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注意書きは序章を ご覧下さい
ワンク
≪ 天乃絵斗 side ≫
結局あのまま流され、当日になってしまった
人の話は最後まで聞かないし、なんなら集合時間、場所すらも言われていない
それに加え、スマホには母親の連絡先しか載っていない
つまり、今から連絡を取って計画を立てることも叶わない
天乃 絵斗
一応準備を進めてはいるが、なんて無計画なんだと呆れて溜息がもれた
痣や痕が残っている四肢を完全に覆えるように、袖が長い服を纏う
着替えも同様に、この季節には似合わないような長袖の服を用意した
昨日から少し準備を進めていたおかげで、身支度に時間はかからなかった
丁度その時、何者かの訪問を知らせる音が静まり返った家の中に鳴り響いた
天乃 絵斗
荷物を頼んだような覚えは全くないが、まさか、そんなわけがない
そっと扉をひらくと、そこには案の定彼が佇んでいて、思わず動揺する
らっだぁ
天乃 絵斗
さも当然かのように挨拶し、話し始めた彼の言葉を咄嗟に遮る
彼の前で、というか人生でこんな風に声をあげたのは久々かもしれないな
その所為か、僕の声を聞いて彼も少し目を見開いて驚いたような顔をしていた
天乃 絵斗
なんだか彼に見られると全てを見透かされている気がして、不意に目を逸らす
いつもはこんな感覚、母親からしか感じなかったのに、どうして
...いや、彼と関わるようになってから少しずつ、僕が母親と重ねていたんだ
考えてるこの見当が全くつかず、そこに恐怖を感じるのが母親にそっくりで
恐る恐る目を合わせると、少し、ほんの少し嬉しそうに笑っていた
天乃 絵斗
らっだぁ
それでも彼は話が遮られたことを不思議に思ったのか、平然と尋ねられる
天乃 絵斗
僕は、彼に家が此処に在ると、教えたことなど一回も無いはずだ
彼以外にも、誰にも教えたことはないのに何故知っているのかを知りたかった
らっだぁ
らっだぁ
天乃 絵斗
勿論納得することはできないが、これ以上聞いたところで意味は無い気がした
寧ろ、過ぎたことは仕方ないし、興味も薄れてどうでも良くなってきた
≪ 猿山らだ男 side ≫
なんだかんだ、休日に会うのは初めてだった
彼は、六月にしては暑苦しく、大部分が白黒で彩度が低い私服を着ていた
好きな色すらも分からない服装を見て、服は人生を表すという言葉を思い出した
先程、開口一番に困惑の声を漏らしていたからか、気まずいのか目が合わない
普段見れない表情と声色を感じられて、おれは少しだけ優越感に浸っているのに
以前偶々見つけて、今も意図的に驚かせようとしていたから
何をそんなに重く受け止めているのが見当もつかなかった
依然暗い表情をしている彼に、どうすればいいか検討するが何も浮かばない
らっだぁ
らっだぁ
ぺいんと
その笑顔は上辺だけで、紛い物なのに、あの日から見る度に見惚れてしまう
前までは、いや、今も彼に心の底から笑ってほしいのは変わらないのに
作り慣れた違和感の無いハリボテの笑顔は、驚くほど端麗で
らっだぁ
らっだぁ
ぺいんと
らっだぁ
そう言いながら扉を開き、彼を自室に案内する
ぺいんと
なんとなく、ここにはおれしかいないからか、彼は少しだけ本心を見せてくれている気がした
もしかして、段々とおれには気を許してくれているんじゃないか
なんて、そんなに都合良い訳が無いと、彼に向き直る
らっだぁ
らっだぁ
そう言い飲み物を取りに行く為、彼を座らせて部屋を後にした
ぺいんと
飲み物もお菓子も用意した机に座ると、正面に座っている彼に声をかけられる
もう少し雑談でもしていたかったが、試験も近いから仕方がない
らっだぁ
らっだぁ
英語の課題と睨み合いながら、歴史の勉強をしていた彼に助けを求める
英語なんてものを理解しようとしたことは無いから、全く理解できない
ぺいんと
らっだぁ
ぺいんと
そう言うと納得し、呆れたような顔をして問題の解説をしてくれる先生
本当は解ける問題だが、彼がおれの為に解説してくれているのが嬉しかった
それに噛み砕いて説明してくれるから、問題の解き方が凄く分かりやすい
≪ 天乃絵斗 side ≫
らっだぁ
彼に言われ、ふと時計を見ると短針が十二時を指していた
普通ならこの提案は喜んで受け入れるだろうが、僕はそうじゃない
天乃 絵斗
らっだぁ
コンビニのご飯なんて、もう食べたくはないが、他人が作るご飯は尚更嫌だった
天乃 絵斗
最善策はこれだけだが、勝手に台所を使うと怒る人もいるので使用許可を求める
らっだぁ
天乃 絵斗
らっだぁ
快く承諾されて驚いたが、こちらとしては都合が良いから特に気に留めなかった
定期的に物陰から様子を見にくる彼に気づかないフリをして作業をする
料理を運ぼうとしたら、何故か落ち着きのない彼がいたので手伝ってもらった
≪ 猿山らだ男 side ≫
彼の手料理が食べられると浮き足立っていると、彼に声をかけられた
そのまま料理や食器を運ぶのを手伝い、席に座って彼と一緒に手を合わせる
らっだぁ
ぺいんと
彼は作りやすいからと言い、物凄く美味しそうな炒飯を作ってくれた
たしかに、このくらいならおれでも作れそうだとは思ったが、どうせ無理なんだろうな
なんだか彼の手料理は勿体無くて食べづらくて、カトラリーを彷徨わせる
ぺいんと
らっだぁ
らっだぁ
一瞬、理解できなくて固まる
だって、あの天乃が、今、笑って、
ほんの一瞬だけ見えた彼の笑顔は、言い様もない程に綺麗だった
ぺいんと
突然顔を上げ彼を見て固まったおれを不思議に思ったようで、声をかけられる
無自覚なことにも驚いたが、無自覚に笑ってくれたことが嬉しかった
らっだぁ
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