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雄英高校から家に帰る途中
相澤先生に言われた言葉が頭の中をグルグルと回る
『お前がヒーロー側の人間で良かったよ』
先生や弔以外に初めて自分を肯定する言葉を言ってくれた
鞄が肩からズルッと滑り落ちる
溜息をつきながら肩に掛けなおして電車の窓から移りゆく景色を眺める
イヤホンを耳に付けて好きな音楽を流す
アップテンポな曲が好きなのだが 今日は何となく落ち着いた曲が聴きたい気分だ
プレイリストに入っている曲を漁りながら電車に揺られていた
敵が雄英にいるだなんて誰も想像していない
でもきっといつか気付いてしまう
雄英に内通者がいるのだということを
その時 私は疑われるのだろうか
いや、恐らく疑われることはない
私は誰がどう見ても無実潔白な生徒だろう
私はヒーローが嫌いなわけではない
ただ手を差し伸べてくれたのが先生だった
全てを教えてくれて与えてくれたのも先生
だから先生に着いていく
先生が「死ね」と言ったら躊躇わずに死ぬ
私はそれでいい 使い捨ての駒でいいんだ
そう思っていたけど今日のあの一言で 私の意思は弱くなってしまったように感じる
私もヒーローになっていいのかもしれない
そんなことを思ってしまった
だけどそれは夢物語だ
敵という社会不適合者として10年近くも生きてきた人間が ヒーローになれるわけがない
既に多くの命を奪ってきた
こんな汚れた手でヒーローなんて務まらない
絶対に起こることのない未来を想像したせいで頭がパンクしそうだ
ボーッとしていれば最寄り駅に着いていて、慌てて電車から降りた
駅から近いところにあるアパートは5分ほど歩けばすぐに着く
ガチャガチャと鍵を回して家に入った
昨日と同じくソファに鞄を放りなげてベッドに倒れ込む
瞼を閉じて横になっているとだんだん眠気が襲ってきた
夕食をまだ食べていないけれど今日は睡魔に勝つことが出来ない
黒霧さんがご飯を作ってくれているのに申し訳ないなぁと思いながらも私は眠りについた
明日は重大な役割がある
失敗するわけにはいかない
そんな少しの不安を胸に抱きながら眠った