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描写から表現、等など……。全てがとても綺麗です✨ 濁っていた空から澄み切った空に変わるシーンは本当に目に浮かんできました💭 彼に本当の気持ちを伝えられることを願っています😊🙏💭
初コメ&フォロー失礼します✨ もう、サムネから惹かれて… ストーリーを開いたら切なくて、描写が素敵すぎます…!! ほんとにこういうの好きです…!!新しいストーリーが出るのを心待ちにしてますね´`*
どタイプすぎてやばいんですが……。 なんていうんだろう……。 すうさんのお話読むと、 すごい不思議な感覚に陥って……。 天然水飲んだときみたいな?←
見たくないから
視界を遮断して
聴きたくないから
耳を塞いだ。
関わらないように
《私》という存在を
最大限まで薄めて 生きてきた。
嫌なものから心を背けて
全部、閉ざしたのは
私。
正解だと思ってきたのに
間違っていたらしい。
だからこれは、
自業自得?
雨音が大きくなって
いつものように、
いつものように。
何も変わらない、
いつもの教室。
私は、文庫本を手に 机と向き合う。
絶対に、 顔は下に向けたまま。
だって
だって、顔を上げたら
名前も知らない誰かの
歪な笑顔が目に入るから。
感情を押し殺した 醜い表情を
嫌でも見てしまうから。
だから
だから、私はいつも
ただ、文字を追っている。
内容なんてわからない。
私が持っているこの本は、
ただ、遮断する為だけに ある道具。
また 両親が叫びあう声。
大人なのに、 馬鹿みたい。
口には出さずに、 そっとぼやく。
私がいるここには
負のエネルギーが 満ちている。
黒くて、汚れた煙が
家中に充満しているみたい。
見えない悪は
身体の全てに入りこんで
息を詰まらせた。
私を呼ぶ声。
私を罵る声。
うるさいな。
聞こえないふり。
聴こえないふりをする。
部屋の鍵をかけて
イヤホンを耳に差し込んで
知らない音楽を大音量で流す。
頭が痛くなるほど、 大きな音で
聴きたくないものから、 意識を遠ざける。
向き合いもせずに
ずっと、塞ぎ続けている。
クラスメイトに呼び出された。
私も、彼が好き。
他の人より、 濁っていない。
私にも、澄んだ笑顔を 見せてくれる。
ぼんやりも 見ているだけでも
全然話したことがなくても
これは恋だ。
いつの日か、そう気がついた。
少し俯いて
それから、 彼の瞳を見つめた。
歩く、
歩く。
歯を食いしばって
拳を握りしめて。
段々と、スピードが速くなる。
学校を抜け出してきたことが
ちらりと頭を掠めた。
まぁでも、どうでもいい。
もやもやとした 人混みの中を
這うように進む。
自分の存在を、
最大限まで薄めて。
いつの間にか、
息が切れるほど走っていた。
湿った空気を抜けた。
拳を握りしめすぎて
掌に赤い爪痕がついていた。
あの、透明な瞳を想い出すだけで
彼のことを考えるだけで
胸がうるさいほど高鳴る。
彼の言葉が、嬉しかった。
私だけを見てくれた。
私が、求められた。
かき乱されるような 痛みと共に
雫が、筋となって 頬を滑った。
久しぶりに泣いた。
ベッドに倒れ込む。
瞼が熱くて、重い。
イヤホンをいつものように 耳に差す。
音が出ない。
聴こえない。
壊れていた。
音なんて出ていないのに
耳の奥から
何かが崩れた音が 聴こえた気がした。
ずっと積み重ねてきた
隙間だらけの壁。
いやだ。
穢れた空気が
部屋に流れ込むように
耳に
真っ直ぐに突き刺さる。
「✕✕✕✕✕✕」
「✕✕✕✕✕ ✕✕✕」
押しつけあいを
きいてしまった。
ただ近くにいただけの
ふたりの中で私は
邪魔で鬱陶しい人間で
《いらないこ》だと知った。
それとも
事実を見せつけられた
だけかもしれない。
ショルダーバッグに スマホと財布を突っこんで
音をたてて 家を飛び出した。
どうしてここにいるのか
記憶が曖昧で、 わからない。
電車に飛び乗って、 終点で降りて歩いていたら
いつの間にか こんな場所まで来ていた。
雨が降っている。
傘は持ってない。
でも、まだ小雨だから。
容赦なく 打ちつけられる。
孤独な私は、 なすすべもなく立ちつくす。
身体の体温が、 奪われていく。
今まで、閉ざしてきた 全てのもの。
正解だと思ってきたのに
間違いだったらしい。
答えなんて教えてくれない。
結局、彼のことも
何も考えずに、 拒絶してしまった。
雨音が大きくなって
ふたつの雨が、
頬を滑った。
目を開けると 朝になっていて
濁っていた空は 晴れ渡っていた。
朝日が眩しく 照っていて、
寝ぼけた目には すこし強い。
スマホの画面を起動させると
残り11%だった。
今は8時24分。
今から急いでも、 絶対に遅刻だ。
それでも、
帰ろう。
ぼんやりと、思った。
どこにも 私の居場所はないし、
帰らない私を 心配する人もいないし、
前向きになろうなんて 考えたわけじゃないけど。
だって
服はまだ乾いてなくて 寒いし
それに、 雨が降ったときに困る。
傘を持ってない。
あと、彼に言わないと。
遅いかもしれないけど、
ちゃんと、私の 《ほんとう》を
伝えないと。
だからまだ今は 逃げるときじゃない。
歩きながら下を向くと
水たまりが 道を塞いでいた。
元は小さな雨粒が くっついて大きくなったもの。
それが、私の現実と重なる。
今までは、無言で避けていた
私の《ほんとう》と。
立ち止まった 自分を動かす為に、 声を出した。
足を踏み出すと
どうしてか ぼやけた視界越しに、
足下で波紋の広がった 空が見えた。
傘は持ってない。