間を掻い潜るように、爪の先程の大きさの花びらは飛んだ

折り重なっている桜の隙間から除く、青い空へと。

その後、その花びらの姿は見えなくなった

すまない先生

届いたかな……

すまない先生はどこまでも青く高い空へ向かって手を伸ばす

すまない先生

少ししか届けられなくて…ごめんね。こっちは咲き誇ってるよ

すまない先生

ずっとずっと我慢してたのを……一気に爆発させたみたいにね

すまない先生

…今度、また一緒に見ようよ

すまない先生は満面の笑みを宙に向けた

すまない先生

来年も皆で楽しもうね!!

まるで空気に染み渡るような声だった

くるっと二人の方を振り向くと、すまない先生は全く同じ…満面の笑みを向けた

すまない先生

ほらほら、二人も絶対来てよね?

すまない先生

全員じゃなくなっちゃうでしょ?

ブラック

ふふっ、そうですね、もちろん来ますよ、来年も

赤ちゃん

どんな予定を断ってでも行くぜ!!当たり前だろ!

二人も同じく満面の笑みだった

ある歩道に、明るく笑い合う姿がキラキラと浮かんでいた

守れる事なら守りたかった

できることならそばにいて欲しかった

でも、もう無理なんだ

だったら………… 少しでも、君達の意志を紡いで行くよ

忘れる事なんて無い。

もっといい未来にする事もできたかも知れない

けれど____これが最善の選択だと信じて。

持ち運んで、抱えていくよ

ありがとう───

───ごめんね

心の底から、本当に、ありがとう。

そういえば、こんな歌詞を前に聞いたっけ……。

いつも周りを見渡すと

暖かな笑顔がそこに

どんなに辛い道のりも

支え合うことで乗り越えてきた

僕らの 生きてきた道は

きっと

素晴らしいものだろう

僕らにはいつだって

帰る場所がある

空高く舞い上がる

希望抱き 明日へ向かい

羽ばたこう

夢も思いも大切に

育ててくれたこの場所を

忘れた事は無いから

いつだって前へ 進めるんだ

静かに

流れる波音

オレンジ色した

優しい空

僕らは一人じゃない

誇り高き大地

ここにある幸せを

離さない

忘れないよ

いつまでも

空高く舞い上がる

希望抱き

明日へ向かい

はばたこう

風が、豊かに舞い上がった

運命【サダメ】の裏表

ー[完]ー

運命【サダメ】の裏表

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244

コメント

10

ユーザー

語彙力がなくなってしまう… 伏線(?)回収が上手すぎるッッ😭 すまない先生達の精神強すぎる! 最高なんよ…こんな人の弟子で良かったのだろうか? 何回この物語を見返したことか…

ユーザー

ついに最終話…………… リーブッッ!!!!お疲れぇぇ!! 最高な物語だったよ(;ω;`*) 最初から最後まで全部見返そ…(?)

ユーザー

ワァァァァァァ(´;д;`)(感動泣き)

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